日報#3 “う” 「梅干し」

お金がない、何かと浪費してしまう僕なんですが今月は特にお金がない。

靴の底がパカパカしているので直したいし、髪が伸びてきたので流石に暑くて切りたいし、家に帰ったらお酒の一杯くらい飲みたいが、色々あって今月の給料日が来るまでは食事すらセーブしていかないとやっていけない。

そんな生活の中で私の味方はオートミール
370gを大体60で割るので300円ちょっとで1週間と1日分の昼食代が済む実にありがたいシロモノである。(土日は昼まで寝ている上にあまり動かないので大して腹が減らない。)

ただ一つ欠点がある。、、ほとんど味がない
オートミールは潰したオーツ麦をお湯で戻してたべる、いわば米を麦に変えたおかゆの様なものでほんのりと甘みはあるのだが、こちとら30年近くも米の国で生きているのでそうそう美味しいとは思えない。
1日50円でベースは済んだとしてもどうしてもお供が必要になるのだ。

欠点があるとは言え嫌いじゃないので過去にも食べていた期間が存在し色々な味付けを試したお茶漬けの素やほんだしを入れて和風にしたり、ホタテの顆粒出汁と胡椒と卵で中華風にしたり、寒い冬にはミルクと煮てみたり。
(過去に友人が作ったリゾット風オートミールはとても美味しそうだったが、味を整える際に加減を間違えて普通サイズの丼に対して大匙1の塩が入ったせいで今でも僕の味のトラウマになっている)

美味しい食べ方もたくさんあるが、オートミールが僕のランチのファーストコールのポジションを得ているもう一つの理由は絶対にカバンを汚さないことだ。乾燥したオートミールをタッパーに入れて持って行き、社内の給湯室のお湯で戻して食べる。なので調理ができない。

学生の時分、僕が弁当という存在とうまくやっていけないのは知らぬ間に何かが漏れているからだった。母親は忙しくてたまにしか弁当を作れなかったが、作るとなればうんとサービスをしてくれて僕の好きなおかずを必ず作ってくれた。
今でも茄子の味噌炒めは弁当のおかずの中で何よりもご馳走で、あのチキン南蛮と張り合えるレベルのスターだ。
さらに何より味噌汁が大好きな僕のためにスープも入れることのできる3段の弁当箱を与えてくれた。
普段は言えないけど、ありがとうお母さん。
しかし、手にするのはクソ馬鹿高校生こと僕、知らぬ間に弁当は傾いてメーカーさんの頑張りも虚しく3時間目あたりになるとカバンから何やらすごい匂いがするし足元がびちゃびちゃ、普段僕に目もくれない女子もこちらをチラチラ見ている。

『ねぇねぇ、彼最近変わったと思わない?、、なんか、ちょっと前より明るくなったっていうか。。あんな顔もするんだって、新しい面を見れたっていうか……..ちょっとスキ、かも?』

なんて思ってるんだろうか?
そんなわけはない、いつも尖った目で偏屈なこと言って顰蹙を買ってるキモ校生の足元からなんか得体の知れないビチャビチャが広がっている事に怯えているのだ。
実際には
『うわぁ、あいつ。ついに小動物の死体とか持ち歩き始めたんじゃねぇの??』
だっただろう。

そんな輝かしい僕の青春日記はまたの機会に…

そんなこんなで溢れない上に忙しくて食べなられなかった場合も腐らないどころか持ち越せるという言う最高のお弁当を手にしたけどおかずに迷っているという話で。

塩昆布、ごはんですよ、しそニンニク(社内で大不評)

少し物足りなかったのでやっぱりメイン系おかずをもう一品、とサラダチキン(スティック)を選びしばらく安定
+150円でこのボリューム感、オートミールの腹持ちはいいしサラダチキンは味にバリエーションがある。
オートミールは優しく控えめなキャラだが基礎には確かな実力が感じられる愛されキャラ
サラダチキンはオートミールより少し大人で色気もあれば個性的な立ち振る舞いでみんなを魅了するスター性を持ち、様々な味に変化できるという役者の顔も持ち合わせている。

個々の実力は確かだ。
確かだが、、満足感がない、“健康と満腹“を合い言葉に売り出したこの2人、別に悪いことはないが相乗効果が全く起きない。

数多のアイドルを(テレビ越しに)観てきた名プロデューサーの私は思った、このままでは売れない
決断は早い方がいい、その日オーツチキンを解散を通知。蒸田胸子(21)はアイドル活動を辞め本来の夢であった女優業に専念することになった。
一見何の問題もないように思えた突然のアナウンスは一般にも波紋を呼びラストコンサートもせずに解散となったオーチキにはありもしない噂が広がった。
一部の熱狂的なムシきょんファンは事務所に脅迫状を送りつけたことがこの2人の確かな人気ぶりを伝えるいい証拠だろう。

悲しむファンの姿に後ろ髪をひかれつつも私は何としてでも失敗に終わらせないため、すぐさま押田麦(19)と化学反応を起こし得るパートナーを探し始めた。
向かったのは社屋の一階にあるファミリーマート

熱で歪む景色を映す窓の外から冷気のオアシスを求めて人々が往来する店内、その中で太陽よりも刺激的な赤を身にまとい、突然私の目の前に現れたのが
豊島ウメ(92)

あの瞬間ほど直感という言葉を体感できた事はない、気がつくと私はセルフレジに立っていた。決断は早い方がいい..

その足で事務所(社内)は帰りレッスンスタジオ(給湯室)でまだオーチキとケジメをつけきれないでいる麦を呼び出し引き合わせた。

そして伝説ははじまった…..

つづく(わけねーよ)

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