性衝動の魔力6

 認知のクセとして整理してきましたが、性犯罪者の処遇においては、「認知のゆがみ」ということがよく言われます。


 「女は男に従うべきだ。」、「被害者が男を挑発している。」、「一緒に部屋に入ったのは同意したということだ。」、「嫌よ嫌よは良いのうち(抵抗しても本音では嫌がっていない)。」などなど、性犯罪者の話を聞いていると、様々な「認知のゆがみ」が出てくるようです。


 この「認知のゆがみ」に気付かせ、改めさせることが目標の一つです。父親が男尊女卑の考え方を家庭の中でのルールとしていたなど、しつけや教育によって獲得してきた場合や、友人等の自分の周りの人達の多くが女性の言い分を無視した男性中心の考え方をしていて、それに染まっていったなど、知識として学習したものであれば、被害女性の気持ちや主張などに接することなどを通して、ゆがんだ認知を改めることはさほど難しいことではありません。


 ただし、性衝動の魔力1などで紹介した実験結果には、冷静なときであれば正しい認知ができる人であっても、性的興奮が高まると、正しい認知が弛緩してきて、逸脱するおそれが高まることが示されています。


 さらに、昨日記載したように、性依存が形成されると、ヒトはそれにとらわれてしまい、社会生活さえもままならなくなるなど、報酬系がヒトの思考や判断を著しく阻害し、目的のために自分の行為を正当化し、あるいはそれにとどまらない、強引なこじつけをしてでも目的に向かって突き進もうとするようになります。こうなると、「認知のゆがみ」を改めるには、依存に対する治療が欠かせません。


 また、性依存を形成する背景に、自身が幼少時に性被害を体験し、そのトラウマや混乱を引きずって、認知がゆがんでくるケースも少なくないようです。この場合は、トラウマを克服できないと、認知を改めることが困難ですから、この面での手当ても必要になります。

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