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今日もじじいの顔が良すぎて尊い・其の弐

 このタイトルの、じじいとは誰か。審神者ならもちろん言わずと知れたSSSSR(刀剣乱舞内ではランク5)太刀の「三日月宗近」のことである。

 映画の中の三日月宗近の素晴らしさを語る前に、ちと、史実の三日月宗近、そして「刀剣乱舞ONLINE」の三日月宗近、そして私と三日月宗近について語るのにしばしお付き合い願いたい。私自身も、実は三日月宗近についてはよく知らなかったのだ。
 自分は三日月宗近についてはよくよく知っている、別にお前とじじいの馴れ初めなど不要だという方は、こんな記事を読んでいる時間があったら是非とも映画館に(ry

 まずは史実の三日月宗近について。
 平安時代の名刀工・三条宗近の作とされ、国宝である。
 刃長80.0cm、反り2.7cm、元幅2.9cmの太刀。

「天下五剣のうち最も美しい刀」「名物中の名物」「他の追随を許さぬ、奇跡と上品さを併せ持つ」「姿と気品の高いこと、古刀中の第一等」など、美しい刀としてのありとあらゆる賛辞を欲しいままにしてきた。

 三日月宗近、その名すらも美しい。由来は、刀身に多く見られる打ち除け(焼き入れの際に現れる刃文の一種。刀身の配合などで異なり、ノウハウは門外不出とされる)が、雲の間の三日月のようだと言われるところだそうだ。
 何もかもが美しすぎる。寸分の隙もない。

 確かな史実としては秀吉の北政所のねね(高台院)が所持していた、というのが一番古い記録であるらしい。それ以前は足利の宝剣であった、即ち室町幕府の将軍が所持していた説もあるのだが、学術的に信頼に足るような記録は残っていない。
その後高台院が徳川秀忠に遺贈し、以後徳川将軍家の所有となるも、時代の動乱の中で個人収集家の手に渡り、その後、国立博物館に寄贈される(現在も国立博物館が所有。ただし常設展示ではない……次はいつだろうか………)。

 こうして調べてみると、刀としての三日月宗近についてはとにかく美しさだけが突出して賞賛されている。故に「刀剣乱舞」でも、その姿は天下五剣の最高刀の名に恥じず、実に典雅にして優美。切れ長の目の細面の美青年で、たおやめぶりも半端ない。小首を傾げた立ち姿も艶やかだが、狩衣姿でいとも容易く太刀を振るう姿もまた美しい。流石は「刀剣乱舞ONLINE」のアイコン男士である。刀剣乱舞に興味がない方でも、所謂アニオタ、ゲーオタ属性の方ならば、藍染めに金の三日月の意匠を施された狩衣姿の彼を、ア……ト、コ……トなど、至る所で一度なりとも見たことはあるはずだ。

 だが刀とはそもそも、人を斬るための「武器」である。刀として如何に美しくとも、武器としての評価と実績はどうなのか、ということに関する華々しい史実が、実は三日月宗近には今ひとつ残っていないという。

 そのせいだろうか、「刀剣乱舞ONLINE」としてのキャラ設定はおっとりした優雅な平安貴族の青年然としながら、自ら「じじい」と称するような若干自虐が入った自己紹介をする。彼がじじいなら、この世の半分くらいの男性は皆じじいということになるだろうが、忘れてはならない。彼は平安生まれであり、じじいどころかもはや化石だ。しかしなんと美しい化石だろう。
 
 あまり雄弁ではないらしく、セリフは全体的に短く、自分のこともあまり語らない。先述の通り、己の中に語るべきことがないからかもしれない。
 公式の紹介文では「究極のマイペース」と書かれているように、かなり天然ボケが入っている。平安生まれのくせに?意外なことに自分を「俺」と称する。お洒落が苦手と本人も言う通り、内番姿は残念なイケメンと言っていい。おっとりしたじじむさい話し方も相まって、せっかくの顔面偏差値カンストが台無しだ。
 だがこの落差が非常に良い。
 多分狙っている。

 とまあ、ここまで手放しで三日月宗近を絶賛してきたが、正直に言おう。
 私は審神者としては三日月宗近に全く興味がなかった。
 この「狙っている」ところも、むしろ興味をそそらない一因だった。

 戦国武将ならおそらく皆が喉から手が出るほど欲しがったであろう名物中の名物であるからして、三日月宗近のゲーム内のレア度はもちろん最高ランクの5。しかし期間限定ではなく、実は期間を問わず、常に通常操作(鍛刀や周回ドロップ)で出せる可能性がある。
 しかしそのレア度の高さから、長年審神者を真面目に務めていても、未だ鍛刀(あるいはドロップ)としては一振りも顕現したことがない本丸もあると伝え聞く(ちなみにゲームとして配信開始されたのは2015年1月である)。

 我が本丸にも長く三日月宗近はいなかった(過去形なのは、今回の映画との連動イベントで、映画に登場する八振りの刀剣男士がログインボーナスとしてもれなくもらえたからである)。
 しかしアイコン男士であるが故、目にする機会が非常に多くうっかりすると我が本丸にもいるような錯覚に陥る。なんなら結構簡単に鍛刀あるいはドロップできるのではとすら勘違いするが、資材に課金しようとも全く鍛刀できず、バターになる程周回しても落ちてこない(という)。やはりSSSSRなのだ。

 普通なら、入手が難しい刀ほど滾るのが審神者たるものの務めであろう。史実はともあれ、刀剣乱舞での彼は素晴らしく能力の高い刀剣男士だ。そりゃあ信長や秀吉でなくたって欲しいと思うだろう。なにしろ命を賭けての合戦に勝たなくてももらえる(こともある)のだから。
 鍛刀に資材をつぎ込み、時間をつぎ込み、何度もドロップエリアを周回する。運良くそこまでしなくても手に入ることももちろんあるだろうが、そういう運のいい審神者はごく少数で、他は毎日鍛刀と周回の繰り返しになる。これもまた辛いが、戦国時代とどっちがいいかと聞かれたら、こっちの方が全然マシである。

 私がそもそも審神者になったのは、三日月宗近ではない他の刀剣男士が目当てだった。しかし彼はそこまでのレア刀ではなかったため、資材(と少しの金子)を投入しただけで、あっさり我が本丸に顕現してくれた。

 そんなわけで私は、三日月宗近絶対欲しいガチ勢ではなかった。推し男士の主張通り、武器は武器らしく、強くあればそれだけで十分に価値がある。だからわざわざ時間と金をかけて三日月宗近などを顕現させる必要はない。まあ、来たら来たで吝かではないがな。来るというなら拒まんでもない。
何故そんな上から目線が出来たのか今では全く以て謎だが、当時はそう思っていた。

 

 長くなりそうなので、次回に続く。


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