見出し画像

煩わしい検査の後でも、「タイタン」は傑作でした。

昨日は元請のパトロールと自社の検査が被りました。所長(現場のトップです)とは、来週に控えた足場解体前の施主検査に向けて意見を擦り合わせている最中です。なので、現場としての本音は、自社の検査やパトロールはそっちで勝手にやってくれよ、という感じなのですが、結局、現場管理者として立ち会わないわけにはいかず、時間を大幅に奪われます。

当然、検査員は理想論を語ります。なので、「あれ、なんでここ手つけてないの?」や、「これ、交換したほうがええんちゃう?」など、その場で指摘や疑問を投げかけられます。僕ら現場の人間としては、「は?施工範囲も把握しないで検査にお越しですか?」くらい言い返したいのですが、そこは大人の嗜みで、「いえ、今回はそこ、入っていないですよ」と、ニコッと笑顔で答えるのです。

上司(営業部長)「このままはブッサイクやなあ」
僕「はい。ただ、今回は入っていないんです。やるならやります。追加を提案していただければ」
上司「折角やったら一緒にやったらいいのになあ」
僕「はい。追加でお金が出るならやりますよ。もしくは、無償でやりますか?これくらいだったら、問題ないでしょ」
上司「いや、そら、タダじゃできんよ。お金は貰う」
僕「そうですか。じゃあ、また決まれば早い段階で教えてください」
上司「そういや、この前、二次会行ったん?」
僕「……」

以上、昨日のワンシーン。概ねこんなやりとりが10回は繰り返されました。最近では、自分がタイムリープものの主人公になったつもりで楽しんでいます(すみません、心にもないことを言いました)。

帰宅後は、野崎まど「タイタン」を読了。予想どおり、大・大・大傑作。今年僕が読んだ本の中では間違いなくトップです。読後は久しぶりに打ちのめされました。余韻がなかなか引かず、ベッドで目を閉じてからも、ずっと「タイタン」の世界を反芻していました。

森博嗣の「Wシリーズ」もそうですが、「タイタン」の世界も「ユートピア」として描かれています(異論は認めます)。SFと「ディストピア」は相性が良いですが(異論は認めません)、そうではない。そこが、最高に好みです。

しばらくは、「タイタン」の世界が頭から離れないでしょう。あの登場人物たちのように力強く逞しい残滓を、まだもう少し楽しみたいと思います。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?