11.メタン発酵

COSETによって単収の増加を実現出来たとして、残る課題はバイオマス関連機器の収益性向上である。

現時点で事業に組み込もうと考えているバイオマス関連機器は炭化装置、ペレットボイラー、ペレタイザーの3種類である。これらは当初はビニールハウスの暖房としてのみ利用する計画だった。

木質ゴミの中間処理場で発生している破砕チップを、ペレタイザーでペレット化し、それを燃料にボイラーでお湯を沸かして、その熱でビニールハウスを暖める。

炭化装置では竹を炭焼きし、排熱を暖房に使いながら竹炭と竹酢を採取する。

なぜ、炭にするのかと言うと、竹は直接燃やすと、溶融した灰が設備に付着することによって発生するクリンカが様々な設備トラブルを引き起こすためだ。これは、竹はカリウムを多く含み、このカリウムが800度程度の低温で溶けてしまうため発生する問題である。

炭焼きであれば、400度程度で管理が可能であるため、上述のクリンカーの発生を抑えることができる。
また、竹炭は土壌改良材として、竹酢は農薬の代わりに防虫・殺菌剤として活用できるため、農業との相性がいい。

このようにバイオマス関連機器を利用することを考えていたが、トマトは低温でも栽培出来ることが分かり、加温を最小限に抑えると年間の稼働日数は15日にも満たない状況である。

400万円近い投資をしながら、この稼働率では非常にコスパが悪い。そこで、これらの設備の稼働率を上げ、別の収益源となる必要があった。

そこで、目をつけたのがメタン発酵による液肥製造である。

メタン発酵とは、メタン生成菌による嫌気性発酵により、メタンと消化液を作り出すことである。メタンは天然ガスの主成分であることから、燃料として使うことができる。つまり、これもバイオマスエネルギーだ。

家畜の糞尿等をメタン発酵させて、生成したメタンで発電する、というプラントも日本で稼働しており、技術的にはある程度確立されている。しかし、発生する消化液の処分費用などから採算性が悪くそこまで普及していないのが実情だ。

この消化液は肥料成分を多く含むため、液体肥料として使うことが出来るのだが、それを使う農家が少ないためだ。

ならば、農地併設の小型メタン発酵装置で、メタンと消化液を作り、メタンは熱エネルギーとして、消化液は肥料として利用するというスキームを考えた。余った消化液は、その消化液を用いた栽培方法も指導するサービスをつけて販売すれば新たな収益源にもなる。

そこで、まずは専門家の意見を聞くために、その道の研究を行っている神戸大学の井原先生、東北大学の多田先生にヒアリングを行うことにした。

井原先生は牧場併設の家畜糞尿と野菜クズを原料に、多田先生は水産会社併設の魚アラを原料にした小型メタン発酵装置の実証試験を実施されており、それは正に我々のやろうとしていることだった。

お二人ともオンラインミーティングでのヒアリングに快く応じて頂き、非常に貴重な意見交換を行うことが出来た。二人の専門家のお話からは、メタン発酵の大いなる可能性を感じることができ、FromTomatoがメタン発酵事業を進めていく準備を始めるのに十分なモチベーションを与えてくれた。

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