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自律性を最大に引き出す「動機づけ」とは?

日本では、平均賃金がほとんど伸びていないと言われていますが、こちらのグラフを見て改めて驚きます。これはOECDのデータに基づいて、1990年を100として2020までの平均賃金の推移の国際比較です。

出所:財務省令和4年度税制改正パンフレット

韓国は1.9倍、米国、英国、ドイツ、フランスが1.4倍ほどとなっている中で、日本はここ30年ほぼ横ばいです。

バブル崩壊の影響、「失われた30年」、いろいろと言われていますが、背景として、企業の人的資本への投資(教育訓練費などへの支出)が少ないこと、などもそのひとつと指摘されているようです。

また、個人として自己啓発へ支出している金額などをみてみると、労働者全体の6割の人が年間0円~1万円未満との統計もあります。

出典:厚生労働省 令和2年度能力開発基本調査

この金額を見て多いと感じるか少ないと感じるか。
これには「動機づけ」も関係しているかもしれません。

そもそも「動機」とはなにか?
人はどういうことに動機付けられるのか?探ってみました。

参考にしたのが心理学の分野で動機付け理論と言われている「自己決定理論」。

人はお金など、自分の外から得られる報酬などによって動機付けされるだけではなく、自分の心の中から湧き出てくる欲求に駆られて、行動を選択したり、喜びや満足を得たりする、というものです。1980年代にデシとライアン(Deci & Ryan)により提唱されました。

この、自分の外から与えられる外発的な動機付けと、自分の中から湧き出てくる内発的な動機付けの2つは、それぞれ別個独立のものではなくて、連続しているものとして、6つのタイプの「動機づけ」があるとしました(「自己決定理論」のうち「有機的統合理論」)。

上淵寿 大芦治 編著「新・動機づけ研究の最前線」北大路書房 を参考に筆者作成

中でも、活動すること自体が、自分が心の底から面白い!と思う「内発的動機付け」は、自律性が最も高くなるといいます。

自律性」というのは「自分の行動を自分で決定している感覚」。
活動することに強く影響を与える要因となるものとされています。

確かにお金のためだけだったり、義務感や、やらされ感を感じてしまうと、そのままでは行動になりにくく、また続きにくい。
そこに自分なりの意義や価値を見つけて、それ自体に面白さを感じるようになってくると、自律的な活動になっていく。

自律性」のほか、環境の中で効果的に自分の力を発揮して自分の有能さを示したい、という「有能感」や、他の人と良好な関係を持ち、ケアされたり、貢献したりという「関係性」を育むことも、大きく動機付けにかかわるといいます。

興味の持てないと思っていたものが、だんだんと面白くなっていった、という経験は誰にでもあるもの。一見面白さを感じないことでも 取り組まなくてはならないものがある。そんなときには「有機的統合理論」を知っていると、うまくこなせると思いました。

参考にした本:

上淵寿 大芦治 編著「新・動機づけ研究の最前線」北大路書房


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