ご主人と一緒に

空気が揺れた。丸くなったまま片目だけ開けるとご主人が炬燵から這い出てきた。ようやく活動を始める気になったのかと成り行きを見守っていると、四つん這いのままぼくの所に来た。
「寒くて動きたくないよー」
何とも情けない声をあげながら、ぼくとストーブの間に割り込んだ。暖かい風が遮られ、抗議の意をこめて一声鳴く。けれどもご主人は聞こえていないのか、動く気配はない。それどころか僕の背中に顔を埋め出した。
どうしたものか。動けないし段々寒くなってきたし。でも背中から伝わってくるご主人の温もりが心地よくて、このままでもいいかな、と思ってしまう。
結局ご主人の好きにさせることにした。ストーブの前で何をするわけでもなく、のんびりしているのも悪くはないかもしれない。
ただ、夢見心地でうとうとしている時に抱き抱えて移動するのは止めてほしい。びっくりして目が覚めてしまった。
まあ行き先は炬燵で、普段の僕みたいに丸くなって寝ているご主人を見ていたらどうでもよくなってしまった。
「あったかいねー」
間延びしたご主人の声に僕は「にゃー」と返事をし、ゆっくり目蓋を下ろした。

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