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【漫画】「そんな事言うても、そもそも担当が付かないんですけど」という場合のお話

前回のお話。

↑ こちら、と対になったお話です。

「編集の方が何を考えているのかずっと良く分からなかったんですが、なるほど、と思いました」
みたいなお話をいただきまして。
あれは自分が勝手に頭の中で考えた話ですが、今回更に補足を。

引き続き、漫画歴浅め、初心者寄りの方向け、というイメージで書いています。

あと、一人称が良く分からなくなるので、この文章を書いている主の事を、
担当(自分)
と表記します。

漫画をお仕事にして収入を得ていく手順

連載を目指して頑張るとすると、ほとんどの場合、
・賞を取る
・増刊系の読み切り会議に出す
・本誌の読み切り会議に出す
・本誌の連載会議に出す
というステップになるかと思います。

その1つ手前、最初のステップが、
「担当編集についてもらう」
かな、と思います。

今はWEB連載のような媒体だと、連載本数にそもそもの枠がないため、
「担当についてもらう」→「会議(連載に向けて頑張る)」
と、かなり直球なコースもあると思いますが、基本は上記のような段階になるかと思います。

まあ、受賞なしで大ヒット作を連載されている方もおられますし、担当(自分)は賞取らないまま増刊会議とか出させてもらってました。

担当(自分)が運営している、
フロンティアデビュープログラム
では『運営から直で連載打診の連絡が入る』という突飛なシステムのため、全く別物のお話になるのですが。

『企画会議なし!』
『即16週のトライアル連載確約!』
『16週で終了した場合は権利(独占掲載権)を作家さんに即返却!』

というとっても画期的な取り組みなのですが、これは一度、力一杯声高らかに主張するエントリを書き上げます。

あともう一つ。
TwitterやInstagram等のSNSで作品を上げ続け、お仕事に繋げる。
自分の側から仕掛けるというやり方も、物凄く増えたと思います。
作家側が受け身でしかなかった一昔前とは、少し状況が変わったかな、と思います。

さて本題。「担当が付かないんですけど」

担当(自分)は自分で漫画を描いていた頃、少年誌4誌で編集さんに担当についてもらいました。
あと専門学校で6年教えましたが、沢山名刺をもらう学生というのはどうしても集中する傾向がありました。

個人的に、名刺がもらえないという方は、
「画力が足りていない人」
である事が多いのではないか、と思います。

画力が高くてデビューまで行けなかった人、というのはあまりいないと思います。多分。
でも、逆のパターンでデビューできなかったというケースはちょいちょいあるんじゃないかな、と思います。

何度も書きますけど。
週刊誌で連載している作家さんは年間1,000ページ描いてます。
アシスタントさんを使うにしても、です。
1,000ページ。

新人さんより明らかに既に上手い方が年に1,000ページも描くと、更にどんどん上手くなります。
新人さんが勝負しようと思ったら(そこに割って入って押しのけていかないと、なので)年に100ページは描かんと、話にならんぞ、と。

線を見れば、大体描いている量が分かります。
いいもの持ってるな、と思っても、描いている量が単純に足りないと感じる方には名刺を渡しにくいです。(少なくとも自分は)
これが持ち込み2回目だったりして、前よりそんなに量を積み上げられてないな、と感じると特に。

この「画力が足りない」の問題点は、「話作りは客観的に掴みにくい部分があるが、画力はただひたすら描き続ければ上がる」、という事ではないかと思います。(考えて描かないとただ描いても上手くなりにくいんですけど……)

まず単純に名刺を渡して良いと思える画力のラインに届いていないというところを深刻に受け取めるべきかと思います。
超絶画力は求めておらず、ある程度のラインがあれば大丈夫です。
でも、ある程度、までも達していない方が多い。
もしトータル1,000ページぐらい描いても絵が伸びねぇ……、という場合は、向いていないのかもしれませんが……。

この辺の部分も前回のエントリの内容と同等に、持ち込みした時に、
「名刺をいただけないようですが、単純に何が足りませんか?」
と聞く事ができれば一番良いんですが。

絵はアレだけど話を作るセンスがあるから、で名刺を貰える人は猛者です。
凄い。
でも、原作者のみを狙い撃ちでないのであれば、描けば積み上がる画力の部分とは向き合わないとです。
(あと原作者オンリー狙いは、ハードルも高くなると思います)

編集者は何を考えているのか?

「編集の人は何を考えているのか」
考えた事がなかった、と言われたんですが。

言い方はアレなんですが(出し方によっては炎上しそうですが)担当(自分)は、
「ダービースタリオン」
的な気分です。(分かります?ダビスタ……)

一言で乱暴に言っちゃうと、
「この人は金になるだろうか?」
って事なんですが、もっと噛み砕いていくと、

「この人の漫画めっちゃいいな」
「売れにくいかもだけど俺はめっちゃ好き」
「上手くはないけどいい絵だ」
「荒いけど一作一緒に作ってみたい」
「絵は上手いけど売れるタイプじゃないかも……?」

とか、色んなニュアンスや段階に分解されていくと思います。
その上で、
「こいついいな」
と思ってもらうのが大事な訳で。

「自分のストロングポイントって何やろ?」

という事は、是非一度考えてみましょう。
こちらの漫画、とっても良いです。
是非読んでみて。
43歳、漫画星。

あと、こちら、めっちゃ勉強になります。
3周読みましょう。
note版 突然画力が伸びだした時、僕が発見した事

大事なのは雑誌とか出版社とか編集部じゃなくて人間

ジャ○プじゃないと絶対嫌! 絶対嫌!!
みたいな人だったら仕方ないんですけど。

大事なのは、
「自分の漫画を面白い」
と思ってくれる人と当たるかどうか、です。

「話イマイチだけど女の子がエロいから」
「あんま良く分かんないけど今っぽいから」
「難しい話はやめて絵が上手ぇからとりあえずエロ描こう」

とか、そんなアバウトな感じで誘ってくれる人じゃなくて。
「荒削りだけど絶対面白い」
「今風じゃないけど斬新」
「次回作が見たい」
みたいな。
自分の事を買ってくれる人と出会うのが大事だと思います。

バクマンとか見てても分かると思うんですが、会議で満場一致なんて絶対ないんですよ。
1編集部の中でも自分に対する評価は様々。
各所、どこかにいる、
「オレを面白いと思ってくれるやつに会いに行く」
です。

そのためには、沢山のところに持ち込みに行く。
色んなサイトに出す。

担当がどう、とか考えず、ひたすら作って賞に出すのも1つの手段だと思います。

今回のお話は、
「担当がつかねーよー」
という嘆きへの、(あくまでも)個人的なアンサーざます。

担当(自分)の過去話

良く聞くお話で。
「最初に電話を受けた人間が永遠に担当」
というシステムがちょいちょい生き残っているみたいなんですけど。

担当(自分)が若い頃、とある編集部に持ち込み電話をして、あるZさんという編集さんが電話に出てくれました。
持ち込み当日、Zさんはすげー速さで原稿を読んで(19ページ1分くらい?)、
「はい、また出来たら持って来て下さい」
で終わりました。
終わりました。

えっ!?
って思ったんですけど、今思うと、そんなもんな原稿だったと思います。
今思えば、自分が持ち込み受けても、1分ぐらいで読んで判断できる原稿だっと思います。
(ただ、今の担当(自分)は、せっかく見せてもらったのでサービスとして、あれこれ改善点とか質問とか聞くようにしています)

しかし、ね。
持ち込み終わって、外に出てね。
まあそこそこ時間かけて原稿描いて。(手が遅い)
これで帰れんぞ、と。
その場で編集部にもっかい電話しまして。
「たまたま編集部前に来てるんですけど。もし良かったら今から見てもらえませんか?」
と電話しました。
(ダメです)

「いっすよ~」
と出て来てくれたチャラい兄ちゃん(Xさん)が丁寧に見てくれて、
「訳分かんねーすけど、おもろいっすわ」
と名刺をくれました。
(ダメなんですけどね。真似しちゃダメです)
この方、入社したばっかの4月で手持ち作家がほぼ0だったからだと思うんですけど、ありがたかったです。
この方にはとってもお世話になりました。

漫画家志望者の間でこの時のXさんが、
「若手に厳しい駄目な編集」
みたいな感じで噂になって、
「お前、大丈夫か?」
みたいに心配された事があったんですが。
別に困ってる事はないし、
「他で蹴られてもこの俺様を拾う事ができるセンスある編集」
ぐらいに思っていたので気にはしませんでした。
結局この辺の噂が元か他雑誌に鞍替えする若手漫画描きもいましたが、Xさんはこのあと超ヒット作を連発します。
(目が出ないままですみませんでした……。この方と会議に出した、「トンカツミサイル」という漫画が自分でも好きでした。主にタイトルが)
(あともひとつ余談ですが、Zさんも超ヒットメーカーです)

も一つおまけ話

「向いてないよ。田舎に帰った方がいいよ」
と言われた事もありますが。
基本的に、こういう発言は、まあまあ人生の指針としてありがたい言葉ではないかと思っています。
言い方ってのは勿論ありますが。
(まあ担当(自分)も結局漫画家になれてないわけですし)

「こんな酷い事言われたけど、ちゃんと漫画家になれた!」
みたいな漫画家さんの体験談だってたまにありますが、生存者バイアスである事が多い気がしています。
こういう事を言われる場合、かなり足りていない部分があるのは間違いないと思います。
(または極端に個性的な作風か)

「酷い編集だ!」
よりも(確かに酷いんですけど)、そういう事を言われる現在の力量に危機感を持ちましょう。

年に100ページは描こう。


今日のまとめ

●とにかく描け。量描いてりゃそれだけで名刺はもらえる。
●漫画家って受賞がスタート、それがまず当然、ぐらいだと思う(年に受賞者って滅茶苦茶いて、連載まで行く人って100分の1ぐらいじゃないかと思う)。
名刺もらう、は、呼吸するぐらい当然、という気持ちで。
貰えない、というのはかなり危機感持った方が良い。
●色んなとこに出して色んな人に見てもらう。

毎回、そんなに新しいお話はない……(´・ω・`)

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