カリグラフィー作品 Nessun Dorma 解説
本日は、新しいカリグラフィー作品の紹介＆解説を書き綴ります。メイキングは次回の記事に書く予定です。この作品は、いつもお世話になっている、カリグラフィー教室、スタヂオ ポンテの作品展に出展させて頂きますので、手書き文字に興味がある人はぜひお越し下さい🍎
1.作品紹介
タイトル：Nessun Dorma 誰も寝てはならぬ
2.作品展案内
・スタヂオポンテ カリグラフィー作品展 Emotional Letters
・日時 2022年9月13日(火)～9月19日(月) 9:30-17:30(入館は17:30)
※16日(金)、17日(土)は20:00閉館
・会場 福岡市美術館ギャラリーF／入場無料
9月16日(金)17:00-19:00 美術館1階アートスタジオにて、15名のカリグラファーによる デモンストレーションも開催されるので、どのように書いているのか見たい人はぜひお越し下さい。
3.歌詞とあらすじ
今回、ジャコモ・プッチーニ作オペラ、トゥーランドットより Nessun Dorma ネッスン ドールマの歌詞を絵と共に描きました。面倒なので解説などあまりしないのですが、歌詞の訳が、会場に貼るキャプションには、文字数制限のため入りきれないので、noteに補足説明致します。ちなみに歌詞はイタリア語です。
トゥーランドットというオペラは知らなくても、フィギュアスケートでメロディを聴いたことがあるのでは？
◆歌詞
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Nessun dorma! Nessun dorma!
Tu pure, o Principessa,
nella tua fredda stanza,
guardi le stelle
che tremano d'amore, e di speranza!
誰も寝てはなりません！誰も寝てはなりません！
貴女もですよ、お姫様
貴女の冷たい部屋で
愛と希望に震える
星を見上げながら！
Ma il mio mistero è chiuso in me;
il nome mio nessun saprà!
No, No! Sulla tua bocca,
lo dirò quando la luce splenderà!
私の秘密は私の中にあり、
誰も名前を知らないのです！
しかし、貴女の口にそれを言いましょう
光が輝く時に！
Ed il mio bacio scioglierà
il silenzio che ti fa mia!
私の口づけは沈黙を溶かし、
貴女は私のものとなるのです！
Dilegua, o notte!
Tramontate, stelle!
Tramontate, stelle!
All'alba, vincerò!
Vincerò! Vincerò!
消えろ 夜よ！
沈んでしまえ 星よ！
沈んでしまえ 星よ！
夜明けまでに 私は勝利する！
勝利する！勝利する！
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※私の適当な訳です。間違っていたらすみません笑 イタリア語は基本、そのままローマ字読みすれば良いので一緒に歌ってみよう！
例：Amoreアモーレ愛、Speranzaスペランツァ希望、Nomeノーメ名前 （なお途中のコーラスは省略してます）
◆簡単なあらすじ
舞台は中国の北京。そこにトゥーランドット姫という、美しくも冷徹なお姫様がいました。彼女の夫になるには、姫が出す3つの謎を解かなければならず、もし答えることができなければ、斬首刑に処されてしまいます。
そこで登場するのが、ダッタン王国の王子カラフ。彼もまた、姫の美しさに心を奪われて、3つの謎解きに挑戦することに。そしてなんと、謎解きに成功し、晴れて姫と結婚…と思いきや、彼女は断固として拒絶。
そこで今度は、逆に王子から姫に謎を出します。
「誰も私の名前を知りません。もし夜明けまでに私の名前を明かすことができたら、（結婚は諦め）私は死にましょう」と。
姫は北京中に「夜明けまであの者の名が分かるまで、誰も寝てはならない！」と命令を下します。そしてカラフが歌うのが、この歌なのです。
この後、カラフの召使、リューが拷問にかけられるのですが、リューはカラフに片想いしていたので、名を明かすことなく自害してしまいます。
愛を貫き死を選んだリューに、心が揺れ動くトゥーランドット。そんな彼女にカラフは口づけをし、彼女の冷たい心は溶けていきます。そして、勝利を確信したカラフは、自身の名を彼女に明かします。
姫は、彼の名前が分かった！と民衆に勝利を宣言をし、こう叫ぶのです。
「彼の名前は”愛”です！」
4.LOVE MYSELF
◆歌に関して
オペラは詳しくないけど、Nessun Dorma という曲は、もともと大好きで、よく歌詞を練習として描いていました。
あらすじだけ読んだら、いくら美女でも、首を斬るお姫様と結婚したいの？召使が二人の所為で死んでますけど、それでも彼らは結ばれたいの？なんて突っ込みどころはありますが、まあまあ、物語ってそんな感じですよね。桃太郎だって桃から生まれてるし、動物を戦わせるなんて、かわいそうじゃないですか…笑
そんな物語の詳細は置いといて、この歌の良い所は「愛と勝利」を情熱的に歌っているところ。なによりカラフが、トゥーランドットの愛を手に入れてないのにも関わらず、それを得ることを確信している点が、素晴らしいのです。
海賊王に俺はなりたい！ではなく、俺はなる！と同様に、カラフは、あなたが欲しいではなく、「私は勝つ！ Vincerò！ （ヴィンチェロ 勝利するの未来形）」と声高に宣言しています。相手の気持ち云々より、私がそうするって決めたんだから、そうなる！この強いマインドがとても良い。
しかも、「愛してる」なんて囁く歌詞すらありませんが、「私の秘密は私の中に閉ざされている」という歌詞が、ラストに「彼の名前は愛です」と姫が叫ぶ場面へと、繋がっていくのではないでしょうか。
◆自分の世界観
最初は、オペラの世界観を忠実に描こうとしました。以前の私だったらそうしていたでしょう。舞台は北京だから、中国風ティストを入れたかもしれません。男女の愛を分かりやすく描こうものなら、↓こういうイメージで文字入れれば、一番分かりやすいですし。
また、絵の横や上に、文字を離して書いていたでしょうし、字は丁寧に正確に書いていたでしょう。
でも、今回はそうはしませんでした！
愛を込めるならば、まずは自分自身の愛を込めようと決めたからです。誰かを愛する前にまず自分。そう、この絵は、曲を通して生まれた私の世界観を優先させています。Love Myselfです。もちろん、曲には最大限のリスペクトを込めてます。
だから、曲は聴いてもあえてオペラは見ませんでしたし、（影響されてしまうので）舞台とは関係ない、私が育てた薔薇も描きました。
秘めた想いを表現するのに、文字を星々に見立て、絵にわざわざ重ました。こんなことすれば、絵が観にくくなるし、粘度の高いマスキングインクを使えば字の精度が落ちるのは、最初から分かっていました。
いいんです。私がやってみたかったから笑。
カラフと同じように、白紙の紙を見て、私は「勝利する」と決めたのです。その時点で下書きもないし、時間もないのに。
正確さは無視し新しい表現に挑戦したこと、時間内にやり遂げたこと、絵の具の特質を見極めたこと、私は私の世界の中で、実際に勝利しました。不完全な点を含めて完璧。やったー！おめでとう私！！
次回はメイキングをご紹介します🌟
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