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なんか好き、面白いを言語化する質問リスト

写真や絵を眺めていて、なんでその作品をいいと思うのか、よく分からないことが多い。時間をかけて見ても、うまく言葉にできなかったりする。
言葉が浮かんでこない時のために、いろんなところにメモして散らかっていた質問をまとめた。

写真や絵に特化した質問だけど、他のジャンルの作品について感想を書きたい時も似たような質問を使う。
順番は気にせず、答えやすい質問、答えたい質問から埋めていく。最初に浮かばなかった質問に対しても、他の質問に答えているうちに何か言葉が湧いてくる。考えるきっかけになればいいから、全部の質問に答えなくてもいい。気がすんだところで終わりにする。

質問リスト

印象にまつわる質問

  • 作品に対する印象は?見てどんな感じがしたか?

  • 思いつく形容詞、形容動詞、副詞は?

  • 思いつくオノマトペは?

  • 作品から想像できる音、匂い、空気、感触、会話は?

  • どんな時にその作品を見たいか?

  • 作品を見て何をしたい気分になるか?

  • 作品を見て呼び起こされる記憶、連想は?

  • この作品に音楽をつけるならどんな曲が合うか?

  • この作品をポスターや本の表紙にするならどんな内容が合うか?

事実にまつわる質問

  • 作品に写っている物、描かれている物は何か?

  • どんな場所が描かれているか?

  • どの時間帯、天気、季節が描かれているか?

  • 作品内ではどんな現象や行動が見られるか、どんなシーンだといえるか?

  • どんな色、光が使われているか?

  • どんな形や線があるか?

  • どんなタッチ、絵柄か?

  • どんな構図か?

  • アングル、遠近感の具合は?

  • 作品を見た時、どのように自分の視線が流れるか?

※自分に分かりやすく簡単なタイトルにしたくて「事実」と書いてしまってるけど、正確な言い方ではないなと。視覚に忠実な、個々の要素の認識という意味。見える物が何であるかは、個人的な解釈なので。

惹かれる理由にまつわる質問

  • 作品のどこが、どんなふうに好きか?

  • どの要素が欠けたら、作品の魅力がなくなるか?

  • 同じジャンル、同じモチーフを扱った他の作品と比べて違うところは何か?

  • 共感したことは何か、自分のどんな欲求に結びつくか?

  • どんな意外性や驚きがあるか、自分の当たり前と違っているところは?

  • 写っている物、描かれている物の中に対して、元々どんな印象を持っていたか?それぞれの物に対して、どんな時どんなふうに接しているのか、そこから見えてくる物と自分の関係性は?

  • 作品を見て疑問に思うこと、知りたいと思うことは何か?

質問リストを使う

質問に対してメモすると例えばこんな感じ。
Twitterで集めた絵の中でひとつ選んだ。質問に答えながらじっくり見る。メモの内容が、質問や絵から離れていっても気にしない。つらつらと書く。

印象にまつわる質問
・作品に対する印象は?見てどんな感じがしたか?
室内なのに雨が降っていて、傘を差しているのが面白い。雨そのものも鑑賞体験に含まれている。なんだか落ち着く。実際にこんな展示があったら体験してみたい。
・思いつく形容詞、形容動詞、副詞は?
しっとり。静か。しめやか。しとしと。静謐な。瑞々しい。
・思いつくオノマトペは?
さー。ぴちょん。ぱらっ、ぱらっ。ぽと、ぽと。
・作品から想像できる音、匂い、空気、感触、会話は?
傘をそっと打つ柔らかい雨音。濡れた靴音。床に響く硬い靴音が響く。植物の濃い匂い、雨の匂い。潤んだ空気。肩が濡れる感触。一人で黙っていて、会話はない。まわりに誰もいない。雨音だけ、頭の中に浸み込んでくる。照明は自然光。直射日光の当たらない所は少し暗い。美術館特有の静謐な空気。無機質な空間で際立つ、有機的な植物や雨の存在感。
・どんな時にその作品を見たいか?
疲れた時。緑に触れたい時。晴れて暑い時。
・作品を見て何をしたい気分になるか?
深呼吸。ゆっくり歩きたい。苔をさわりたい。瑞々しい緑の匂いに包まれたい。雨も悪くないなと思った。丸い水晶のようなつやつやとした雨粒も見たい。
・作品を見て呼び起こされる記憶、連想は?
日本庭園を建物の中から見ている感覚と似ている気がする。または和室の中から窓で切り取られた自然を見るような。自然そのものを作品として捉えているようなところ。
みっしりと生えている苔の、ふさふさした感触。子供の時に読んだ『雨ふりマウス』の本。
・この作品に音楽をつけるならどんな曲が合うか?
メロディーや歌詞はつけない。雨音で頭をいっぱいにしてその場の空間をゆっくり感じられるようにする方が合うと思う。
・この作品をポスターや本の表紙にするならどんな内容が合うか?
人が作ったものではなく、自然を際立たせて鑑賞する視点を持てるような美術展のポスター。
事実にまつわる質問
作品に写っている物、描かれている物は何か?
苔、花、シダのような植物がそのまま額縁に入れられて飾られている。人が傘を差して背を向けて佇んでいる。男性のように見える。白いシャツとズボンを着た男性が、壁に展示された緑を見ている。額縁は4枚。植物は額縁からはみ出している。室内の様だが小雨が降っている。
植物が密に茂って額から溢れて生き生きとして見える。植物の視点でも雨を感じられそう。
・どんな場所が描かれているか?
展示室のような、美術館のような場所。 外か中かはっきり分からない。室内に見える。でも外にいる時のようにわざわざ傘を差している。天井があるのかが分からない。でも頭上は暗いから、天井がある室内のように思える。
・どの時間帯、天気、季節が描かれているか?
季節は緑が鮮やかな5月~8月のような。弱い雨で梅雨時のようにも思える。雨だけど画面全体はそれほど暗くない。陰った部分も明るい。室内は雨のようだが、外は晴れているような日差し。 日が高い時間帯。
・作品内ではどんな現象や行動が見られるか、どんなシーンだといえるか。
美術館のような場所に来た男性が、一人で植物を鑑賞している。雨という現象を含めて身体で味わう鑑賞。
・どんな色、光が使われているか?
全体的に緑色。人物の白い服も、傘も壁も、緑がかっている。光は頭上から差していない。天井からではなく、大きな窓またはドアから自然光が斜めに入っている。室内で照明はついていないかのように影の部分が暗い。人物の服、傘の明暗が細かい。光の当たった額の鈍い光沢が、金属という感じ。
・どんな形や線があるか?
雨は細くて儚い線。植物は輪郭線ほぼ見えない。人物の服が一番線が多く細やか。人と植物の曲線。額の直線、直角。
・どんなタッチ、絵柄か?
植物や壁は塗りが厚く均一。人と傘は水彩画っぽく滲むような陰影で繊細な感じ。
・どんな構図か?
画面の中心に人物がいる安定感のある構図。額の四角に対しても真正面から見ていてどっしりとしている。斜めに入った光で動きがある。情報量の少ない左上が単調に感じない。
・アングル、遠近感の具合は?
人の高さの目線、額に対して真っ直ぐ向かっている。人の顔が見えないのもあってその場に立った気分を想像しやすい。壁、植物、服の光の明暗による奥行き。壁の明暗と、見切れた両端の額で空間は広そうに感じる。
・作品を見た時、どのように自分の視線が流れるか?
傘と背中→真ん中の額の植物→両端の額の植物→フレームの周辺全部の雨→傘と服のしわ
惹かれる理由にまつわる質問
・作品のどこが、どんなふうに好きか?
アイデアが楽しい。鑑賞すること、雨で傘を差すこと。それ自体は日常的なのに、掛け合わせて不思議な感じや心地よい感じを作りだしている。雨が楽しみになりそう。他に好きなのは、特定の人の顔が描かれていないところ。植物が額からはみ出ているところ。植物から溶け出したように全体的に緑色に染まっているところ。雨が消えそうな線で主張が強くないところ。植物は緻密な描き方でないのに自然な雰囲気を感じるところ。
・どの要素が欠けたら、作品の魅力がなくなるか?
壁と傘。室内か屋外かを曖昧にして非日常感を強めているのは傘を差すという行為。
雨と明るい日差しの組み合わせ。どんよりと重く暗い雰囲気ではなく、静謐で爽やかな空気を感じる雨。
・同じジャンル、同じモチーフを扱った他の作品と比べて違うところは何か?
植物を壁に飾るインテリアはありそう。雨が降っていて傘を差している状況が、室内と屋外における当たり前が崩される感覚が心地いい。鑑賞される側の植物にも、鑑賞する人側にも等しく雨が降っていて、見る側と見られる側の分離をはっきり作りつつも、雨を通して見る対象とつながる水槽のような空間が不思議。
・共感したことは何か、自分のどんな欲求に結びつくか?
静かに落ち着ける時間を過ごしたい。雨をポジティブにとらえたい。一人になりたい。植物の濃い匂いを感じたい。
・どんな意外性や驚きがあるか、自分の当たり前と違っているところは?
雨と屋内のような場所の組み合わせ。傘を差す方が楽しめる、雨の方が面白い事があるということ。
・写っている物、描かれている物の中に対して、元々どんな印象を持っていたか?それぞれの物に対して、どんな時どんなふうに接しているのか、そこから見えてくる物と自分の関係性は?
傘は持ち歩くのが億劫と思ってる。外出先で濡れた傘をしまう時も好きじゃない。雨もどこへ行くにも不便で億劫だと思ってる。服や靴が濡れたり、持ち物増えたり、電車が遅れたりするし、洗濯が外に干せないから。雨の中で人と話をする時も、雨音と傘でできた距離で声が聞こえづらい。
屋外でプライベート空間ができて、雨と傘を良い思う瞬間はある。傘を差すと簾のように降りた雨が、やんわりと自分との他の人を隔てる。だからパブリックな空間では、晴れよりも雨の時の方が一人の気分になれる。
後の予定がなく濡れてもどうでもいい服装で寒くない時は、いっそ濡れた方が清々しいこともある。年に1、2回あるかどうか。
家にいて外に出る予定がない時は激しい雨、風音、雷は非日常感があって気分が上がることがある。雨の日は周りの物の材質や形によって違う音や匂いが立ち上って物の存在感が強まるのは楽しい。木や瓦、漆喰が多い和風の街並みは、昼間の雨が映える。ガラスや金属、コンクリート、暗くても灯り多い都会の街並みは、夜の雨が映える。
・作品を見て疑問に思うこと、知りたいと思うことは何か?
傘や服のしわの書き込みが細かい、色が淡い。作者の方は布や繊維の質感が好きなのだろうか。
「雨天鑑賞」というタイトルから絵を思いついたのだろうか。それとも絵を先に描いてタイトルをつけたのだろうか。
もしこれが物語の一場面だったら、この人物はなぜここにいて、この後どうなるんだろう。
実際に雨を屋内に引き込んで、雨を建築や内装の一部として魅力的に見せる建物はあるのだろうか。外観の一部として雨を利用するものはあった気がする。
雨の日限定で楽しめる、雨の日だからこそ出かけたくなるアクティビティや施設はあるんだろうか。雨の日も楽しめるものならたくさんありそうだけど。

終わりに

言葉が出てこない時、その作品を構成している要素を小さく分けて、それぞれ考えてみる。でてきた言葉が印象なら、その根拠となる事実を。印象を言葉にできないなら、逆に事実を書いていき、そこからどのような感じや気分を味わえるか考える。主観的な印象と、客観的な事実を行き来する。
要素を分解して見ると、すでに他の人の感想を知っていてもいったん忘れて、まっさらな気分で作品に入り込みやすい。その後、好きだと思う基準はこれかなと思ったり、他の人との解釈の違いや共通点を見るのも楽しい。
今回一例を書いてみたけど、ひとつの作品に対して全部の質問にメモをしたのは初めてかもしれない。最初はさくさく気軽に書いていって、だんだんメモすることにはまっていく。全部の質問にメモするのはわりと大変だったけど、デトックス効果が高い。すっきりした。

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