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【映画批評】無名

ふと立ち寄った場所でたまたま時間が噛み合ったので観ました。

前情報では1937年以降の日中の諜報戦が主舞台のようです。それ以外何も知らずに観たが、結論から申し上げればイマミッツぐらいの映画。色々期待しすぎたみたい。日本軍の特務機関に興味ありすぎて早まってしまった。

汪兆銘政権(日中戦争下で作られた日本の傀儡政府)の治安組織と国民党スパイと共産党スパイと日本の特務機関がインテリジェンス戦を繰り広げるって話なんで、まあついつい期待してしまった訳だが…個性豊かな様々なスパイや工作員、それを追う捜査官が登場する。

ただし、最初に述べたようにイマミッツ。はっきり言って戦争映画好きの視点でいけば観なくて問題ない映画です。この映画の見どころはアジアのイケメンが色とりどりの高級テーラードをスリーピースで豪華に着こなすそのかっちょ良いお姿。それだけだね(真顔)。その視点で行けば間違いなく涎ものの映画なんだろうけどね。

あとは、そのかっちょ良いアジアンイケメン俳優のカンフーというか格闘ですかね。もはや諜報戦とか関係ない訳で。何を申し上げるのもヤボというものです。

最大のミステリーというか面白みは誰がどの勢力で実はどの組織のために戦っているのか読み解くとこなんだけど、これが中国共産党独裁の治世で大ヒットを飛ばしてる事実を思えば自ずと答えは見えてくるというもの。聞くまでもなく明らか。つうか、当たり前やんそれって感じである。違ってたらこの映画の関係者みんな逮捕されちゃうやん。発禁とかになるのも普通やからね。「鬼が来た!」を見習えやコラ。

日本軍の描写はこの手のアジア映画特有の一種の様式美すら感じさせる奇妙さだ。日本語はカタコトで聞き取れない。兵隊は上着脱いだら何故か背番号みたいな赤丸つけたタンクトップ。これには失笑。

戦いになったら長銃はダラーンと持ってジジイのジョギングみたいな小走りで駆けてって撃ち殺されて終わり。軍人魂見せろやコラ。

対して民間人にはナチス親衛隊やウクライナ傭兵、ラトヴィア傭兵以上の乱暴狼藉ブリを見せつける。正しく抗日映画の基本を踏襲した伝統的描写。あとこの手の殺戮描写に「生き埋め」が多用されてるのが大陸の文化やなと思って見ていた。生き埋めされてる最中の子供は黙って目を瞑って神妙な顔。普通ジタバタ抵抗するやろ。(歴史的に殺害方法に生き埋めを好んだのは中国の歴代王朝なのだが笑)

汪兆銘政権のゲシュタポみたいな役割のトニー・レオン(香港の俳優)は見るからにイングロのランダ大佐のパクリで何を申し上げるのもヤボですな。

髪型とシャくれた顎
見た目まで寄せてへんか?

前半の尋問のシーンもフランスの農村での尋問シーンに構図から絵から何から何まで似ています。後半のいきなり飛びかかる後ろ姿とかまでランダ大佐に似てる。クリームの乗った甘いお菓子が小道具になっていたり類似点を挙げればキリがない。軍服がオシャレなスーツになっただけで優雅で知的な様子もそっくりだ。そのソックリさは逆に観てもらって意見を聞きたいですけれども。

わっるい特務機関の日本人の中将が悪役としてずっと君臨してるけど飯食うシーン以外特に何もしてないので存在感は薄いのだが、ラスト敗戦直後のシーンで「アンタがその軍服を脱いだらアンタだってわからなくなるだろ、だからその軍服を今更脱ごうだなんで許さない」とか主人公に言われちゃってその直後お仕置きされちゃうので(しかもカミソリ手に持って言う。ブラピはブロードナイフだったね)タランティーノファンは逆にチェックしたほうがいいですよ笑 中国人民はひょっとしたらイングロを知らないのかもしれないけど、大ヒットしたというのにイングロとの類似が批評として出てこないのは全く奇妙というしかありません。なんか言い訳考えたほうがよかねえかな。

なんかこうやって既存映画との類似点、パクリ?オマージュを見ていくぐらいしか楽しみがないかもしれない。つーかそれに限ればなかなか楽しかったが。

西側と文化の断絶が進んでいるからこそ、このような露骨なパクリが特に咎められることもなくまかり通る訳なんですかね?そう考えるとこの惑星の分断の根深さ、まだ全然終わってない東西冷戦を感じさせられ感慨深い。

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