7.放置竹林
トマトは育て方次第で、冬季でも暖房エネルギーを抑えて栽培できることが分かり、バイオマス×トマト事業をこのまま継続していくと決意できた。
しかし、他にもクリアしなければならない課題は山積みである。
まずはどうやって燃料を安定的に調達するかだ。数あるバイオマスの中でも未利用バイオマスとはつまり、使い難いために利用されていない資源である。そのため、それらを利用するには安定供給を可能にする新たな仕組みを整備する必要がある。
私が活用を目指している未利用バイオマスは竹である。ほとんどの人が竹林の事情を知らないだろうが、現在この竹が問題となっているからだ。
日本で流通しているタケノコの多くは孟宗竹(モウソウチク)という種類の竹から採れるものである。この孟宗竹は1615年に中国から持ち帰られたもので、近代に入ってからタケノコの缶詰技術の進化と共に、行政による竹林振興事業が進み各地で孟宗竹林が育成された。
その後、タケノコ需要に目をつけた商社等が中国から大量に安価なタケノコを輸入するようになった。結果、国内のタケノコ産業は衰退し、管理者の高齢化に伴い放置され、その旺盛な繁殖力で野山に侵食し生態系を荒らすことになった。竹林に入ってみると分かるが竹以外の植物はほとんど存在しない。
さらに竹は地下で繋がっており、その茎は地表から1mほどの深さにしか分布しないため、保水力のない山となってしまう。結果、土砂崩れなどの水害を引き起こす原因となっている。
このように放置竹林は各地で問題を引き起こしているが、これは人災なのである。ならば、この放置竹林問題は人間の手で解決すべきだと考えている。
そこで実際に竹林に入って、竹を切り、加工し、実際に燃料として就農2年目に一冬通して使ってみた。そこで更に多くの課題に直面した。
まず、ほとんどの放置竹林は斜面にあり、その竹を伐採し搬出するには多くの労力が必要だということ。
次に、竹は中が空洞になっていることからそのまま運ぶと空気を運んでいるようなもので、運搬効率が悪いということ。
さらに、運搬効率を上げるために竹を粉砕してから運ぼうとするの、竹の表面は硬く滑るために粉砕機の刃を傷めるためメンテナンスコストが高くなるということ。
そして、燃やした際にクリンカーと呼ばれる溶融した灰が設備に付着するため、頻繁にメンテナンスが必要だということ。
また、バイオマスエネルギーによる暖房は、貯蔵する燃料の水分管理が必要であったり、定期的な灰出し作業が必要だったりとその運転にも手間がかかる。
このように、竹を活用するためのコストは非常に高く、技術的にも課題が多い。「そりゃ放置されるわ」としみじみ実感した。竹を使ったバイオマス発電がうまくいかないのも同じ理由である。
余談だが、竹を本気で活用しようとした人間は皆同じ課題にぶち当たり、挫折を経験しているため競合というよりも同士のような間柄になる。
そして、これらをクリアして竹を利用出来るようになったとして、次なる課題もある。それは、設備投資金をどうやって回収するかである。
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