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年金額改定の仕組み、令和6年度の場合

令和6年度の年金額改定が公表されました。

厚生労働省 「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」

このお知らせによると、年金額は令和5年度に比べ、2.7%増  

インフレが気になるところで、昨年に続きプラスの改定でした。

昨年と同じプラスの改定ではありましたが、改定の仕組み(パターン)は昨年と少し異なります。

昨年と比較しながら、要点を整理してみました。

1.本来の改定率(賃金と物価の組み合わせパターン)

年金額の改定パターンは、賃金と物価の変動率の組み合わせで全部で6通あります。

賃金・物価とも上昇する場合
賃金・物価とも下落する場合
賃金・物価が反対の動きになる場合

参照:【国の年金額】改定の仕組みをザックリ理解~物価上昇への心構え

今回は、賃金・物価ともに上昇しました。
ただし、賃金の上昇率よりも物価の上昇率のほうが、わずかに大きかった。

賃金+ 3.1%  <  物価+ 3.2%

このような場合の改定の仕組みは パターン2

つまり、賃金の上昇率をもとに、改定することになっています。
( ・・・物価の上昇には追い付いていない)

ちなみに、昨年の改定では、
賃金の上昇率のほうが、物価の上昇率よりも大きく、

賃金 + 2.8%    物価  +2.5%

この場合の改定率は、2つに分かれました。(パターン1)
・67歳以下の年金額 ⇒ 賃金の上昇率
・68歳以上の年金額 ⇒ 物価の上昇率

参照:年金額改定のしくみ 令和5年度の場合

2.人口の減少と寿命の延びによる給付の調整(マクロ経済スライド)

で、この後に、年金制度の持続性を高めるため、給付額を調整をする仕組み(マクロ経済スライドでの調整)が入ります。

今回、この調整率はマイナス0.4%

具体的には、以下のとおり、人口減少分 と 長寿化分を改定率に反映させて、給付を抑制します。

マクロ経済スライド調整率の内訳(厚生労働省の資料をもとに作成)

参考に、過去3年間のマクロ経済スライド調整率の推移を表にしてみました。

過去3年間のマクロ経済スライド調整率の推移
(厚生労働省の資料をもとに作成)

過去3年間をながめてみると、公的年金に加入している人(制度の支え手)が、やはりというか、少しずつ減少しているところが気になります。

3.結論

パターン2による計算の結果、令和6年度の年金額改定率は+2.7%

令和6年度改定率の出来上がりの図

ちなみに、過去3年間の改定率の推移は以下のとおりです。

過去3年間の改定率の推移

賃金や物価の上昇についていく仕組みがあるのは、公的年金の大きな特徴ですね。


4.今年の注目点

年金額の改定に関連して、今年、注目しているのは、以下3点です。

①今年は、春闘を始めとして、物価の上昇を上回る企業の賃上げが進むかどうか

賃上げが進むと年金額も3年連続でプラス改定が見込まれます。

②今年令和6年10月からは、従業員51人以上100人以下の企業等のパート・アルバイトの厚生年金の加入要件が拡大されます。

厚生年金の加入者増となれば、年金制度の支え手が増えて、改定率にプラスの影響があるものと期待しています。

③2024年は5年に一度の財政検証の年。検証を踏まえて、どのような年金制度の改正案が示されるか、注目しています。

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