無題

「前夜」の熱量

大学時代、M-1グランプリに出場した。大学のサークル仲間から2組出場したうちの1組だった。ただ、前日になってもネタが仕上がらず、当日も早めに集合してカラオケボックスで練習してから会場に向かう約束をして解散した。

駅に向かって歩く俺の前を、その時たまたま歩いていたのが、その後、コンビとしても東京に出て活躍し、片方はベストセラーを書いた某コンビ。俺らのコンビがその場を解散したのとほぼ同時に、コンビのもう一方、当時は「じゃない方芸人(最近の言い方で言えば)」と思われていたT(後に出した自伝本がベストセラーに)は、俺の相方と同じ方向へ、夜の街に消えていった。

もうひとり、Kは、テレビのプロデューサーと思われる連れに愚痴りながら歩いていた。

「漫才ブームなんて、大阪には全然来てませんよ」

……その、まだ見ぬブームを掴みたい、なんて望みを抱きつつ、それに向けて満足な準備も出来ていないという自覚もあった俺は、そのブームを待望する芸人の熱量を確かに感じて、その場を後にした。

果たして、そのブームは大阪も飲み込み、多くの芸人が東京へと旅だった。準備不足を自覚しつつ何も出来なかった俺は、そのまま何も出来ずに終わった。

ただ、ブームの熱風の、その微風を感じただけに終わった。それでも、あの熱の中に立っていたかったと、今でも思う。そのために足りなかった準備する情熱、というやつを今さらこうやってnoteにぶつけてみているのである。

※いつもの投げ銭つけとくからね?
この下に内容なんてないよう?

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