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懐かしい香りってありますか?

こんにちは、にっしーです。
皆さんには、懐かしい香りってありますか?
私にはあります。
それは松ヤニの香り。
子供の頃は、海や山で遊ぶことが多く、そこには松がたくさん植わってました。
松には松ヤニがあって、触るとベタベタしますし、お世辞にも子供が好きな香りとはいえません。

夏休み。
私は宿題はさっさと終わらせるタイプの子供でした。
なのでお盆が過ぎる頃には暇になります。
だけど、周囲の友達はやり残した宿題に追われ始めています。

そうなんです。
遊ぶ友達がいなくなるんですよ。
一人で松に登って、手に着いた松ヤニの香りに包まれながら、キラキラと輝く海を眺め、ツマんないなぁ、夏休み終わっちゃうなぁ、なんて物悲しく思ってたものです。

やがて月日は流れて、都会に出ました。
松ヤニなんて遠い存在で、忘れ果ててた頃のこと。
椎名誠さんの「哀愁の町に霧がふるのだ」というエッセイを読んでいた時です。
えっ!?
ゴードンというジンが松ヤニの香りがすると書いてるじゃないですか!

ゴードンってジンは吞んだことはありません。
商店街に酒屋さんがあったので、覗いてみると、ゴードンがあります。
お値段もお財布に優しげな価格です。
さっそく買って、部屋で開封。
ホントだ! 松ヤニの香りがする!
後で知ることですが、これは、ジュニパーベリーというハーブの香りなんだとか。
当時は、そのまま吞むか、水で割るかしか知りません。
グビッと、そのまま吞むと、喉にカーッときます。
香りは懐かしいのですが、そのままでは美味いとは思えませんでした。

さらに月日は流れて、ジンリッキーってカクテルの存在を知ります。
ジンにライムを搾って、炭酸で割るだけなので簡単です。
これ、ゴードンでやったらどうなんだ?

何年かぶりにゴードンを買いました。
ジンリッキーをゴクッと。
口の中に、爽やかなライムが広がり、喉の奥から鼻に松ヤニの香りが抜けます。
美味いな、これ!
以来、ゴードンで作るジンリッキーは、私の休日のお楽しみになりました。

そしてさらに月日は流れ、妻となる女性と出会います。
妻も私もお酒が好きで、そこそこ強かったのです。
だから飲み会でもいつも二人だけ、シャキッとしたまま帰ってました。
その内に、よく話をするようになり、やがて二人だけで吞むようになりました。

たまたま、ゴードンにまつわる話をした時に、メニューを見ていた妻となる女性が言います。
「ジンリッキーあるよ」
二人で注文しましたが、松ヤニの香りはほぼしません。
「よく分からないんだけど、松ヤニの香りってどれ?」
都会育ちの妻は、松ヤニの香りを知らなかったんです。
そして、吞んだジンリッキーも松ヤニの香りはしませんでした。
「ゴードンが特別なのかなぁ」
「部屋にはあるの?」
「あるよ」
「じゃあ今度行っても良い? 作ってよ」
「えっ!? まぁ、良いけど」
こうして妻との交際が始まりました。

今日も暑いです。
今日の夕方も、温冷浴の後に、ゴードンで作ったジンリッキーを吞みます。

子供のころの夏の終わりの物悲しい松ヤニの香りには、今は甘酸っぱい記憶が加わっています。

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