マガジンのカバー画像

『ちっちゃな王子さま』(超意訳版「星の王子さま」)

19
『星の王子さま』で知られる、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「Le Petit Prince」の新訳。逐語訳や直訳にこだわらず「今のこどもや若者にもすっと通じることばで」新…
運営しているクリエイター

2020年6月の記事一覧

ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.9

ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.9

XIII 四番目は、ビジネスマンの星だった。その人はひどく忙しそうで、ちっちゃな王子さまが来ても、デスクに向かって顔も上げないくらいだった。
「こんにちは。たばこの火が消えてますよ」
 王子さまはビジネスマンに声をかけた。
「3+2=5。5+7=12。12+3=15。やあ。15+7=22。22+6=28。火を点けなおすヒマもありゃしない。26+5=31。ふぅ、これで五億一六二万二七三一、だな」

もっとみる
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.10

ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.10

ⅩⅤ あの子が6番目におとずれた星は、点灯夫のいた星の十倍は広い星だった。そこには、ぶあつい本ををせっせと書いているおじいさんが住んでいた。

「おやおや、これは探検家のお出ましじゃないですか!」
 ちっちゃな王子さまに気づくなり、おじいさんはそう叫んだ。
 王子さまは近くのテーブルに腰かけて、ふうっと一息ついた。ずいぶん長いこと旅をしてきて、ぜんぜん休んでなかったんだ。
「さて、あなたはどこから

もっとみる
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.11

ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.11

ⅩⅥ そういうわけで、あの子が7番目におとずれたのがこの「地球」だったんだ。
 地球ってのは、そんじょそこらの星とはわけがちがっていた。そこにはなんと、111人もの王様がいたし(もちろん、黒人の王様も入れて、ね)、7000人の地理学者に90万人のビジネスマン、それから750万人のよっぱらいに3億1100万人のナルシスト……合わせて、約20億人もの大人たちがいたんだ。
 そうだ、この話をすれば君だっ

もっとみる