300円を握りしめるあいだ

水曜、15時、バスを待っている。

ずっと行ってみたかった、とある図書館にある「新聞室」なるスポットに行こうとしているのだが、バスがちっとも来ないので、しばし言葉でも並べて遊ぶことにする。

ひとりっ子は、脳みそが友だちなのだ!



さて、今わたしが待っているのは、「オンデマンドバス」
大阪市内のかぎられたエリアだけを走っている、予約制の乗り合いバスだ。

普通のバスと違って固定ルートを走らず、予約の需要(デマンド)に応じて運行されている。
乗り場と行き先を指定すると、「AIがかんがえたさいきょうのルート」で行きたいところまで連れていってくれる。
か、かしこくって未来!!!!!!

わが家の近くの公園を乗り場にえらべて、電車ではアクセスの悪いところにも行けるので、ものすごく便利でよく利用するのだが、とにかく予告された時刻通りにバスが来たためしがない。

今日も、わたしの鋭い「読み」をさらに上回り、ひどく待たされている。
名前がかっこいいから、気長に待つけど。

オンデマンドバス。
ちょっと愛しちゃう名前なんだよな〜〜〜

そういうわけで、ふだんは長居することのない、真っ昼間の公園で20分以上じっと座っている。
ほんものの昼間は、ぴるまだったんだな。
と、余計な発見をしてしまうのにも十分な時間が流れていく。

はじめこそ「ふうん、君また約束の時間には来ないわけね」とビジネスマンなりの苛立ちもあったが、ものの5分もじっと座っていると、ぴるまの公園のすばらしさによって、わたしが、ただ、ひとの形に戻っていくのがわかる。

人間が、あらゆる“可能性”の縮減で「わたし」になっていくのだとしたら、わたしが公園で「ひと」に戻っていくのも超うなづける。
はじめから自由だったってことです。


ベンチのそばではちょうちょが舞い、向こうの木では鳥が群れになって飛び立っている。

車いすの老人、飼い犬を散歩するおじさん、走る子どもたち。完全に他人が、すげえ生きてる。

まぶしいな。今日は晴れなんじゃん!
あ〜〜〜〜〜気分がいい
芝生を眺めて、「緑が青いな」って思ってる。

今日にうってつけの、そろそろ咲いててもいいはずの桜だけが、1枚も咲いてなくて笑える。
ウケる。と言うのが適当かもしれない。

春はまだでも、ひざが温かい。

ああこうも具合が良いと、もう少しで、ぜんぶ分かってしまいそうになるな。


つまり、この世界の速さの中心にいるのは、ゆっくり歩く犬なんだと思う。


ゆっくり歩く犬がリーダーだろ


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