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【Q3.拡大版立山黒部アルペンルート】 追記.座席未指定券を正しく用いる正しい白人カップル

 松本から、新宿行きの特急あずさに乗る。自分の前の座席には、若い白人のカップルが座っている。天井のライトは赤色であることから、「座席未指定券」の利用者であることが伺える。
 あずさは全席指定席の特急であるが、「座席未指定券」という切符がある。この切符で乗車すると、その時点で空いている座席に座ることが許される。座席の本来の予約者が、途中駅のどこかから乗って来るので、その際は速やかに退席しなければならない。予約者の乗車駅が近づくとライトは黄色くなり、次いで緑になる仕組みだ。

 二月に東北新幹線のはやぶさに乗った時に、外国人観光客によるトラブルを目撃した。白人男性の二人組が、指定席に居座り、本来の利用者である日本人男性が来てもどこうとしないのだ。はやぶさも全車指定席の列車である。日本人男性は車掌を呼び出し、車掌が英語で警告を行うことで、ようやく立ち上がった。見ていて不愉快な事件であった。

 今回のこのカップルはどうだろう? いかにも楽しそうにイチャついている。二人の世界に完全に入っているようだ。わかってんのか?
 小淵沢手前で、天井のランプが黄色に変わる。審判の時が近づく。停車し、この席の本来の客が乗って来る。日本人の老婆だ。
 カップルは素早く立ち上がり、会釈をしてイチャつきながらデッキに出ていく。スマートで礼儀正しく、完璧な振舞いだ。こいつら、ちゃんと解ってんじゃん。イチャつきつつも、男の側が女に対し、座席未指定券のルールを説明しているようにも見えた。
 公共空間において、決められたルールをきちんと守る。普通の事を普通に出来る。やれば出来るじゃないか。そのことに少し感動した。

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