この夏はどうする?

空を見ていたら出かける間際に見た天気予報で「今日は真夏日となるでしょう」と気象予報士が言っていたのを思い出した。雲一つ見当たらない青空のど真ん中で目映いばかりの光を発している太陽は見ているだけで汗が出そうだ。
今日が真夏日だろうが何だろうが程よくクーラーのきいた教室に一日缶詰めにされている私達には関係のないことだった。
プリントにペンをはしらせる軽い音が教室に充満している。この時間、監督役の教師はいない。ならば好き勝手にやっていてもバレなさそうだが皆、真剣に取り組んでいる。
私はといえば早々に問題を解き終えて暇を持て余していた。別の教科の勉強をしてもいいのだが、やる気が出なくて頬杖をついてボンヤリと空を眺めていたのだ。
太陽が眩しすぎて視線を正面に向けると、黒板にでかでかと書かれた“夏期講習”という文字が目に飛び込んでき、反射的に目をそむけた。
高校生活最後の夏は学校が開催している、自由参加とは名ばかりの強制参加を義務付けられた夏期講習が組まれている。折角の夏なのに遊びに行くことが出来ないのは勿体ない気がするが、夏期講習をサボってまで何処かに行こうとは思えなかった。
特別行きたい所があるわけではないし、大人しく課題をこなしていればクーラーのきいた心地よい教室にいられる。それならばこの居心地が良くて悪い空間にいるのも悪くないかもしれない。
来年はどうしているだろうか。皆目検討もつかないが、何処かで夏期講習を受けているということはないと思いたかった。
来年思い切り遊ぶためにも今年は頑張るしかないのかもしれない。長く息を吐き出し、音をたてないように気を付けて横に置いてあった鞄から参考書を取り出した。

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