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電話が苦手

最近の新入社員は固定電話が苦手というのが話題になっているけれど、私も昔から電話が苦手だ。受けるのもかけるのも苦手だ。
家に固定電話がない人も増えているらしいし。

レストランや歯科の予約を電話ですると、名前を聞き間違えられたりすることが多かったり、家にかかってくる知らない番号からの電話は、大抵怪しげなセールスや詐欺だったりするのも電話嫌いに拍車をかけていると思う。

そんな電話嫌いの原点みたいな体験が、遠い昔にある。

私が会社員3年目だったうららかな春の午後、デスクワークに励んでいたその時、一本の外線電話が鳴った。

「××だが。営業の○○君いるかね?」

電話を取った瞬間放たれたその言葉。
しかも携帯電話からで非常に聞き取りにくい。
誰だよ××って。××っていっぱいいるんだから、会社名くらい言ってくれないと分からないじゃないか。
「どちらの××様でいらっしゃいますか?」
というこちらの対応に、あきらかにむっとした電話口の相手。
そこでやっと気づいた。
げっ、××って、ウチの社長じゃん!!

日本中にありふれた名字××。それは当時勤めていた会社の社長の名前だった。
慌てふためき、
「すっ、すぐに電話を回しますので、少々お待ち下さい。」
と保留したものの、よく考えたらここはマーケティング部が入っている建物で、営業部は200メートル以上離れた別の建物だ。
なんでウチにかけてきた。

電話を転送することは可能だけれど、そのためには400人以上の名前が載っている内線番号表から番号を探し出して転送しなければならない。
そういう時にかぎってなかなか番号が見つからない。
○○さん、○○さん、営業1課だっけ2課だっけ?それとも週2回だけ来る地方支店の東京の座席か?
焦る私。
やっと番号を見つけ、ほっとして電話を転送したのもつかの間、今度は営業の○○さんが出ない。どうしたんだ。出てくれ。こっちは社長を待たせてるんだ・・・。
「・・・ッピーこの電話を携帯電話に転送します。
トゥルルル〜トゥルルル〜ただいま電話に出られません。御用件のあるかたは留守番電話に・・・」
うわーん。なんてタイミングが悪いんだ。
既に社長を5分以上待たせている。

しょうがないのでいったん電話を自分にもどそう。
電話機のこのボタンを押して・・・あれっ、もどらない。
もう一回押して、と。
あれっ?
「ツーツーツーツー。」
うげっ。・・・切れちゃった(正確に言えば切っちゃった)。

かけ直そうにも社長の携帯番号など知るはずもなく、結局、「携帯の電波が悪くて途中で切れちゃった。」ってことになってないかな〜と甘々な考えを持って知らんぷりを決め込むことにした。
その後、何分経っても私のいるフロアーに社長からの電話が再びかかって来た様子はなく、直接営業の建物に電話したんだな〜。なんだ始めからそうすればいいのに。まったく人騒がせなんだからっ。などと愚痴を言いながら仕事をしていて、そのことをすっかり忘れていた数週間後。

総務部から「電話対応マニュアル」なるものが全社員に配られた。なんで今頃?と疑問に思っている私に、総務部に同期を持つ先輩社員が教えてくれた。

「なんか、社長命令で急に作らされたらしいよ。
忙しい時期なのに、大変だね〜。」

・・・総務のみなさん、それはたぶん私のせいだ。ごめんなさいよ。

※ブログFROG★WORKS雑記帳2008年10月16日掲載「電話」より加筆修正

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