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私の押し入れ〜変わりたい人と変わらない人〜

「変わりたい人」と「変わらない人」
前者はとても前向きな印象を持つ。
後者は後ろ向きな印象はないが特に何も思わない。

人は再会した時に、心のどこかであの頃よりもその人の「変化」を期待をしてしまう癖がある。

昔、私のそばに「変わりたい」と強く願い頑張ってる人がいた。
同業で、その人は音楽的にも実力や運を試されている時だった。
もっとプレーが上手くなりたいと一生懸命頑張っていたのを私は知っている。
色んな人にああじゃないこうじゃないと言われ、そのたび葛藤をし、それが正解なのかと悩みに悩んで、だからこそ私は自分が同じミュージシャンとしてできることはしてあげたいと思った。
同業で腹を割って話せる人なんて本当に少なく、その中でもお互い音楽的にもっとこうした方がいいというところを言い合ったりもした。

他のミュージシャンにああダメ出しされた、こうダメ出しされたと言う話を聞いては、私なりに話をしてきたつもりでいたけど、あるときに気づいてしまった。

あれ、この人いつも愚痴ってばかりな気がする。
そして結局、悩んだ末の答えは「自分の良さが分からないなら、それでいい。
それで、仕事が来ないからそれまでだ」と開き直っていた。
その人は最終的に「変わらない」を選んだ。

音楽でお金になる仕事が欲しいと言ってた時、それならこうすべきかもしれないね。と私は返事をした。「こうすべき」とは、お金をもらう上でその人が足りない技術の話を指摘した。その技術の改善をしたら、より仕事が増えると思ったから。

誰だって自分の技術のことなんて言われて楽しいわけがない。
技術の話になると、「それなら、今の自分のプレーで仕事くれる人を選ぶ」とまた言う。私は途中で疲れてしまい、その人から離れた。
するとその人は、偶然にもその後に仕事が減って言った。
そこから連絡を取らずにいたが、結局、その人は仕事としての道を諦め、楽しく音楽と向き合ってるようなことを風の噂で聞いた。

それから数年後に再会。
その人が音楽を仕事としての活動としてなくても音楽を楽しいものと思って活動していると思いたかった。
だけど久々に再会したその人から出たのは、数年前と何も変わらない愚痴。
愚痴ってる相手が変わっただけ。
最初は親身になって話を聞き、私なりにアドバイスをした。
私の話をちゃんと受け入れてるように思えて、また数ヶ月後に似たような相談と愚痴を言われる。

出会った当初の「変わりたい」と強く願っていた頃のその人はいなかった。
仕事としても楽しいものとしても、当てはまってなさそうな音楽を続けているのは、惰性のように思えた。むしろ劣化しているようにすら。
久々に会ったのならその人にとっての楽しい音楽の話が聞きたかったのに。
それなら音楽以外で充実していて欲しかった。
でもそんなことも全然なさそうだった。

最後に連絡が来た時、連絡の冒頭が「愚痴を聞いて欲しい」だった。
でも私はもうその人からの愚痴を聞くことに限界ができていた。

なので「相談をされても、私の回答は前と変わらないよ。それを想像できない?」と伝えると、その人からは「分からないけど分かった」と返信がきた。

分かってないじゃん。

長い関係性だからこそ、その人の手の内はもう分かっていて
初めての愚痴でも相談でもなかった私には、この人、また似たことで愚痴り、私に同じことを言わせようとしている。と呆れてしまったのだ。

しかも、この自粛期間にさぞ暇だろうと思われての連絡。
勿論、家にはいるが、やりたいことは無限大にあって、負の感情を吐き捨てる場所として使われたくなかった。
家で暇アピールをされたから、今、ミュージシャンがやれることをやろうと言った。

変わりたいのならば
相手の愚痴を言う前に、自分のできることをやるしかない。
そしてちゃんと頑張るつもりがあるなら、自分の信念が音楽なら、やってる者としての自覚を持って日々を過ごさなくてはならない。
それがたとえ数人のファンでもSNSをやってる以上は、何かしら発信はして言って欲しい。小さなことでもいい。毎日、ブログを書くでも良い。
好きな音楽に対して語るだけでも良い。今、流行りのリモートセッションでも、機材紹介でも、慣れない楽器で遊ぶのも、筋トレでも何でも良い。
それを発信しなくちゃ、ファンはあなたの頑張りに気づけない。

自分が何も変わってないのに、相手に変わって欲しいなんて愚問だ。
そして何よりも変わりたいと思わずに、この現状で結局まぁいいやと思って、今夜の酒に溺れるのなら、愚痴ってはいけない。時間はみんな平等に流れてるんだから。

今、私の周りにいる音楽家たちは本当にみんなストイックな人たちばかり。
だから、その一つ前に出会った人があの頃と何も変わってないと残念だが納得をする。

私はあの場所からいなくなって正解だったと。

お客さんの前で歌を歌うなんて、この現状は非常に難しいことだ。
それでも名のある人も、そうでない人も、それぞれのミュージシャンがやれることをやっている。0から100まで言わないけど、さめざめの夢ここもこの自粛期間でやれることをやって来た。

歩みは違えど、またみんなに音楽を届けたい一心でいろいろな工夫をしてみんな頑張っている。

その人には私のこの気持ちは伝わらなかったようだけど。

明日、すべての都道府県は緊急事態を解除されたとしてミュージシャンにとってはそこまで変わらない。
それでも、今あなたに好きなミュージシャンがいるのなら、どうか分かりやすく応援して欲しい。みんな人間だから、暖かい言葉に救われる。

SNSって本来、遠く離れてても、知らない相手でも暖かい言葉を繋ぎ合うために存在するものだと思っている。

暖かい言葉を繋ぐSNSをこれからもっとやれたら良いよね。


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