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小説|三日月が私の帽子だった話

ある日お気に入りの三日月を
帽子にかむって
夕暮れ時を 散歩していた

そこそこ風もあって
良い気持ちだ
私は 頗る機嫌が良かった

さて 三つ目の角を曲がったところで
後ろから変な声がした

いやいや おまいさん
そんな物を かむられると
実に困るなあ

何だ 変な事を言ってくる
振り向くと 誰もいない
空を見ると 月がいなかった

ふいに私の身体が宙に浮き
ひゅーーーっと空にひっぱられた
三日月は空に張り付き
辺りは一瞬で夜になった
私は とんがった三日月の
さきっちょにぶら下がって
ゆらゆらと揺れていたのさ

いやいや 申し訳ない
これは すまない事をした
三日月がなくて
さぞかし不便だっただろう
しかし これでは私も困る
地面に下ろしてくれないか

いや ちょっと待って
このまま 落とされては困る
怪我をしたら たまらない
いやあ 参ったなあ

それにしても 君
随分と細い お月様だなあ
まるで マッチ棒じゃないか

三日月は ふいに みるみるぷうっと膨れだした
ご機嫌を損ねて
ますます膨れ上がった
まん丸い満月は 膨らみすぎて
地面にくっついた
お陰で引っかかっていた三日月もとれて
私は地面に降りたのだった

また宵の口
散歩の続きもそこそこに
帰路についたさ
振り向くと 月は満月



小牧幸助さんの企画に参加させていただきます。


よろしくお願いします♪ ぴったし500字です。


こちらも、ステキなんですよね。



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