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僕は「大人」になった

ぷしゅ、カッ。
新幹線に乗っていると
どこかしこから缶を開ける音がなる。

ぐびぐびぐび

仕事終わりのサラリーマンが
やっと腰を下ろして、缶を口元へ持っていく
勢いよく空っぽの胃の中に放り込まれるものは
至高の黄金の液体だ。

それを人は「ビール」と呼ぶ。

今、僕の手元には銀色に光る
アサヒスーパードライがある。

そんなに深く考えずに売店で購入したものだ。
飲みたいと思って買ったわけでもないのに
つい買って飲みたくなってしまった

小さい頃は、その銀の缶は
憧れのもので
得体の知れないものだった

父から奪おうとしたら
こっぴどく叱られ
こっそり飲んでも
その味は正直よくわからない

だけどいつからかビールが美味しく感じてきた
果たしてそのおいしさは味からくるのか
味以外のところから来るのかはわかっていない

ビールのことをわかったふりをして
「やっぱ疲れた後のビールは沁みるね」
なんて言って、大人の仲間入りをしたふりをする。

もしかしたら
ビールは「大人」になるための
通過儀礼の1つなのかもしれない

半ば無意識でビールを買った僕は
もう「大人」になったのかもしれない。

同じ新幹線でぷしゅっと開ける人たちと
なんら変わらないのかもしれない。

ここで執筆は終わり。

ぷしゅ、カッ。

いただきます。

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