第4話 : 「手伝いに行くよ!!」
ー10月15日。
13日未明の千曲川の決壊で浸水していた農園からはようやく水が引き、泥だらけの事務所と倉庫の撤去作業がはじまった。
作業のためにかけつけてくれたスタッフは、長靴、上下のカッパ、ゴム手袋にマスクのフル装備。
一面泥だらけの現場では、座るところもなければトイレもない。
...あたり一帯はどこの家もトイレも泥だらけで水も出ない状況だが、それは地域のコンビニやスーパー、お店でも同じなのだ。
さらに、泥や下水などが入り混じっているせいか、酷い異臭がする。
泥だらけの水害現場ではさまざまな細菌がそこここにいて、それが口や鼻、目、そして小さな傷から体内に入ると感染症になる危険がある。
そのため、帽子やゴーグルもできればあったほうがよいし、抵抗力の弱い子どもなどには作業は手伝わせてはいけない、とも言われる。
自治体からは消毒のための消石灰も配布されていた。
そんな状態の現場に、美味しいパンや温かいお湯が沸かせるように湯沸かし器、なかには簡易トイレまで持って農園のスタッフが駆けつけてくれ、瓦礫の山と化した事務所と自宅、そして倉庫の整理に当たってくれたのだ。
そして休日には、農園スタッフだけでなく、いつもは会社勤めをしている友人たちが大勢、助けに来てくれた。
どんなにありがたく、頼もしく感じただろう。
こんなにも手を差し伸べてくれる人たちがたくさんいるとはー。
自分たちは助けられ、支え合いながら存在しているのだという想いがこみあげた。
事務所と倉庫、そして自宅の片付けが終われば、いよいよ畑だ。
今はまだ、1ヶ月先のことも見通せない状況ではあるが、こうして一つ一つ片付けていくしかない。
絶望してばかりでは、いられないのだ。
第5話:「りんごの苗木を守れ」へつづく
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