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まねきケチャ『きみわずらい』を聴くと毎回泣いてしまう件について

 ある日、わけあって新橋駅近くのコンセプトカフェを訪問したところ、店内の小さなステージでミニライブが行われました。そのとき、可愛らしい女性店員たちによって『きみわずらい』という名前の曲が歌われました。僕は最初、何を思うともなしに聴いていたんだけど、だんだん、元モーニング娘。の石川梨華ちゃんへのガチ恋が極まっていた頃のことを思い出し、泣いてしまいました。

 『きみわずらい』という曲は、そのミニライブのアンコールの際にもう一度歌われ、僕はまたしても泣いてしまいました。僕がそのコンセプトカフェで涙を流すのは意味不明で、周りの人たちにいぶかしがられそうだったので、急きょ『おどるポンポコリン』のことを考えました。インチキおじさんが、おなべの中からボワッと登場してくるところを想像し、何とか事なきを得ました。

 新橋から大宮の自宅に帰ってきた僕は、インターネットで『きみわずらい』を検索してみました。それは「まねきケチャ」というアイドルグループのメジャーデビュー曲だということが分かりました。「ああ、そう言えばまねきケチャの曲だったな」と思いました。僕は地下アイドルのライブにもよく行くので、何回かカバー曲として聴いたことがあったのです。さっそくYouTubeで『きみわずらい』を検索し、イヤホンを装着して改めてじっくり聴いてみたところ、僕はまたぞろ泣いてしまいました。たぶん、おじさんになって涙腺がゆるくなっているせいもあると思います。

 『きみわずらい』という曲は、「嗚呼 全部 全部 君のせいかも この世界はまるで地獄だね」という歌詞が冒頭にあり、「地獄」という表現に驚かされます。でもその表現はまったく間違っていません。人が誰かに真剣に恋をするというのは、不可避的ふかひてきに地獄をともなうものだからです。この曲は、その厳然げんぜんたる現実から一歩も逃げていません。とても真摯しんしに向き合っています。だからぜんぜん嘘くさくないし、聴く者の心の核の部分にまっすぐ届き、その心全体を激しく震わせるのだと思います。

 『きみわずらい』には、「まるで地獄だね」の他にも、極めてネガティブな言葉がいくつか出てきます。「こんなにも世界が憎らしい」「もう気が狂いそうさ」などです。僕は石川梨華ちゃんへのガチ恋が極まっていたとき、まさにこのようなことばかり思っていました。だから「僕の気持ちを代わりに歌ってくれている!」と感じて有難かったです。しかし反対に、「こんなにも世界が美しいよ」「見るものすべてが愛おしいよ」という極めてポジティブな言葉も出てきます。この感情にも僕には身に覚えがあります。梨華ちゃんのライブを観ているとき、梨華ちゃんと握手をした直後、このような気持ちになりました。さっきまであんなに「死にたい」と思っていたのに。

 『きみわずらい』は約7分もあるとても長い曲です。だけれどもぜんぜん長く感じません。それはたぶん、その真っすぐな歌詞を聴きながら、梨華ちゃんに真剣に恋をして苦しかったことや、楽しかったことを切実に思い出してしまうからです。思い出さずにはいられないから、僕はこの曲を何度聴いても毎回、涙が止まらなくなってしまうのでしょう。

 『きみわずらい』の最後のほうに、「君の名前呼ぶたびに」というフレーズが5回も連呼される部分があります。僕はそこで涙がさらにあふれ出してしまいます。梨華ちゃんの名前を、コンサート会場やブログで、返事がなくても何度も、何度も何度も叫んできたことを思い出すからです。

 この曲の主人公は地獄のような恋わずらいをして、相手を「僕を狂わせる酷い女さ」とののしったあと、「さあ責任とって 僕の胸にちてよ」と言います。僕は、ガチ恋が極まっていた頃でさえ、そこまでのことは梨華ちゃんに対して思いませんでした。勝手にガチ恋して勝手に病んでおいて、相手に「責任を取れ」と言うのはむちゃくちゃな話です。

 でもこの曲には、それをむちゃくちゃだと感じさせない勢いがあります。メロディーと歌詞にパワーがあるからだと思います。そのため、『きみわずらい』を聴いているときだけは、「さあ責任取って 僕の胸に墜ちてよ」という歌詞に共感できてしまいます。たぶん僕の心の底のほうには、そういうむちゃくちゃな願望もまた確かに存在しているのでしょう。

 僕の中の、恋に関するありとあらゆる感情が、この曲を聴いていると引っ張り出されます。それはとても気持ちの良いことでした。普段それらの感情が表に出てくることは滅多にないですから。僕はこれからも、『きみわずらい』をたびたび聴いて、梨華ちゃんへのガチ恋をありありと思い出し、滝のように涙を流すことでしょう。でも大の大人なので、実際に梨華ちゃんに対して「僕のガチ恋の責任とってください」とは言わないようにしたいと思います。梨華ちゃんは2人の子供を持つ既婚者だし、そんなこと言われても困っちゃいますからね。

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