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第5話 : 「りんごの苗木を守れ」ー僕らの存在意義

濁流は、2日ほどにわたって農園のりんご畑の約9割を覆っていた。

水が引いてようやく姿を現した畑は、もはやこれまでとは違う風景になっていた。

3日前までは、まっすぐに伸びた樹に濃い緑の葉っぱ、そして赤や黄色のりんごがたわわに実っていた。収穫を間近にひかえた、シナノスイートやシナノゴールドという品種だ。

この畑は2年ほど前から、新方式の畑を作るために少しずつ改植をしてきた。

うまくやれば同じ面積で従来の3倍の生産量が見込めるほか、危険な作業工程を避け、農業初心者でも育てやすいように工夫された栽培法であることから、りんご農家の高齢化の問題を解決できる画期的な畑として、フルプロ農園の立ち上げ当初から取り組んできた肝入りの事業だ。

まだ設立して日が浅かった時期に、改植のための古い樹の伐採、土の整備、新しい苗木や支柱の購入と植込み作業にかかる費用を集めることが目下の課題だった。

りんごの樹は、植えたその年からたくさん実をつけられるわけではない。徐々に収穫量が増え、樹も丈夫になって味も良くなり、数年間かけてようやく従来の樹と同じくらい生産できるようになる。

数年間は耐えて、その後ようやく投入した資本がプラスに転じるという見込みで出資を受けてきた、まさにフルプロの社運を賭けたプロジェクトだったのだ。

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その畑がいまは一面茶色い泥を被り、樹は苗木と支柱ごと倒れ、よく見ると茶色くなったりんごの実がまだ樹についたままだ。いちど濁流に浸かったりんごは中まで泥水が染みてしまうため、もう出荷されることはない。

新方式の苗木は従来の樹とは違い、浸水すると腐ってしまう。すでにいくつかの苗木では腐敗が始まりかけているものもある。

苗木をまもるため、コンテナに避難させる応急措置を取る。なんとか来年また実をつけてほしいという思いしかない。来年に備えて、支柱ごと倒れた畑の復興作業も必要だ。

資金面での不安が頭をよぎる。改植のための資本を返せる目処がこれで数年伸びたかも知れない。いや、その前に復旧のための資金がさらに必要だ。一体どれくらい…?

しかし、これまで力を入れてきた新方式への改植プロジェクトを投げ出すことなど論外だ。たとえ復興できたとしても、地域のりんご産業はただ衰退していくだけかも知れない。それをただ黙って見ているだけになってしまったら、僕らフルプロの存在意義っていったい何なんだ…??

避難所では、もう離農しようかという声も聞こえてくる。この先10年、20年続けることができない高齢農家も多い。

そんなときだからこそ、自分たちが誰よりも先に立ち上がって、力強く復興していかなければ…!

今の僕らに必要なもの、そして実を言えば挫けそうになる気持ちを奮い立たせているのは、未来への「希望」なのだ。

次回、「復興への道 ー りんご農家の未来を拓け」へつづく

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