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短編小説

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140字以上の小説がまとめられています。 増えていくペースはゆっくりです。
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#月

ライバルは月です。

「まだ満月じゃないんだね」
彼女が指さす先には半分より少し膨れた月が浮かんでいた。空は薄い紫色で夜の始まりを告げている。
「綺麗だね」
見上げたまま呟く彼女に僕は何も言えなかった。じっとその横顔を眺めていた。月よりも空よりも彼女の方が遥かに綺麗だ
「何時だっけ?」
「何が?」
話を全然聞いていなくて、反射的に聞き返す。相変わらず視線は僕に向かない。
「満月」
「明後日辺りじゃなかったかな」
「へー

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