天気のお裾分け

乗ろうとした通勤電車に雪が積もっていた。
朝の最寄駅は雨が止んだばかりで、夜に雪が降った気配はなかった。
ドアが開くと、屋根から車両の側面をつたってポタポタと垂れる雪解け水が電車の中の人工的、でも曇り空の明るさよりは暖かい光に照らされ、通勤姿の人の頭や肩、満員電車にかろうじて後ろ向きに乗りこんだ私の顔の前を落ちていった。
乗り換え駅で上りエスカレーターから電車を見ると、おそらく雨で溶かされて、でこぼこになってはいるものの、まだ雪は屋根を覆っていた。曇っていて寒いから、金属製の車両はキンキンに冷えているはず。きっと、もっと先の駅まで、この先で雪が降っていました、とばかりにあの電車は走っていく。

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