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地元より~山歩きはどうか気をつけて

千葉県富津市梨沢。山深き過疎地域です。ここのところ山の事故が続きました。地元民はほとんど山に入りません。山歩き、沢登りを楽しむため訪れて下さる皆様が、たびたび事故に遭っています。それが気になって個人的な考えを書きました。山歩きについてはまったくの素人です。もしよければ、ご専門の方の知見などご教示いただければ幸いです。

紅葉がはじまりました

どう書きだしたらいいのかわからないので小説風に

母と私は薬師堂に登る山道を掃いている。11月に入って晴天が続き、落ち葉は乾燥していて軽い。明日は薬師様のお十夜。コロナ禍で中断したので5年ぶり。ほんとうは夜に行う行事だけれど今回は昼間にしたそうだ。
母が言った。
「先週また遭難したひとがいたんだよ。無事に助かったってことだけど。消防の人が救助に行ったって」
「そうなんだ。よかったね」
「ついこの前も事故があったばかり。このままじゃ、梨沢は遭難する危険な場所で有名になってしまう」
母は口調だけは冗談めかしていたので、私もなんとなく笑った。けれど、ふたりとも本気で心を痛めている。今年に入って、2名もの方がお亡くなりになったのだ。地元の山で。
”遭難する危険な場所”
…になってしまう、と母は言ったが、それはもはや事実ではないだろうか。
そのことを、来るひとたちにはたぶん知らない。
だから事故が続くんじゃないだろうか。
(どうしたら、知らせることができるんだろう)
私はアシリパさんの声で考えた。

お薬師さまへ上がる道。お掃除したてできれいです。


…というわけで、とりあえずnoteという場所に個人的な考えを書いてみようと思いました。
地元のおばさんが「あっちんほうはあぶねっぺ!(房州弁)」と言っているだけの文章です。千葉県富津市、梨沢渓谷に来られる皆様に今の状況を知っていただければ幸いです。

1.スマホはあんまり役立たない

房総丘陵。標高は高いところでも400メートルくらいだと思います。ほんとに、地図上ならすぐそこに市街地。
集落のまわりならスマホもインターネットもOK。でも、一歩山に入ったら、場所によっては、というかもしかしたらほぼ、スマホ、つながらない!と思って下さいな。
もし山から滑り落ちたらまずゼッタイ圏外です。
迷って助かったひとは、連絡がついた方です。不幸中の幸いで、携帯の電波が届くところで迷われた。そういうことなのではと。

2.道、ないかも!

令和元年、台風15号が房総丘陵をズタズタにしていきました。木々は引き裂かれ、竹は倒れ、崖は崩れました。
鎌倉古道、と称して以前地味に人気のあった山道は立ち入り禁止になりました。
なんとか、生活道路くらいは復旧したころ、コロナが来たのです。
山道を整備する地域の行事も取りやめになって3年。
台風15号によって破壊されたまま、山は放置されています。
だから、山歩きじゃないと思うんです。ほとんど藪歩きじゃないかしら。
方向も見失うというものです。

とはいえ、いいところです。

3.ガイドがいない。

ガイドといっても、捜索の案内人の話です。
おそらくどこの里山集落もそうだと思うのですが、
ひと昔前までは、山を知っているおじさんが地域にいました。
猟友会の方々とか。
というか、山が生活圏だったんですよ昔は。竹をとったりきのこをとったり山芋をとったりね。猟友会でなくても山に行きました。用があったんですね。
ですから以前は、行方不明者が出ると、警察から依頼され、そういう山を知ってる地元のおじさんが捜索に加わりました。
いま、そういった方々はご高齢になり、あるいは鬼籍に入られ、後継者はいません。
山を案内する人はいないのです。
代わりに増えたのは、イノシシです。キョンも爆繁殖中です。
もちろん、現在も、消防や警察の皆様が捜索されます。でも、そこに生かされる地元の知見は、以前よりぐっと少なくなりました。

よく、バイカーやサイクリングの若者が通ります。さらにイノシシもサルも通ります。

4.登山届などないからこそ

登山届なんてもちろんありません。でも、いざ行方がわからなくなって、捜索するとき困るのは梨沢から、どっちへ入っていったのか? ということです。梨沢渓谷? それとも大塚山? 
行き先は富津市梨沢。でもそれだけの情報では探すのがとても難しくなります。
池袋に行く、といって芸術劇場に出かけたら、サンシャインを探しても見つからない。同じように、大塚山に行かれたのに梨沢渓谷を探してもみつかりません。地図上は近くても。
ご家族に、どうか行き先と方面を伝えてお出かけ下さい。
『富津市梨沢の奥の、七ツ釜へ行く。ルートは沢登り』
このくらいこまかくわかっていると、探しやすいのですが、なかなかそうはいかないかな…。

最後に

近年、さまざまな方が訪れて下さることが増えました。
嬉しいことです。
以前から、数年に一度、遭難される方はいました。
ですが今年は痛ましい事故が複数回起きてしまっています。
どうかもうこういう事故が起こらないでほしいと心から願っております。
そのせいか、この文章の見出しは「~ない ~ない」と警告みが強くなってしまいました。
地元でも手をこまねいているだけではなく、なんとかしなくてはと皆さん考えていらっしゃいます。
登山届的なものを出していただくようにしようとか。
山道を見に行かなくては、とか。整備しなくちゃ、とか。

ですがなかなかすぐにはできません。
私がここに駄文をのせたところで、ほとんど何の足しにもならないことでしょう。
でも何かの偶然で、どこかでだれかの目にとまって、ほんのちょっとでも、事故が減りますように。
1回ペロっと書いたところでたいして閲覧されるとも思えないので、できたらこれからも梨沢の風景を書いて行けたらなあと思っています。できるかな、私。

気候がよくなりました。紅葉のシーズンも到来します。みなさまどうかご無事に山歩きをお楽しみ下さい。

追記

↑の2の項に台風15号以降山は放置されている、と書きましたがそれは間違いでした。一般社団法人千葉県山岳・スポーツクライミング協会の方々が人知れず整備の活動を行ってくださっていました。
大変失礼いたしました。そして、どうもありがとうございます。
こちらの記事を見ながら、胸が熱くなる思いでした。房総の山々を愛してくださってありがとうございます。私がそういうお礼をするのも変ですけれど。(山はぜんぜん私のものでもなんでもないですから)






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