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マッチングアプリで出会った奇跡のような人
今じゃ王道の出会い方となった「マッチングアプリ 」
最初は私だって「マッチングアプリ なんて‥」としたこともないのに勝手なイメージで自分はやらないと思っていた。
でもコロナ渦になったとき、そんなことを言ってられないくらい男性との出会いがなくなった。不要不急が口癖だったあの時代、好きな人がいても気軽に呑みに行こうと誘えなくなり、やっとデートに取り付けても当日に「ちょっと熱っぽいからしばらく会うのやめよう」とドタキャンされ、そのまま音信不通になったこともあった。あの時はどうでもいい人を上手く断るシステムが出来てしまって、こちら側の人間としては非常に腹立たしかった。
そんなときに私に手を差し伸べてくれたのがマッチングアプリ
自分に都合のいい写真と生い立ちと条件を軽く言葉にして、自分好みの男性を気軽に探せるんだから好都合なコミュニケーションアプリだ。
その当時はすぐに結婚できる相手を探していたわけでもなく、気が合えば会ったり呑みに行ったりできる友達や恋人がほしいと思って登録をした。
なので、ガチの婚活マッチングアプリではなく軽いマッチングアプリに登録をした。
そのとき出会った、奇跡のような出会いの話をしようと思う。
初めてのマッチングアプリ 、一応自分が本名で音楽活動をしていることもあり素性がバレないようなプロフィールにした。
プロフィールの写真は数枚アップできるとのことだったので少し可愛く加工した写真を顔の微妙なところで切り取って、私だとわかるかわからないか微妙な感じにした。
偽名は『あおい』にした。『さおり』と母音同じだから。
年齢は嘘をつくと後で会った時に男性に白い目でみられるのが嫌だったので、嘘をつかず当時の年齢で公開した。
プロフはあまり長い紹介にしなかった。
あまり丁寧に書くとマッチングをやりなれる女と思われそうだし、諸々面倒な女だと思われそうな気がしたから。音楽をやってることも一切書かなかった。
アプリ開始初日、思ったよりもすぐにマッチしたのは自称雑貨屋の店長。
私より5歳ほど年下。写真を見る限りではおしゃれにも程よく気を遣えて、身長も175cmくらいありそうでいい。笑顔が可愛い優しそうな人だった。
マッチしてすぐに連絡を取り合うと、あちらから会う前に一度電話で話してみて気が合いそうなら会いませんか?と提案をしてくれた。
まずその提案に好感を持てた。
すぐに会いたいと言われるよりも電話で話してみて人となりが分かった上で会うか判断できた方がコスパも良い。
少しアプリ上のメッセージのやりとりをした上で、その夜に電話をした。
もちろん、マッチングした人と電話をする経験もなかったので知らない人と話すというのは中々の大冒険だったが、独り身で寂しかった私にはとても良い時間の潰し方だった。
アプリを通しての通話なら連絡先を知らなくても話せるしお金もかからない。
最初はお互い手探りで話をしていたが、想像以上に話が盛り上がりいつの間にか2時間ほど話をしていた。
物腰も柔らかく、適度に気も遣えて、2時間話してて会話も途切れなくて楽しかった。これは会ってみても良いかもしれないと思えた。
あちらも同じ気持ちだったようで、意気投合して次の日の夜に会うことになった。
待ち合わせは中野駅。初めての待ち合わせでドキドキの反面、これは何かの仕掛けで写真とは全く違う人がきたらどうしようという不安もあった。
そもそもこんなアプリで本当に自分がいいなと思える人と出会えるなんてそんな都合の良い話があるのだろうかと。
19時に中野サンプラザの前で待っていると、近くには写真とは似ても似つかぬおじさんたちしかいない。え、これって騙された?待ち合わせ場所、中野サンプラザの前って言ってたよね。。
もしあの斜め前にいるおじさんだったらバックレよう(決意)
勝手に斜め前にいるおじさんを意識しつつ、目を合わせぬように私は距離を置きながら、アプリの相手に連絡をした。
するとあっちはなぜか中野駅改札で待っているという。
それを聞いて安心をした。
勝手に斜め前のおじさんを意識してた自分を恥じながらも急いで駅まで戻った。
すると広場にアプリの写真に似たような男性が少し当たりを見渡しているのが見える。
あ、きっとあの人だ!写真と同じ感じ!!ん、ちょっと写真より服ダサいけど(ローソンの店員さんの制服みたいな水色のストライプシャツにチノパン)
別にそれはとりあえずいいやと思いながら恐る恐る近づく。
あちらも私の気配に気づき、あ!という顔をする。
そしてお互いぎこちない会釈から始まった。
とりあえず居酒屋とか行くのかな?と思っていると、アプリ男子から「僕、お酒呑めないのでファミレスでもいいですか?」と聞かれる。
あ、お酒弱いって電話で言ってたけど、本当に全然呑まないのか、まぁとりあえずいいかと思いファミレスを受け入れる。
行った先のファミレスはみんなご存知のあのガストだった。
私もガスト好きだし、うん、好きだし‥
するとガスト男子は「好きなの頼んでください。僕がご馳走します!!僕はクーポン使いたいのでクーポン使えるものにしますが、さおりさんはクーポンとか気にしないでくださいね」と笑顔で先手を取られた。
まぁ、クーポン大事だよね。30円、50円、時には100円くらい安くなるもんね。奢ってくれるのは嬉しいけど、私もクーポン内で選ぶのが礼儀なのだろうか。
でもクーポン使えるメニューで魅力的なものがないな。
自腹切るから、値段気にせず好きなもの食べたいな。
だってガストのメニューなんて値段に限界あるじゃない?
初めて会う男子が奢ってくれると言ったものの、メニュー選びにはかなり労力を使うこととなった。
結局、クーポンが使えるメニューは申し訳ないがやめて値段も高すぎないネギトロ丼を頼むことにした。
昨日電話した感じはとても良い人だったし、今後付き合うとかなったら節約は大切だし、私だってクーポン使うこと全然あるし。
あっちのハンバーグセットと私のネギトロ丼がテーブルに置かれた。
「僕、居酒屋のメニューって苦手なんですよ。みんなで一つのもの食べなきゃ行けないじゃないですか。僕、自分が頼んだ物を自分だけで食べたくて」
「そうなんだ〜」
ガストも居酒屋も好きな人だったら良かったが、そもそも居酒屋飯が好きじゃない人は少し減点だな・・・
はじめましてなので自分のことを丁寧に一生懸命に話してくれるクーポン男子だったが、かなり僕の主張が強い人だった。
「僕、実はここだけの話、鉄道オタクなんですよ〜引きますよね?」
「へ〜ぜんぜん引かないよ」
「僕、実は純日本人じゃなくてハーフなんですよ〜大丈夫ですか?」
「へ〜あまり気にしないよ」
それなのに私のする質問には歯切れが悪かった。
「雑貨屋さんの店長って、何系の雑貨のお店なの?気になるな」
「どんな雑貨が売ってるかは内緒で、ちょっとお店の名前はもう少し仲良くなったら教えてあげますね、それよりも僕、実は〜」
「僕、実は」の出だしばかりのトークを僕、実は男子にたくさんお披露目をされて
この時点で「あ〜今日は早めに帰りたいな〜」と思っていた。昨日の電話の方は100倍楽しかった。
しかし、ガストでご馳走をしてもらう身だ。私の性格上、すぐに帰るとは言えない。
私の気持ちなど気づかぬ「この後、少し散歩しませんか?」と言ってきた。
ファミレスでご飯だけだと、本当1時間とかで終わっちゃうのよね。
少し散歩して終わりにしようって思い散歩を許可した。
散歩しながらも、ずっと「僕、実は」トークは続く。
中野から高円寺まで歩き、そこから謎に野方まで歩いてると二人とも喉が渇き出した。
「喉渇いたので、何か飲みませんか?」と言われるが近くにコンビニがみあたらない。
次にコンビニを見かけたらそこで飲み物買おうか?と提案すると「コンビニの飲み物って割高じゃないですか。できればスーパーで買いたいんですけど」と言われる。
勿論、コンビニは数十円割高だ。スーパーがあれば全然そこで買ってくれて良い。
ただこの住宅街でコンビニさえない場所でスーパーを探すのが無謀だった。
結局しばらく歩いてもスーパーは見つからずに、割高気にしい男子は少し残念そうに「しょうがないんでコンビニでいいです」と言って、コンビニで大きな2リットルのお茶を買った。
何故、2リットルのお茶を買ったのか聞いたら、それもたくさんお茶が入っていてお得だからという理由だった。
もうこの時点で散歩も疲れ果て、歩き出した中野駅からもずいぶん距離が離れてしまった。足も疲れたし、はじめましてで節約の度が過ぎるし、早く帰りたい。
1時間以上、住宅街を散歩した結果また中野まで戻って解散しようという話になった。
あと少しで中野駅だ!!と希望が見えてきたところで、2リットル男子が
「ちょっとここのベンチで休憩しませんか?」と言ってきた。
ここのベンチとは私たちがあてもなく歩いたことで通り過ぎることになった集合住宅の中にあるちょっとした小さな広場にあるベンチ。
人気もない薄暗い広場のベンチに座ってみると今度はとんでもないことを提案してきた。
「よかったら手を繋いでみませんか?」
「え!いや、それはいいです」私の拒絶反応は光よりも早かった。
光も早い拒絶反応に「え〜すっごい悲しい‥傷ついた」と急に落ち込み出した。
おいおい、他人の態度をみずに自分のペースで進めすぎだろと心の中で強く突っ込む。
「ほら、今日会ったばかりなんだから、そーゆーのはもっと仲良くなってからじゃない?」年上のお姉さんとして、あくまで優しい振る舞いを見せる。
「すっごいショックです‥‥」急に肩を落とし出す。
ショックなのはこっちだよ。
めんどくせぇ、早くこいつと別れたい。
そのためには今すぐにこのベンチを去り、中野駅まで歩かないと‥
また歩き出すきっかけを探そうとしていると
「本当に手を繋いでくれないんですか?僕のこと嫌いですか?」
ちょっとぶりっこした目線で私の手をねだってくる。
「嫌いも何も今日会ったばかりで何も分からないよね」
少しずつ苛立ちレベルが上がっていく。ぶりっこしても可愛くないからな。
ここからは手繋ぎおねだり男子の荒技を披露してくる。
「お願いします!僕と手を繋いでください」
頭下げてきたー!!
私は1秒でも早く中野駅まで行ってこいつと別れるために、自分を殺して好きでもないむしろ早く帰りたいと思っている男と手を繋ぐことにした。
「あーはいはい」私は心を殺した。
好きでもない男と手を繋ぐのがこんなに辛いことかを初めて知る。
好きな人と手を繋ぐとドキドキが止まらなくなって、天にのぼる幸せな気持ちになれるのに、どうでもいい人と同じことをしても何の高鳴りも聴こえない。むしろ蚊が自分の周りを飛んでるようなうざったい気持ちになる。
私はなんで今、こいつと手を繋いで歩いてるんだろう。
こんなところを誰か知り合いに見られたら本当に嫌だ。
手を繋いでいる間、私は無であった。
でもあちらはとても満足そうにしている。
まもなく中野駅に着くというとこで、まだ手を繋がれた状態で手繋ぎ自己満男がラストスパートに入った。
「ほんと今日は楽しかったです!さおりさんお綺麗だし、また会いたいです!!」
私はかなり顔を痙攣らせながら「あ、ありがとう〜」と返事にもならない返事をした。
そして少し間をとると、まるで告白をしてくるような素振りでゆっくりと私にこんなことを言った。
「さおりさん、今度もし良かったら・・・お弁当を持って・・・」
お弁当を持って・・・今度はピクニックの誘いか?!
「今度会う時はお弁当を持って、ホテルに行きませんか?」
ピクニックじゃないんかい!!と心の中で突っ込んだ。
「ん?お弁当もって、ホテル?どーゆーこと?」
可愛く馬鹿なふりをする。というか馬鹿なふりをさせてくれ。
「僕、自分がいいなぁって思う人と、お弁当持ってホテル行くのが夢なんです♡」
ただの荒手のセックスの勧誘やないかい。
「えーなにそれ〜 普通、お弁当持ってって言ったらピクニックとかだよね。そーゆー感じなら私は違うかな。」
とても大人の優しい断りかたをしてみるものの、お弁当ホテル男は引き下がらない。
「僕、誰でも言い訳じゃないんです。さおりさんとだからお弁当持ってホテル行きたいんです!!!」とてもピュアな目で行ってくるが、これはピュアなふりをしてるだけでただのお弁当ホテルくず男なだけだ。
「でも単にホテルに行きたいなら、私は違うので他の人探して〜」とこちらも負けずに断る。
「え〜 僕、さおりさんとだからお弁当持ってホテル行きたかったんだけどなぁ・・・」しょんぼりした風に見せているがこれがこいつのやり口だ。
そしてまだ私はこのお弁当ホテルくされち●ぽ男と手を繋いでいる。
少し気まずい空気が続くと、急に切り替えて「じゃ、次はあきらめます。また良かったら、こうやってファミレス行って散歩してください!」と言ってきた。
勿論、それももうお腹いっぱいでございます。お断りです。とはきっぱりとは言えずに濁していると畳み掛けるかのように
「次に会ってまたファミレス行って、お散歩して楽しかったら、その次こそはお弁当持ってホテルに行きませんか?」
とファイナルラストチャレンジをしてきた。
私はもう何も言わずに、そっと繋いでいた手を離した。
「あ〜もう少し手を繋いでたかったのに〜」と言われたがそれも無視した。
私は心の中で彼のニックネームに終止符を打った。
お弁当ホテルくされち●ぽ野郎
の完成です!!
これが私のマッチングアプリ体験談。
彼は私が音楽をやってることも、ここでこんなことを晒されてることも知ることはないでしょう。
これこそ、マッチングアプリで出会った奇跡のようなくずでした。
お弁当ホテルくされち●ぽ野郎は今頃、他の女とお弁当ホテルしてることでしょう。
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