4.疑問と悩み

進むべき方向性は決まったが、どうもギアが入らない感覚がある。それはやはり、当初目指した事業内容や目標を変更せざるを得ない状況に置かれているためだった。

バイオマスエネルギーを使ってビニールハウスを温めることは可能だったし、実際に冬季にトマトの出荷も行ったが、わかったことは通常のトマト栽培では多大なエネルギーが必要であり、環境負荷、作業負荷、収益性など複数の面でこれがベストのカタチであるかは疑問だった。

一般的にトマト栽培では最低気温が12℃を下回らないようにハウス内部の温度を制御する。ただ、これは二重のビニール、開閉可能な遮光カーテンを搭載しているような断熱性に優れたハウスで実現できるものであり、このようなハウスは1反あたり2000万円はするような設備投資が必要となる。

FromTomatoのハウスはビニールは1重であるし、開閉可能な遮光カーテンもない。このようなハウスでは、12℃以上を保つのは困難であるため、様々な文献を参考に昨年は8℃以上を目標に管理した。
当初は一日30kg程度の竹を炭化して得られる熱で、加温したが、それだけでは足りない時は、やむを得ず一日20L程度の灯油を燃やして加温を行った。しかし、それでも8℃を下回ることも多かった。

そこで今年は一日30kg程度の木質ペレットと竹を使用しての加温を試みた。しかし、寒波の影響もあり8℃以上はおろか1℃程度になることも多かった。

設備を充実させて、断熱性能を上げればバイオマスエネルギーでも栽培はできるが、バイオマスエネルギーは重油、灯油よりも調達コストが高く、これでは生産したトマトのコスト競争力がなくなってしまう。そもそも、貴重なバイオマス資源を使ってコストに見合う価格で売れないトマトを作っていては本末転倒だと思われた。

つまり、バイオマスエネルギーを用いてのトマト栽培、その構想自体を検討し直す必要がでてきたのだ。どうすればバイオマスを有効活用できるのか、次に定植するトマトの苗を育てながら悩んでいた。


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