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水彩画研究ノート【水彩紙 ー材質と性質3ー】

こんにちは。本日は水彩画研究ノート、【水彩紙ー材質と性質3-】です。
前回は水彩紙のパルプとコットン100%の違いについて記載しましたが、今回はその補足です。紙についてどこまで語る!? たかが紙。されど紙。

↓前回の記事はこちら
▶水彩画研究ノート【水彩紙 ー材質と性質2-】
▶水彩画研究ノート【水彩紙 ー材質と性質1―】
▶水彩画研究ノート【水彩紙 ー紙の厚みと紙の目ー】



1.紙と絵の具の動き

これは、私が絵を描きながら筆先から伝わってくる、紙(コットン100%、木材パルプ、水彩紙以外)の質感の違いを図にしてみました。
※あくまで私の個人的な感覚です。

水彩紙には「にじみどめ」が施されているため、水をたくさん使っても吸収してくれる。


【例えるならばエアホッケー】

水彩画を描いたことが無い方には感覚として分からないと思うので、分かりやすく例えますと…
皆さんは、ゲームセンターなどにあるエアホッケーで遊んだことはありますでしょうか?↓薄い円盤を打ち合うゲームです。

水彩紙以外(画用紙やケント紙)がまさにこれ。円盤を絵の具だと思って下さい。塗った途端、絵の具があちこちとツルツル滑ってコントロールができないのです。さらに、なかなか水が染み込まないので、乾くまで絵の具が泳ぐように動き続けます。

そこで、もしこのボードの表面に、凹凸などの抵抗を付けていけばどうなるでしょうか?円盤の動きは少し遅くなっていくので、どこに行くのか少し方向が予測できますよね。
その抵抗の大きさが 水彩紙以外の紙<水彩パルプ<水彩コットン 順で反映されているとイメージしたら分かりやすいかもしれません。

これに、紙の目や絵の具の顔料の大きさも関係してくるので、どんな紙や絵の具を使うか、どんなものを表現したいかで、筆を入れるタイミングや描きやすさが微妙に変わります。いや~水彩画って奥深いですね。

発色が良く、強いコットン100%!どんな表現もオールOK!


淡い色のパルプ紙。予想外の模様が出るのが楽しい。


実はこれもパルプ紙の細目。繊細な筆を使い、水分を抑え色を重ねていく絵ならば発色も良し。


2.画用紙の魅力

【水彩を初めて間もない頃】

さて、水彩紙以外の画用紙について触れたいと思います。こちらは私が水彩画を学び始めて間もない頃に描いた絵です。
使った紙は、ホームセンターなどで売ってる、10枚100円程の安い画用紙で四つ切サイズ(380×540mm)

画用紙の力とは…

ギザギザしたエッジが付いた輪は「輪染み」です。水分量が多いと出現しやすい模様です。上記に書いたように、画用紙上では絵の具が滑るように動いてコントロールができないので、このような模様が出やすいのです。

しかし、当時の私は何故こうなるのか皆目分からなかったし、そもそも本当に何も考えてませんでした。そして適当に描いた後に、青の模様がなんだか綺麗だなと思いずっと保管しておいたのです。(それから何年も見ることすらありませんでした)


【輪染み=失敗だった頃】

この輪染みや偶然出る模様に関して、水彩画に慣れるまでは本当に苦戦しました。水彩画教室で学び始めて数年後、教室の作品展に出すために、初めてアルシュ紙(コットン100%)使って描いた水彩画が、こちらの銀河鉄道です。

銀河鉄道

アルシュは水彩紙で最も高価な紙ですが、技術不足は承知の上で使用しました。高級紙を使えば上手くなるような気がしていたのです。
しかし、出来上がった時、空の右側にギザギザの輪染みができてしまい、私は失敗したと落胆しました。別に出したくて出したわけじゃないんです。単純に下手だったのです。
それに、紙の目が細かいタイプを知らずに選んでいました。コットンと言えども紙の目の凹凸が少ないと滑りやすいので、さらに輪染みができやすかったのです。


【輪染みが消えた今】

それから更に練習を重ねて、だんだん失敗することが少なくなってきました。水分のコントロールや、筆を入れるタイミングもだんだん分かってきたし輪染みも出ません。もちろん、模様を作ろうと思えば意図的に作れます。

複雑な雲も描けるようになってきた !
はるさき水彩画教室にて 練習画


【いわさきちひろ さん】

昨年、水彩画教室でいわさきちひろさんの絵を模写することになりました。水彩画を知らなくても彼女の名前や絵を知ってる人は多いのではないでしょうか。

使った紙は画用紙。何故かというと実際にちひろさんが画用紙を使用していたからだそうです。著名な画家ならば、厚い高級水彩紙を使用しているという勝手なイメージを持っていたので、正直ショックでした。彼女が使っていたのは画用紙だったなんて!

模倣した練習画 かすかに似ただけw

いわさきちひろさんの絵は、シンプルで簡単そうにみえますが、描いてみるとめちゃくちゃ難しい。全く同じものを描こうなんて無理無理の無理💖
シンプルな絵の奥にある、確かなデッサン力、レイアウト、バランス感覚。そして理屈じゃなくてエモーショナルな塗り。考えているようで考えていないような「適当」という名の最強の無意識…!

塗りムラや輪染み、全てが彼女の絵の世界観と混ざり合っていて、もはやどうやって塗っているのかすら分かりません。

そして、ここで思い出したんです。この絵のことを。

エモーショナル!

「そうか、画用紙だからこんな模様が出たんだ。そして、私はちひろさんと同じ様に感覚的に筆を使っていたんだ」と驚きました。
輪染みが出なくなった今、改めて見るこの画用紙の質感は新鮮だし、何より技術よりハートで描いたってことが伝わってきます。
さらに、銀河鉄道の輪染みも、あれがアクセントになっているんだ、あれでよかったんだと思えるようになりました。

小学生はテクニックを求めてないし、描きたいものを楽しく描いてるから画用紙でも絵が描ける。水彩画はもっと自由でいい。私も失敗を恐れずどんどん適当に描こう、そんな気持ちにさせてくれた画用紙。ありがとう画用紙!

いかがでしょうか?薄いけど熱い紙、画用紙。使いたくなりませんか?
ではまた次回に!


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