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等々力第一Gで繋がった未来。

あの"青森での死闘"から3ヶ月が経った。

フロンターレU18は、初参戦のプレミアリーグを快走している。いや、爆走と言っても良いかもしれない。

プレミアリーグ前半戦終了時点、11戦10勝1分の勝点31。33得点7失点。長橋フロンターレは、堂々たる成績を残している。ACL含めたトップチームに帯同している高井くん抜きでの試合が多かったにも関わらず。

そして、6月にはボランチの大関くん、CBの松長根くんがトップ昇格を果たした。

高井くん含めた下部組織から3名のトップ昇格である。これはフロンターレ史上初。

U18の基本スタメンは、4人が3年生、7人が2年生。それでいてプレミアリーグで首位。しかも、無敗。チームを引っ張るこの"3年生"には力があると言っていいのではないか。

後半戦、各チームのフロンターレ対策がさらに強まる見込みだが、初制覇に向けてチームはそこを乗り越えようと進んでいる。


フロンターレU18躍進のその裏。トップチームは苦しんでいた。

開幕戦を辛勝。2戦目で早くも今季初黒星。ACLでは失意のグループリーグ敗退。5月には4年ぶりのリーグ戦連敗。天皇杯3回戦では東京Vに敗れ、7月のリーグ戦は3試合で1勝2敗。ルヴァン杯では、C大阪に"逆・等々力劇場"を食らいアウェイゴールの差で敗退。コロナがチームを襲い、アウェイ浦和レッズ戦では・・・。

リーグ3連覇とACL制覇を目指してスタートした22年シーズン。そう、思うようにいかなった。三笘薫、田中碧、旗手怜央の海外移籍、そして昨シーズン終盤のジェジエウの大怪我・・・。

"あの頃のフロンターレ"はいなかった。


ホーム湘南戦では0-4の大敗を喫した。試合後、湘南の選手にこう言われた。

「今のフロンターレは絶対王者ではない。」

忘れないこの言葉は。


"フロンターレ"は前に進んでいるのか。

"トップチーム"は、リーグ戦22戦12勝4分6敗の勝点40。首位と消化試合が2試合少ない状況で、勝点差は8である。直近2年間のように長い連勝期間があるわけでもなく、ここ最近は勝ち星とそれ以外を交互に繰り返している状況。

確かに、絶対王者・・・ではない。

ACLはGL敗退、天皇杯は3回戦敗退、ルヴァン杯もトーナメント初戦で敗退。どれも早々に敗退した。

ホームマリノス戦の劇的勝利というか、あの質の高い試合を見たらリーグ開幕直後よりは良い状態か。ただ、そのマリノス戦直後のルヴァン杯C大阪戦では劇的勝利を献上。今季のトップチームは、「1歩進んでは下がる。1歩進んでは下がる。」といった状態にも見えてしまう。

そう"トップチーム"は。



プレミアリーグのアウェイ青森山田戦を、"青森での死闘"とかいう調子に乗った記事を書いたが、アカデミーであるフロンターレU18をしっかりとみているのは今シーズンから。そのアカデミーと絡めて言えることがある。気づいたことがある。

“チームは一貫している”ということだ。

"チーム"と言っているのは、どこかのカテゴリーに限定していない。“フロンターレ”のこと。

トップチームで鬼さんが口酸っぱく言っている「相手の立ち位置を見てサッカーをする」という言葉。これは何もトップチームだけじゃない。

フロンターレU18は、長橋監督のもと「相手を観察してサッカーを展開すること」を目指している。トップチームと同じサッカーを目指している。

「相手チームの良さを学びながら、吸収しながら成長できている部分を凄く感じるので、そのあたりが非常に一巡目は良かったのかなと思います。ただ、相手も我々がどういうサッカーをしてくるかはもちろんわかってくるでしょうし、そこに対してどうやってそこを掻い潜ってやっていくかは、そもそも相手を見てサッカーをやろうということなので、相手が改善して来ようが何をしようが、『相手を見れば答えがわかるよ』というところまで持っていけたら、トップチームに近付くのかなと思います」(長橋監督)。

https://web.gekisaka.jp/news/youth/detail/?363154-363154-fl


プレミアリーグで実況や解説者が「トップチームと同じでアグレッシブですね」というようなコメントをよく残している。トップチームとアカデミーのそこが同じなのはデフォルトで、キーは「相手の立ち位置を見てプレーしている」ということ。

その手助けをコーチ陣はしている。

クラブユース選手権、グループリーグのジェフ戦で長橋監督が右SB江原くんにかけた「相手のCBとSB割れている。そこで受けたら、なんでもできる。」という言葉。そして、一列前の選手に幅を取らせる作業。

U18は、相手の立ち位置を見てボールを受ける、また自分達の立ち位置で相手を移動させるという訓練をしている。

彼らの試合を観に行けば、チームが訓練をしているだろうというシーンが毎試合観れる。毎試合。



7月の等々力第一グラウンド。
ここで、ビビッときた。

U15関東リーグの試合、フロンターレU15対Wings-U15。これをふと観に行った。引き寄せられるように。玉置フロンターレに。

玉置U15監督が左サイドの選手にかけた言葉にビビッときた。

「見たか?相手のCBとSB割れてるだろ?」

なんと・・・。クラブユース選手権ジェフ戦の長橋U18監督と同じことを言ってる・・・。

そして、玉置U15監督が試合中にしつこく叫んでいたのは「幅」というワードだった。U15は、U18を意識したサッカーを展開していた。それは、すなわちトップチームを意識したサッカーを展開しているということ・・・。


最近のトップチームの試合から2つ。

アウェイ浦和レッズ戦の37分。脇坂泰斗が抜け出してダミアンがゴール前に詰めたシーン。家長昭博が目一杯幅を取り浦和レッズの左SB明本を引きつける。CBとSBの間にスペースが生まれ、ボランチの背後を取り、そこに入り込んだ脇坂泰斗が瀬古樹からパスを引き出した。

劇的勝利をしたホームマリノス戦の85分。これまた家長昭博が目一杯幅を取り(本当はボールを受けたかった模様)、左SB永戸を引きつけてエドゥの間を広げる。マルコスを振り切りそこのスペースに入り込んだのはシミッチ。山根視来からパスを引き出した。


切り取ったシーンではあるが、トップチームが見せるこれらのプレーとアカデミーで訓練をしているプレー。個人的には"繋がっていない"と言い切れない。


横浜F・マリノスの藤田譲瑠チマが、代表で一緒にプレーする脇坂泰斗のことを「中間ポジションで受けるのが上手い」と言っていたのを思い出したが、「アカデミー時代に立ち位置を叩き込まれ、叩き込まれた選手がトップに昇格してくる」ということ。今やアカデミーは「止める・蹴る」だけではない。(脇坂泰斗の場合はトップチームでこの"立ち位置"を身につけたかもしれないが)

「相手の三角形の中心だったり、ギャップで受けるのがすごく上手いと思って。そこから前を向いて簡単に外に出していく感じで、相手もすごく嫌だったと思います」 そう語ったのは、香港との初戦で25分ほど一緒にプレーした横浜F・マリノスの20歳、藤田譲瑠チマである。

https://number.bunshun.jp/articles/-/854032

鬼さんが「相手の立ち位置を見て」と言う。同じように長橋U18監督が「相手を観察して」と言う。玉置U15監督が長橋U18監督と同じように相手の立ち位置を選手達に伝える。

トップチームとU18が同じ方向を見ているだけでなく、U15までも同じ方向を見ていた。もうこれはおそらく、U13、U10に関しても・・・。


そして、これらは”鬼木ー長橋ー玉置”ラインでだけではない。中村憲剛FROも。

田中碧と出演したブラジル戦後のNHKの番組で「日本とブラジルの差は試合中の適応力」と指摘した。

「相手を見てサッカーができているか否か」を、ネイマールが遠藤航をチェックに行くシーンを使いながら指摘した。

中村憲剛FRO含めた"チーム・フロンターレ"は同じ方向を向いていた。


しっかり”同じ方向”を向いていたフロンターレ。

実は。ちゃんと。しっかりと。

これまでフロンターレが前に進むことができたのは、優勝できたのは、フロンターレ全体として”一貫”してたからでは。“同じ方向を向いてきた"からでは。過去経緯は割愛するが、これからもこれを信じたい。

今季、非常に苦しいシーズンである。だが、“フロンターレ”は少しずつ前に進んでいる。でも、結果が出るのがもしかしたら、もう少し先かもしれない。

もちろん目の前の勝利も大事。ルヴァン杯敗退は悔しい。悲しい。しょうがない。もう終わってしまった。別に全てを失ったわけではない。もちろん失い方はいただけない。でも、しょうがない。戻ってこない。

ポッと優勝するチームを作っているのか?

いや、それは今までのフロンターレを見ていたら分かる。もっと長いスパンでチームを作っているはずで。2年、3年、5年、10年、20年。目指すところはそういう長いスパンで5度、6度、7度リーグを制覇するようなチームではないのか。

もちろん、その中で悲願であるACL制覇もしたい。国内のカップ戦も獲りたい。年間3冠や4冠だって達成したい。


ただ、今季は残すのはリーグのみ。長いスパンでみようがみまいが、勝ち点差があろうがなかろうが、鬼さんはここを獲りに行く。

トップチームは、リーグ3連覇へ。
アカデミーのU18は、プレミアリーグ制覇へ。

”チーム・フロンターレ”はそこに向かっている。

しかも“タダ”で向かっているわけではない。未来へのタネを撒きながら、5年後、10年後を見据えながら。

その過程は楽しいことばかりじゃないかもしれない。めちゃくちゃ苦しむこともあるかもしれない。

でも一緒に進んでいきたいと思う。

これまでみたいに、これからのフロンターレの未来を信じて。



※8/22追記※プレミアリーグ後半戦へ向けて

あらためてnoteを書く分量でもないので、こちらに追記。

プレミアリーグ中断期間の某日。フロンターレU18の練習試合(有観客)で長橋監督が大関くんにこう声をかけてた。

「大関、しっかり蹴る。相手に時間与えちゃってるよ。」

「長橋監督、そんなこと言うんだ・・・あ、好き・・・(S級ライセンス早く・・・!)」ってなった。

プレミアリーグ後半戦に向けてチームがトライしていることも見れた。

ディフェンス4枚+ボランチでの左右への揺さぶりはそれはそれは。それはそれは強烈なもの。左右のSBは目一杯幅を取り。ゆったりと回す時間は「相手のプレッシングを”わざと”かけさせている」かのようで。左SBから右SBへ相手を引き出すように展開。右SBへ入れる瞬間の全員のスイッチの入りよう。それは前半戦では見られなかった迫力。右SB江原くんに入り、ボランチ大関くんが斜めに受ける。カラダを開いて、一発で左SHの志村くんへ展開し、ゴール前へ一気に一気にそれはそれは一気に前進。迫力満点・・・。

おそらくコンパクトな陣形を敷いてきた相手への戦い方。フロンターレが大きく前進する要である2トップの一角やSHが中間ポジションで受けたところで潰したり、連動したプレッシングをかけてフロンターレディフェンス陣に蹴らせることをしてくる。が、それへの策か。

「縦がダメなら、横(幅)を使いましょう」か。

これを続けると相手は勢いよくプレッシングがかけられなくなるはずで(あとはシンプルに後半はスタミナが切れる)、いつもの岡崎くんや尾川くんが中間ポジションで受けてチーム全体で前進するのがいきてくるか。実際、見ていた試合の後半は前半のような左右への振りも交えつつもどちらかと言えばいつも通りの”中間ポジションで受けて展開”を繰り返して前進。”いつものフロンターレ”で試合をコントロールできていたかな。


プレミアリーグ後半戦、初戦の大宮アルディージャ戦(1-1の引き分け)はチームとして本当に悔しかったんだろうなと。試合後の長橋監督の言葉からもそれを感じるけど。

実はこの大宮アルディージャ戦と同じような試合となり敗れたのが記憶に新しいU15クラブユース選手権ラウンド16の横浜FC戦。プレミアリーグ後半戦の大宮アルディージャ戦を思い出したさ・・・。


話は変わるけど共有するとすれば。久野コーチがハーフタイムにコントロールオリエンタードの練習を選手としてた。これ、結構重要ね。

かつての「止める、蹴る」は、

「どう止めるか、どう蹴るか」へ・・・。

とにかく2週間後のプレミアリーグ再開が楽しみ。

また。

✳︎試合情報✳︎
 プレミアリーグ第13節
 2022年9月4日10:00キックオフ
 vs 流通経済大学付属柏高校
 @流通経済大学付属柏高校グラウンド



(左SHの志村くん。前半戦、鮮烈なプレミアリーグデビュー含めて素晴らしい活躍だったけど、非常に仕上がってる。プレミアリーグのスピードにも慣れてきたんだろうな。パワフル。楽しみ。)











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