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旬杯審査員賞(チズ賞)発表!

皆さま

初めて審査員という大役を仰せつかり、皆さまから寄せられた全句から
やっとの思いで審査員賞、選ばせていただきました。
もちろんどなたの作品かはわからないまま、です。
俳句素人のわたしですが、心に響いた句が沢山あり素晴らしい経験を
させていただきました。
拝見するたび、わたしの心の中に情景やストーリーが広がって来る12句を以下に記します。

(画像一生懸命作りました。よろしかったらお持ち帰りください。)

審査員賞 1位 花風さま

底までも冥き夜中のプールかな

この句を読んだとき、心がドクンと脈うちました。
夜中の誰もいないプール、月の光も届かない底・・・暗く別世界のように
シン、と鎮まった底になにか大きなストーリーが秘められているように感じます。「冥」という文字は、まか不思議な雰囲気に満ちています。
調べると「暗くて目に見えないこと。人間には見聞できないこと。人知の及ばない霊威のはたらき。 人の目には見えないところで人間世界を見ている神仏」という意味があるそうです。ああ、その力が私の心に迫って来たのか、と納得しました。俳句は深い、そして底知れぬ物語を秘めている、と改めて感じさせた一句でした。


プールの底は何かを秘めて


審査員賞 2位 リコットさま

立葵顔を上げれば空に花

もうこれこそ景が見えてくる句ですね。立葵はびっくりするほど、背が高くなる。見上げる花は、桜、梅、ハナミズキなど木の花が多いのに、これは一年草、二年草なので、今までなかったところに生え、ぐんぐん伸びる。そして知らないうちに見上げるほどになり、空のなかに花が咲いているよう・・・爽やかで作者の感動が迫ってきます。思わず空を見上げてしまうような心地よい句です。


空の中の花清々しく

審査員賞 3位 rira さま

終バスの《降ります》灯る夏の夜

行先表示が赤い終バス。それだけでストーリーを感じます。
作者は学生のころ、と書かれていますから部活で遅くなったのでしょうか、
もしかしてデート?などと想像がふくらみます。ボタンを押すと、バスのなかの「降ります」ボタンが一斉に赤く灯り、夜の街をバックに美しく、少し妖しく灯る。このバスはもしかして異次元の世界に行くのかも、と想像したり。心の中で夏の夜のミステリーツワーが始まるような気分になりました。


夏の夜は妖しくて

審査員賞 4位 鮎太さま

夜濯よすすぎや夢の重さのユニホーム

ご本人のユニホームかと思ったら息子さんのものとのこと。野球のユニホームでしょうか。汗や泥の沁み込んだユニホームを洗う。彼が夢を追いかけて必死に練習して来た日々や、今日の試合を思い出しながら。「夢の重さ」という表現に、長い間練習に明け暮れた日々、決して楽しいことばかりではなかった日々が想像できます。ユニホームをゴシゴシ洗いながら息子さんへのエールを送っているのですね。
がんばれ、の声が聞こえてきます。


胸のA は鮎太さんのA!


審査員賞 5位 おはようよねちゃんさま

夏祭りきみのことがㇲ花火ドン

これは意表をついた句ですね。夏祭りの夜、告白しようと
やっと口を開いたらなんとタイミング良く?花火の音に消されてしまった。
作者はほぼ妄想と言われていますが、それにしてもなんとドラマチックな妄想でしょう。浴衣姿の若い二人のときめいた心、今日こそは、と決心した思いが、空に広がる花火に重なってこれぞ夏!という句。
「あの日」を懐かしく思い出して、心に花火がドンと広がりました。


花火と一緒に好きの想いもドン!

審査員賞 6位 椿さま

群青の波のルフラン夏帽子

フランス語のルフランに痺れました。英語でいうとリフレインですね。
よせては返す波が、夏帽子のひろがるつばを連想させます。幾重にもかさなる少し波打ったつばは、波そっくりです。群青、という言葉にも
群れるという表現から、くり返す意味が秘められていますね。群青は
青の群れ、深い深い青の海が目に浮かびます。
帽子を見るたびにそんな海を想い出す。きっと楽しい思い出が秘められていてそれが心の中に波のように広がって来るのでしょう。


帽子のつばに波が浮かぶ



🏆審査員賞 ゆずさま

夏の果ポポポポポポの蒸気船

ポの文字がいくつあるか思わず数えてしまいました。アニメの画面のように
水平線を走っていく蒸気船が目に浮かびます。ポ、というたびに
ドーナツのような形の煙が吐き出されて遠ざかっていく。楽しい風景と
同時に、季語から、夏はこうして去って行く、という哀感も感じます。


🏆審査員賞 チューダさま

出揃いし支柱賑やか夏野菜

野菜作りは楽しいけれど手が抜けない。支柱を立てて丁寧に育てている
野菜たちの実が今つやつやと稔っている。「出揃いし支柱賑やか」という野菜の姿の表現の中に、作者の満足感、喜びも詰まっています。腰を折って手入れしている野菜たちを、ときどき腰をのばして「おお育ったね」と微笑みながらながめている作者。「ありがとう」と声かけながら収穫するのでしょう。

🏆審査員賞 汐田大輝さま

教室にお化けの気配梅雨きのこ

木造校舎なのでしょうか。じめじめした梅雨のころキノコを見つけ、なんだかお化けが出てきそう、という発想が面白い。梅雨茸という茸が実際にありその写真を見みたら、白くてのっぺりしていて充分に「お化けの気配」でした。生徒たちが「うわ、こんなところにきのこが!」と騒いでいる様子が
浮かんできます。

🏆審査員賞 うみのちえさま

蝉しぐれ給水車待つ列の黙

「黙」は「もだ」と読むのですね。大雨でライフラインが途切れ、水が出なくなった地域の方々の心情が見事に表されています。片付けに疲れ切っているのに、水は確保しなければならない。列に並ぶ人たちはなんでこんなことに、という思いやなんとか立ち上がらなくては、という思いが交錯しているのでしょう。人間の「黙」と短い夏を必死でなく蝉の声との対比、反対のようでどこか通じるものも感じられます。

🏆審査員賞 IKUKO@するすみさま

でで虫や濡れた家財の並ぶ道

この句も床上浸水の被害にあった地域の様子を、詠んでいると思います。
濡れてしまった家財を道路に出して乾かしている家々。その家財の上に見つけたカタツムリ。小さな命が確かに存在していることに、ほっと心が和んだことでしょう。深読みすれば、家を背負ったカタツムリと、これから家を再建しなくてはならない人たちと、ここにも通じるものがあるかもしれません。
歩みはゆっくりであっても前に進んで欲しい、というエールも聞こえます。


🏆審査員賞 ももんが あやこさま

風呂上がりオムツ一丁逃げて行く

季語がない句ですが、まだオムツをしている幼子の姿が見えるようです。
ぎこちない動きながら、走れるようになり、じっとしていられないんですね。そのエネルギーが楽しく、羨ましい。でも、慌てて追うママは大変ですね。「キャー」「ほら、こっち来て!」声までが聞こえてくるようです。

以上12句、素晴らしい句をありがとうございました!
チズより

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