見出し画像

【音楽祭】春を想う。 ▷ 屋根裏

▒ 春夏秋冬イメージソング
──────────────

冬生まれの僕は暑がりで、夏を嫌い、小さい頃は冬を好んでいたんだけれど、30代に入ってからは暑さはもちろん、寒さにもめっきり弱くなって、今はどうやら秋が安心する。上着を一枚羽織るぐらいの涼しさが丁度いい。
でも、最寄り駅から家まで徒歩で20分の道程を、バスではなく敢えて歩くことを選んでいるのは、無意識ながら、この季節を想っているからかもしれないなと、最近になって気が付いた。

母が好きだった桜を追い求めるようになったのは、何も母が亡くなってからではない。小学生の頃、遊び倒した地元の公園にも、キミという縁に巡り逢えたあの大通りにも、実家にも今の家の前にも、いつも傍に桜の木があった。

今年は、例年に比べて桜の写真をたくさん撮れたので、僕が好きな春の歌を紹介しながら、桜の写真で彩りたいと思う。これが僕の、春アルバム。

「早いものね」と心が囁いた
言われてみれば「うん、早かった。」
また昨日と同じ今日を過ごした
そんなことばっか繰り返してた
明日が晴れるなら それでいいや
明日が来るのなら それでいいや
あなたが笑うなら なんでもいいや
世界は変わりゆくけど それだけでいいや

春は始まりの季節、というイメージがどうにも根強い。始まりは終わりでもあって、終わりということは始まりでもある、こんなに穏やかな日溜まりに、吹き荒ぶ春の嵐。温もりとは打って変わって、「激動」の言葉の方が似合いそうだな、とさえ感じる。
僕が異動した新部署の稼働通知が他の責任者にも行き渡り、開口一番冷やかしを受け、煙たがられ、そういう扱いを受ける度に心の中で、ああごめんね貴方達と違って僕ってば優秀だからさ、と心にもない言い訳を反芻する。微塵も思っちゃいない。思っちゃいないし、出来ることならこういうひねくれた考え方はしたくなかったんだけど、頭の中で思うだけならタダだろう精神で、冷やかされては、内心では斜め上からごめんね、と謝る。そうすると意外にもダメージが少なくて済むのもまた、新発見だった。
ヤギさんが言っていた、受け流すとか、防御力を上げるってこういうことか、と、ひとり納得していた、深夜。風が、冬に吹くそれみたいに、きんと冷たかった。

人のことが嫌いになりそうだ。
自分のことも嫌いになりそうだ。
でもどうせ僕は、結局人のことが好きだから、嫌いになれはしなくて、このひねくれた性格さえも、僕自身の生きる術に成り得るなら、これでいいや。と、思うことにした。

 

高架橋を抜けたら道の先に君が覗いた
残りはどれだけかな
どれだけ春に会えるだろう
散るなまだ、花吹雪
あともう少しだけ
もう数えられるだけ

こうも毎年、日常生活圏内に桜があると、いずれ飽きが来るのかなんてぼんやり考えていたけど、毎日見上げる、その時を心待ちにしていて、満開になった姿を見て、「やっと会えたね」と、素直に思う。

恋かもしれないな。
風で舞うその花弁、ひとつひとつさえも尊くて、桜色から覗く緑に春を惜しんで、また来年、と勝手に約束を取り付けて、来年再来年の僕がまたこの桜に会えるとも知れないくせに、心のどこかで会えると信じて止まなくて、この季節が、桜の咲く季節が、恋しい。

家から最寄り駅までの間には、桜だけでなく、桃や梅も咲き並ぶ。そこまで花や植物に詳しいわけでもないのに、わざわざ足を止めてでも眺めていたくなるのなら、それはもう恋と言っても過言ではないでしょう。

ハロー 君はあの頃と同じ場所で
今もまだ悩んでますか
ハロー 僕は相変わらず毎日を
何となく 過ごしています
雪が積もる季節を越えて 雲が唸る季節を越えて
君らしくいられるスピードで 歩いてけばいいよ

 

時間も寿命も有限だから、死ぬ時に後悔のないように、いつ死んでも出来るだけ悔やむことが少なく済むように、有意義な日々を、平穏な日常に意味や価値を求めて、生き急いでいた気がして、少し歩く速度を緩めた。
それがどこか後ろめたくて、誰に責められたわけでもなく、後ろ指を指しているのは間違いなくあの日の僕で、でもその手をそっと降ろしてあげたのも、いつかの僕で。無意識に背伸びし続けていたことに気付かされた、気がする。

結局何が幸せかは自分の心が決めることで、意味も価値もない、何となく過ごす日々だっていいんだ。勿体ないと思ったら動けばいいし、しんどい時は充電期間でいい。横殴りの雨の日もあれば、追い風ばかりとは限らない風が吹き荒ぶ毎日を、常に競歩してたらきっと、疲れちゃうね。

だって、桜は夜も雨の日も、こんなに映える。
だからあなたも僕も、きっと。

その都度、僕に合わせた、僕が僕らしくいられるスピードで、歩けばいい。
協調性に欠ける僕は、人の足並み以上に、自分のペースすらも見失っていたことに気付けた。この春は、発見が多くてとても充実している。心が満たされる。

次もまた、会えるかな。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。あなたの春のイメージソングも、よかったら教えてください。

ここまでのお相手は【花時雨の微睡みに、屋根裏部屋で。】オーナーの由眞でした。
もしお花見気分になれたらスキ押して頂けると嬉しいです。またどうぞ、お立ち寄りください。

それではまた、屋根裏部屋で。

もうすぐ君の街も 綺麗な花が咲くよ


この記事が参加している募集

桜前線レポート

みんなでつくる春アルバム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?