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わたしの手

「手がきれいだね」と言われた。初めてのことだ。
私の手の平は薄く、指はギスギスごつごつしていて、およそ女らしくない。
手の甲には、血管がチグリス・ユーフラテス川のように複雑に分岐して這っている。人差し指の付け根に小さな黒いほくろがあるが、これは小学生の時、鉛筆の先でつついてできたもの。その後何度かナイフで取ろうと
試みたが、さすがにこわくてやめた。その小学生のころ
「チズちゃんの手は、ETみたい」と言われ傷ついたものだった。

ヘルパーをやっていたころ、冬になるとあちこちにひび割れができた。
指紋に縦にひび割れが出来たのにはびっくりした。バンドエイドを貼っていたが、あるお宅でお年寄りの入浴介助をしていたら、その息子さんが見て
「ヘルパーが汚い手で入浴介助をしている」と会社にクレームがきた。
次の訪問の時、バンドエイドは剥がして
「申し訳ありませんでした」と謝ったがちょっと悲しかった。信頼してくれている、と思っていた方だったので。

手相は両手とも百握りといって、感情線と頭脳線(知能線)が一本になり、手のひらを横切っている。この手相の人は、粘り強い性格、天才肌、強運の持ち主などと言われていて、両手が百握りなのは珍しいそうだ。でも、そうとは思えない日々を送ってきたから、当たるも八卦、当たらぬも八卦の証明みたいなものだ。

この手で、文字を書き、野菜を刻み、洗濯をし、キイを打ち、父の身体を流し、涙をぬぐうことも・・・
「人に歴史あり」という番組があったが、「手に歴史あり」だ。
お風呂から出たら丁寧にクリームを塗り、この先何年あるかわからないが、
大事に使っていこう。良い歴史が作れるように・・・

            おわり

ヘッダーの写真は私の手、犬は本物そっくりのおねんねワンちゃんです。





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