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マッチングアプリを消した朝

昨日までマッチングアプリで楽しく話していたと思っていた相手から

ブロックされたと気づいた今日の朝6時前。

少しショックでまごつく心をもって
気分転換に散歩に出ると、

ピンクがかった空が、いつかの東京の暮らしを思い出させた。


満員電車を避けるため早朝5時台から飛び乗った
電車の窓から眺める朝日が好きだった。
それを見る度早起きした甲斐があったと思ったものだ。


ふと「一生に、残りどれだけの季節を巡る事ができるだろうか」
何てよくある問いが頭をよぎる。

春夏秋冬、残り60回分くらいだろうか。結構少ない、いや多い?

けれど朝日と夕日には、晴れたらいつでも会うことができる

それって結構ありがたいこと。


季節、と言っても夏と冬。
深まれば深まるほど嫌気すらさす。
暑さに、寒さに、身が堪える。

互いの季節に堪えると、

互いの季節を請い待ち侘びる。

なんかそれも、
いつものこと。

いつか待ち侘びた今年の夏も
いつの間にかうんざりしていた気がする。

きっと毎年そう。夏よごめん。


夏が終わりかけてようやく涼しく、なんて歓びも
束の間。
それを知ってるからだろうか、秋はもの悲しい。

その物悲しさを慰めるような秋の朝が好き。
夏は暑かったろうなんて
言ってくれてるような
ちょうどいい涼しさ。


今が秋だから朝の散歩に思いを馳せる
余裕があるのだろうけれど。

これが冷え切る真冬の朝なら
布団から出たくなくなるだろう。

寒さが身に染みて、
きっと今年の冬も夏を希う
そんな気がする。


秋の曙に彷徨って
ふと枕草子の冒頭を思い出す。

「春はあけぼの。夏は夜。」しか、知らないぞ、
冬はなんだと調べてみたら、

「冬はつとめて」

そう言われたら冬の朝も楽しみになる気がした。


空に、季節に心を遊ばせていたら

いつしかブロックされた気持ちも和らいだ

意外とドライな繋がりに
自分には合っていないと思ったから
アプリは消した。

きっとあそこは自己という小舟を乗りこなせる人が
向いている出会いの場なのだろう。

たくさんの小舟が近づいて離れて、
ぶつからないように距離とって、
オールを巧みに使いこなす人が集まる。
そんな湖

そう思うと自分には向いて無かったと改めて思う。


少しの間。チャットしてくれてありがとう。
漕ぐのが下手な僕と、少しでも並走してくれて嬉しかったです。
顔も知らないけれど、いつかあなたが
あなたの望む人とマッチングできますように願っています。

僕は岸に上がってつぶやくけれど届くはずもない
あなたは漕ぐのが上手だから、聞くまでもない言葉。


「もうすぐ冬だし湖凍る気がしたから岸に上がったんだ」
なんて。軽い冗談も思い浮かんだけれど、
少し重く、距離感とか反省した方がいいのかな。


けれどやっぱり
僕は人との出会いが好きかもなんて、思った朝。

別れも込みで。


また次も違う形で繋がりを求める。多分。



枕草子と近所の猫、置いておきます。

春はあけぼの。

 やうやう白くなりゆく山際、
 少しあかりて、
 紫だちたる雲の細くたなびきたる。
 
 
 
 夏は夜。
 
 月の頃はさらなり。
 闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。
 また、ただ一つ二つなど、
 ほのかにうち光りて行くもをかし。
 雨など降るもをかし。
 
 
 
 秋は夕暮れ。
 
 夕日のさして山の端いと近うなりたるに、
 烏の、寝どころへ行くとて、三つ四つ、
 二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。
 まいて、雁などのつらねたるが、
 いと小さく見ゆるは、いとをかし。 
 日入り果てて、風の音、虫の音など、
 はた言ふべきにあらず。
 
 
 
 冬はつとめて。
 
 雪の降りたるは言ふべきにもあらず、
 霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、
 火など急ぎおこして、炭持てわたるも、いとつきづきし。
 昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、
 火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。
枕草子

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