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「成瀬は信じた道をいく」読了。名谷駅前ノスタルジー。

名谷は朝から曇っているものの蒸し暑いです。連日、12時の段階で屋上は30度を突破するようになりました。あれほど賑やかだった昼休憩も、ここ数日は嘘のように静かです。職人さんたちのほとんどが、事務所の机に突っ伏してお昼寝をしています。

工事もいよいよ終盤。僕たちの範囲も、出来高70%を突破といったところか。隣の新築工事は足場も解体され、外構の検査を終えたようです。昨日あたりから、様々な人たちが建物に出入りしています。ここら一帯は役所の管轄なので、内装の視察かお披露目でしょう。マスコミらしき人たちもちらほら見かけます。

名谷という街には、今回の工事で初めて訪れました。駅前広場は人工芝が敷き詰められ、連日、老若男女問わずもの凄い数の人で溢れかえっています。まだ小学生以下だろう子どもたちが広場のパラソルとパラソルの間をキャッキャ言いながら走り回り、下校中の高校生のカップルがアイスクリーム片手にそんな姿を見て微笑んでいます。また、少し離れたところのベンチでは年配の方たちが缶ビールを飲みながら新聞を広げていたり、傘をゴルフクラブに見立ててスウィング談義に花を咲かせたりしています。最初にこの光景を目の当たりにした日は、あまりのノズタルジーに思わず眩暈がしました(20%誇張)。

老若男女問わず集まる場所というのは、都会では少なくなりました。大きく風呂敷を広げるよりは、局所を狙う方がビジネスとして効率が良いからでしょう。全世代を網羅するのは、あまりにコストが掛かります。

「成瀬は信じた道をいく」を読了。成瀬の独白、感情描写がないのは、ワンピースのルフィと同じですね。思考を探りづらい分、キャラの異質さが際立ちます。さらに、2作ともタイトルには「成瀬」とありますが、各章、物語の視点はあくまでも成瀬を取り巻く周囲の人たちです。成瀬に翻弄され、成瀬に魅了される人たちを描いているからこそ、成瀬がこの小説世界で象徴のように光り輝いているのでしょう。

現場事務所から名谷駅前広場を眺めていると、成瀬の世界に度々登場するショッピングモールや百貨店を連想してしまいます。広場では連日なにかしらの催しが行われており、マイクから声が聞こえるたび、「ゼゼカラ」かもな、と想像してしまうほど。

noteを始めたタイミングということもあり、きっと将来もこの現場のことを頻繁に思い出すでしょう。その時、この駅前広場の光景とセットに、成瀬の世界もおそらく思い返されるはず。なんだかずっとノスタルジーですが、猛暑にやられているわけではないので悪しからず……。 

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