見出し画像

苔むす小川


 たまには、地図を持たずに歩いてみるのもいい。目的地はいらない。用事も必要ない。目に留まった何かを、追いかけるように歩を進めるのがいい。
 
 さすがに足が疲れてきた。どうやら現代人のその足は、あまり歩くに適さないらしい。ふと、さらさらとした振動を、耳が拾った。実際に聞こえたのか、心が感じ取ったのかはわからないが、その正体の水というのは、やはり必要だと本能が訴えるのだろう。
 都会ではまずお目にかかれない。コンクリートの側溝を流される雨水ではない、生態系として流れる水だ。
 やはり川は、苔むしてからだろう。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?