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「僕ヤバ」を 娘とシェアできるか問題

(noteのプロフィール用の投稿です。標題の話だけ読む場合は、以下の目次をクリックしてどうぞ)

ウチの電子書籍事情

 本を買うなら電子でと決めています。スキマ時間にいつでも読めるし、場所も取らないし、セールがあってお得感あるし(諸説あり)で、僕には利点が多いからです。

 紙と違って気安くシェアできない不便さはあります。でも、家族とならやりようがあります。
 たとえばKindleなら、Kindle専用端末(又はFireタブレット+Amazon Kids)を用意して、借り受け専用機にすればいいわけです。

 クラウド等の不要な機能を隠し、端末内の本を見られるだけの設定にすれば、センシティブな問題は起こりません。本の追加はリモートからできるので運用も簡単。渡しっぱなしもOK。初期投資は要りますが、値段以上に便利に使えることも多いでしょう。

 妻1娘2(小中学生)と暮らす我が家では、このKindle方式を中心に、僕の蔵書をシェアしています。

何をシェアしているか

 しかし、残る課題が一つあります。
 何をシェアするかという話です。

 シェアすることは、お墨付きを与えること。
 読むべきだよ、読んでいいよ、とレコメンドすることです。
 紙の本なら、たまたま目についてという家庭内偶然遭遇もありますが(それを演出することもできるでしょう)、電子では明示的なシェア一択になります。そこには常に、先述のメッセージが含まれるのです。
 これが、特に子供たちに対する際の悩みどころになります。

 ってまあ結局、常識的な線に落ち着いちゃうわけですが、以下、自己紹介がてら実例を挙げていきます。ライブラリ(の一部ですが)で嗜好や人となりも、自ずと見えてくるというものです。

 まずシェアの前提として、無理強いはしません。愉しみも強制されたら苦痛ですよね。
 これいいよとシェアした「アクタージュ」と「メダリスト」がスルーされたままでも、特に読めとは促しません。どっちも面白いのにもったいないなあと思うものの、思うだけにとどめています(まあアクタージュはその後アレで終わってしまったんで、スルーで良かった部分もあるかもしれません)。


※以降のAmazonリンクは、作品の概要を端的に知るための参考資料として設置したものです。僕が収益を得られるものではありません。


 その上で、子供の好みに合いそうなもの、そして子供の成長に添っていそうな安心感あるもの中心にシェアしています。
ぐらんぶる」とか「はぐれアイドル地獄変」の出番はまだ無いわけです(ずっと無いかも)。
贈与論」や「宝塚ファンの社会学 スターは劇場の外で作られる」にもまだまだスタンバッててもらうしかありません(以上、4冊ともライブラリの最初の画面にあったシェアしていないものから)。

 まあ、そう心がけてシェアしても、活字本はほとんどスルーされます。本人たちが買った本や図書館で借りてきた本は普通に読んでいるので、僕のライブラリ(からのレコメンド)とマッチしないということでしょう。
 何冊かあったちくまプリマーや岩波ジュニアを中心に、(プレッシャーにならぬよう)無言でシェアしてみたんですがね。

 感想があったのは、次女にシェアした「棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか」と「トランキーロ 内藤哲也自伝 1~3」くらいでしょうか。



(我が家では、新日本プロレス生中継をスカパー!かNJPW WORLDで必ずフォローしています。先週は5大会観戦。我がことながらどうかと思います)

 それに比べて、マンガはハードルが低い。読まれる率が高い。とはいえ、古典的な絵柄は視界から外れるようです。あるいは絵柄のストライクゾーンが狭いのかしら。横山「三国志」とか「ブラックジャック」とかエバーグリーンな名作なのに……。

弱虫ペダル」は絵柄的にアンマッチかと思いつつ、面白いし安心感があるのでシェアしてみました。健全なスポーツマンガで、主人公が好感度の塊みたいな少年でと、親として忌避する理由がありません。心配なのは、御堂筋くんの存在くらいでしょう。

 部活マンガだし興味ありかもと思っていたら、これがまさにズバリ(?)。部活を始めたばかりの長女にウケが良く、その後、Netflixでアニメ版も見ていました。あ、御堂筋くんには想像どおりのリアクションでしたよ。


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御堂筋くんの勇姿。世界8番目の不思議と言っていい。このキモォオオに比べたら、僕ヤバKarte.58の小林のそれなんて可愛いもの。
(画像は渡辺航「弱虫ペダル」57巻より)


聲の形」と「からかい上手の高木さん」は、Netflixでのアニメ版視聴(僕がリビングで観てたのを途中から観た)を経て、じゃあ読んでみる? とシェアしました。結果、前者は長女、後者は次女の琴線に特に触れた様子でした。

聲の形」読了後の長女は、いっとき「川井ムリムリ絶対ムリ」と、うわ言のように言っていました。まあ、原作の方がよりアレですし気持ちは分かります。
 掻き乱されるんですよね。完璧でない人たちが、欠点を剥き出しに容赦無くぶつかり合って闇雲なエネルギーが生まれるさまに。
 中学生が読んで “あてられた” ようになったとしても、無理からぬ話です。

 加えて、聴覚障害といじめというセンセーショナルな題材。大団円とは言い切れないラスト。少し、苦めの味がします。
 でも、中学生が読んでいい、いや全ての少年少女にも向けられた名作ですよね。いいタイミングでシェアできてよかったと思ってます。
 なお、この作品については、その後の意見交換も熱を帯びました。


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ある意味「聲の形」の象徴だった川井みき。読者のヒートを一番に買った大ヒールが、決定的な報いを受けなかったのも、この作品らしいところ。
(画像は大今良時「聲の形」5巻より)


 次女は「からかい上手の高木さん」から始まって、スピンオフはもちろん、電子既刊の山本崇一朗関連作品全て(どれも安心感ある。凄くフェティシズム漂う作者なのに)を読む、熱心なファンになりました。僕以上です。「ホントかなー」が口癖になってて笑えました。微笑ましいものです。

 ただし夫婦の会話の最中に、お父さん西片みたい、とか言われるようになったのには困り物。父親としての威厳がぐぎぎぎぎぎぎ、となりました。



(おそれ多くも)高木さんになぞらえられた格好の妻は、しかし、この作品の面白さがどこにあるのか分からない様子。アニメのチラ見しかしてないからかもしれません。とはいえ原作を読もうという気持ちも無いみたい。

 まあ、彼女が好きな「派遣戦士山田のり子」には僕もピンとこないので、人それぞれと言うことでしょう。



 妻も含めた家族共通の話題の一つが、ボードゲーム。
 カタン、ニムト、ラブレター等よくやっていたので「放課後さいころ倶楽部」は全員でシェアしました。馴染みのあるボードゲームを軸に、年の近い高校生の女の子たちがドラマを繰り広げるわけですから、子供たちには好評でした。
 妻はこれもスルーだった気がします。若さが憎いのでしょうか(嘘です。ごめんなさい)。



 他にも色々シェアしていますが、家族4人で継続して読んでいるのは「スキップとローファー」くらいですかね。
 これ、読んだ人はみんな御存知のとおり最高の学園ドラマで、全員一致も ”もっとも” なんですが、次女ともシェアできたのが嬉しいところ。この味分かるんだね、と成長を実感できました。



「僕ヤバ」を娘とシェアできるか問題

 さて、標題の話です。
 僕の心のヤバイやつ。通称「僕ヤバ」。
「陰キャ少年と陽キャ美少女の極甘青春ラブコメディ」と謳われる、桜井のりおのマンガです。



 僕はこのマンガが好き過ぎるからnoteを開設して、

先週もこんな長文を投稿しているわけなんですが、子供たちにはシェアできていません。

 正直、したいです。
 見た目の可愛らしさだけではない野心作を支える、構成の巧みさ。
 10ページ前後の短編に、濃縮された一話完結を収めていく手練。
 愛すべきキャラクターたちにつけられた、細やかな演技。
 これらの凄さを長女くらいには体験してもらいたい。そしてどういう感想を持つのか聞いてみたい。そういう個人的な欲があります。

 また、それを抜きにしても、中学生が楽しむのに概ね適したマンガだと思うんです。
 中学生の等身大のできごとが描かれているし、挫折から精神的に引き籠りがちになった市川(陰キャ少年)が今まさに殻を破ろうとしているしで、共感されそうな部分がたくさんあります。
 山田(陽キャ美少女)の明るさを見ているだけで、日頃の憂さも晴れるでしょう。もちろん2人の関係にドキドキもするでしょう。
 純粋に、面白いマンガとして受け入れられると思うんです。

 ただちょっと刺激的な描写が気になるな、と。コミックス一巻あたりのボーイズトークとか、市川が学校で劣情を催すとトイレに向かうところとか、 ”親としては” どうかなと逡巡するわけです。


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最近好感度が上がっている足立ですが、オフィシャルの紹介文は今も「ゲス野郎。」
(画像は桜井のりお「僕の心のヤバイやつ」1巻より。karte.3は全編無料公開中)


 ツイヤバ(Twitterで作者自身が公開する、僕ヤバの二次創作的スキット。本編よりもフリーダム)ほど扇情的ではないし、ツゥーマッチな感覚もないんですが、ちょっと生々しいかな、と。男親と娘だから余計に意識してしまうのかもしれません。

 もっとも、自分の中学生時代を振り返れば、もっと凄いものを読んでいた記憶があります。友達からの流入もあったし、今だってあるでしょう。
 ましてや、今はインターネットが当たり前にありますからね。自分のスマホを持っていれば、何にだってアクセスできるわけです。
 そこで親がひとり逡巡しても、どうなるものでもないとも思います。

 でも最初の方で書きましたが、やっぱりシェアはレコメンドなんですよね。そう思うと踏みとどまってしまう。ほんと、友達から借りるとかで勝手に読んでもらう分にはいいんですが(そのときは感想を教えてほしい)。

 まあ「僕ヤバって知ってる?」と子供から問われたら(実際こういうフリでよく様子を伺ってくる)、そこで「じゃあ……」と言ってシェアするのかもしれません。そういう結論。「聲の形」とかに似たようなパターンで、キッカケ待ちと言いますか。

 もちろん、問われて「知らん」と言う選択肢もあると思いますよ。
 でも、それでネット検索から無料公開分もそこそこにツイヤバへ到着し、「これが僕ヤバ」と “分かってしまう” 展開も、なんだかなぁとなるわけです。
 やはりツイヤバは本編とは違いますからね。
 作者もかつて、こう言っています。


桜井
あと最近Twitter上で漫画の第1話をまるごとアップして宣伝するのがはやってるじゃないですか。
とも子
「◯◯が△△する話」みたいなヤツですね。
桜井
でも『僕ヤバ』でアレをやろうとすると……第1話に販促パワーがないんですよね! だから新しく描き下ろさないとダメかなぁ~と思ってやってみたというのもあります。
桜井
へへへ。なんですかね。やっぱりTwitter上で読む漫画って……読み捨て、ではないですけど基本的には本編を知らない人が読むものだと思っているので。だからこう……イチャイチャを強調している……なのかなあ? 目に入ったときに「あ!!!」って思ってもらえるようなコマを作ろうと考えながら描いてますね。

 現状はファンサービスの部分も多いと思いますが、そもそもは未読者の興味を煽ることにウエイトがかかっています。本編に比べ、インパクト重視(扇情的)なわけです。最近は、市川・山田の関係進展につれ、より先鋭化されている感もあります。

 その位置付けを分かっていない長女が、未成熟ゆえインパクトだけ受け取って「これが僕ヤバなんだ。確かにヤバイね……」で完結してしまうなら、ファンとしては寂しい。だったら、問われたタイミングでコミックスをシェアして、その本来の魅力を存分に味わってもらいたい。
 そう考えてしまうわけです。

 うーん、これでは親を貫けてませんかね。いい年なのにファンとしての欲を隠せません。こんな親を知ったら、長女はどう思うのか。初めて「弱虫ペダル」を読んで彼を見たあの時のように、御堂筋くん化してしまうんでしょうか。

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 キモォオオって。

(おまけ)現在進行形で好きなマンガ10選

 未完結の作品で僕の好きなものを10作品並べました。これも自己紹介の一助になるかと。ランキングでなく順不同です。

僕の心のヤバイやつ(桜井のりお)
 たぶんラブコメの金字塔になるマンガ。
スキップとローファー(高松美咲)
 セリフもいいのに非言語表現も抜群。1巻だけでもマスターピース。
かげきしょうじょ(斉木久美子)
 100期生みんな大好き。
7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT(ハロルド作石)
 ハロルド作石だから、というのはあるけどそれ抜きでも面白い。
解体屋ゲン(星野茂樹、石井さだよし)
 守りたい、この作風。最近はこち亀の精神的後継感あり。
応天の門(灰原薬)
 菅原道真のバディものって面白そう、と思ったら本当に面白かった。
アサギロ~浅葱狼~(ヒラマツ・ミノル)
 狂気。相変わらずの達者ぶり。
ランウェイで笑って(猪ノ谷言葉)
 描けば描くほど凄くなる。TGCの圧倒的な集大成感!
メダリスト(つるまいかだ)
 情熱が溢れまくっている。期待してます。
ハコヅメ(泰三子)
 文字が多いマンガはあまり好みじゃないけれど、その例外の最たるもの。

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