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【Q5.南極観測船宗谷・特急宗谷・宗谷岬】3.札幌にて一回休み(藻岩山ロープウェイ・もーりすカー完全乗車)

 八月上旬からの大雨の影響で、宗谷本線は今日も一部区間が不通となっている。この旅の目標の一つであった、特急宗谷も旭川止まりだ。JR北海道の広報ページで詳細を確認すると、旭川を夕方に出発する最終の特急サロベツは稚内まで走るとのことだが、特急サロベツに乗っても意味がない。自分はあくまでも、特急宗谷に乗りたいのだ。


 札幌で、丸一日待機することになる。桃鉄で言えば一回休みだ。さて何をしようか。
 快活クラブの無料モーニングを食べ、外に出る。


 タイミング良く路面電車がやって来る。何も確認せず、反射的に乗り込む。
 目的地は「ロープウェイ入口」停留所だ。事前知識が何かあった訳ではなく、時刻表の路線図でこの停留所名を見かけたので、思いつきで行ってみるだけだ。
 札幌の路面電車は環状線となっている。その輪を時計回りの方向に、半周と少しぐらい走り、その停留所に着く。逆回りの方が近かったように思う。
 藻岩山ロープウェイが発着する山麓駅までは少し距離があり、坂道となっている。ロープウェイの営業は 一〇時半からで、駅はまだ閉まっている。

仕方が無いので一度引き返し、幹線道路沿いにあったファミマのイートインで時間を潰す。今回の旅は、こんなことばっかりだ。
 酒や酒のツマミを見て回る。それなりに独自性、地域色を感じられる。だがイートインのテーブルや椅子は、都内のファミマのイートインとそれと全く同じであった。


 駅が開いた。それなりに乗客が集まっている。当然始発に乗る。


 札幌の市街地を鳥瞰する車窓。この藻岩山は、東京都で言うなら高尾山のような場所だと思うが、都市中心部までの距離の近さが素晴らしい。東京の、都電荒川線の荒川二丁目ぐらいの場所に高尾山があるようなものだ。

 ロープウェイは、もいわ中腹駅に着く。山頂駅までは、ケーブルカーに乗り換えて登る。ケーブルカーは、団子のような車輛が二両連なった独特の形状だ。複数編成のケーブルカーとは珍しい。下側の車輛に乗り、後方展望を撮影することとした。



 山頂駅には、展望台とレストラン、土産物屋が存在している。この時間なので、レストランはまだやっていない。展望台に登る。
 札幌市街地側を望む。自分は札幌の街について、何の知識も持ち合わせていないので、何も考えずにただ漫然とその景色を眺める。今朝は、快晴と言うわけではない。右奥に巨大なスタジアムが見えるが、今話題のエスコンフィールドスタジアムだろうか? 双眼鏡を忘れてきたことが、実に悔やまれる。


 反対側、手稲山方面を眺める。あの先が、小樽や石狩湾なのかと思う。
 この山頂まで、徒歩で登ることも可能なようで、実際に登って来る人も居る。装備しているクマ避けの鈴がカランと鳴る。ヒグマの目撃情報が、駅構内に貼られている。


 土産物を少し買い、来た道のりをそのまま引き返す。途中、中腹駅の周囲を少し見て回る。
 ロープウェイ入口停留所から、再度路面電車に乗り、札幌の中心部へと向かう。車内は混雑している。西四丁目電停で降りる。結局この札幌市電も、ほぼ一周分乗り通したこととなる。


 札幌駅まで歩く。昼飯を食べようと、駅ビル上層階のレストラン街を歩く。都内の駅ビルなどでも見かけるような店が多いように感じる。どこも満員だ。札幌は北海道の道庁所在地であり、地方自治と経済と学術と文化の中心地である。いわば北海道の首都だ。日本全体の商業的・文化的な流行をキャッチアップして、それを広大な北海道の他の地域に住む人々に届ける使命を背負っている。「ネットやテレビで見た、あの東京の店と同じような店に行ってみたい」と北海道民が望んだ時に、頼りにするのが札幌であり、札幌の側はその期待に答えなければならないのだ。だからこのようになっているのだと思う。観光客がそのことに文句を言うのは筋違いだ。




 一番空いていた蕎麦屋に入る。マッシュルーム天とカマンベール天の、二種類の珍しい天ぷらを食べてみる。旨い。旨いが、垂れてきたチーズで下唇を火傷した。


 今夜は、さすがにビジネスホテルに泊まりたい。本格的な繁忙期は一週間後だと思うが、北海道の宿泊業は既に盛況で、今夜の部屋もなかなか見つからない。探す。駅の北側、北海道大学のキャンパス近くに一部屋見つかった。最寄り駅は地下鉄駅だが、札幌駅から徒歩でも充分歩ける距離だ。
 駅北側では、再開発が進行中だ。やがて来る新幹線が待ち遠しい。駐輪場の上の階から、その様子を眺める。




 宿まで歩く。札幌は碁盤目状に街路が敷かれているので、迷うことが無くわかりやすい。北大はこんなに札幌駅に近いのかと思う。旧帝大の中で、最もターミナル駅に近く、未来においては最も新幹線駅に近くなるのだろう。
 道中、高瀬物産のトラックを見かける。関東地方で見かけるものと、全く同じに見える。


 早目にチェックインし、昼寝をした後に夕飯を喰いに外に出る。近くのビルの地下一階の海鮮居酒屋にする。富山の地酒「勝駒」をここで呑むことができた。五月の富山旅行では見つけられなかった酒だ。お喋り好きの大将に聞くと、やはり中々入手しづらい銘柄だと言う。



 明日には、宗谷本線が全線運転再開することを祈り、眠りに着く。

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