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GⅠエリザベス女王杯

競馬ファン同士の会話で必ずと言っていいほどあがる話題の一つ「歴代最強の牝馬は?」である。

64年ぶりの牝馬ダービー制覇、ウォッカ
無敗の3冠牝馬、デアリングタクト
9冠達成女王、アーモンドアイ
…エアグルーヴ、ジェンティルドンナ、ブエナビスタ
名前を挙げればきりがない。
…また今年からその中にリバティアイランドの名前が加わることに異論をはさむ者はいないだろう。

時を超えて競馬ファンの空想の中で対決する名牝たち。
なんとも夢のある話だ…。だがこうも思う。
「最強の牝馬なんて、果たしているのだろうか…?」
彼女たちは皆、己の生きた時代で、ベストを尽くし、戦い抜いてきた…。
64年ぶりに日本ダービーを制覇した牝馬と、現役最強のお嬢さん。どちらが秀でているのか、と比べることにあまり意味はないような気がする。
時代を彩ってきた名牝たちは皆、己の生きた世代の中で「最強」だったのだから。

あの仔が口開いた…。
「だったら”今”だけでいい、だれが最強なのか、はっきりさせようじゃないか?」

彼女たちの熾烈な戦いが幕を開ける。

「GⅠエリザベス女王杯、まもなく出走です。」


はじめに

3歳クラシック勢 VS 実績古馬が戦う秋の女王決定戦。今年は4年ぶりの京都開催。下位人気の激走が多く、波乱を含みやすいです。昨年はオールカマー勝ち上がりのジェラルディーナがGⅠ初制覇、4番人気でした。

コース攻略

3コーナーにアップダウンのある特殊な形態。4コーナー下りで加速した馬が直線でキレ脚を使って好走するケースが多い。スローなら前残りもあるが、基本は流れての差し決着。

まず先に言っておくと、今回のエリ女は過去3年と比べ全く異なるコース適性が求められる、ということです。
先述した通り今年は京都開催に戻ってきましたが、阪神施行時の3回は全て大外8枠の馬が勝利しており、外を通ってきた馬の差し込みで決着していました。それは2200mで外枠を走らされてもバテないスタミナと、坂を駆け上がるパワーを要する馬の台頭を意味しており、昨年のジェラルディーナはそれを象徴するような走りを見せてくれました。
今回は京都外回りに戻りました。芝質が軽いことと、4コーナー下りから各馬一気に加速するため、スタミナよりもスピード、パワーよりも末脚に長けた馬が好走する可能性が高いでしょう。データを拾うと2010年~19年の京都開催では、上り1位の馬【6-0-4-4】、上り2位の馬【1-2-0-7】と切れ味勝負の様相を呈しており、また、4角1番手【0-2-0-8】と前残りの可能性も若干考慮しておいた方がよさそうです。
さらに同距離、もしくは距離延長で臨んできた馬の勝率が距離短縮組を上回っており、この傾向も過去3回の阪神と異なる点として留意しておきたいです。
今回、勝利への必須条件5つを下記に箇条書きにしました

・関西馬であること
 →
過去10年9頭に該当
・3歳馬もしくは4歳馬である
 →
過去10年9頭に該当
・2000mでの勝利経験、もしくは重賞3着以内がある
 →
過去10年全頭に該当
・前走からの継続騎乗(外国人騎手への乗り替りはOK)
 →
過去10年9頭に該当
・1~4枠が望ましい
 →
外枠有利の阪神と異なり、内枠が優勢

以上の点を踏まえ、今回は2頭の推奨馬+危険な人気馬&狙いたい穴馬の計4頭をピックアップしていきたいと思います。

◎本命推奨馬

ブレイディヴェーグ

3歳牝馬・ロードカナロア産駒 美浦・宮田厩舎 鞍上・Cルメール

2歳8月に新潟でデビュー。新馬戦は出遅れから2着に敗れましたが、上がり最速の末脚を見せファンに大きな期待を抱かせてくれました。が、レース後に骨折が判明し長期休養。復帰戦となった未勝利クラスを圧巻の6馬身差の勝利で完全復活!も束の間、再度骨折で休養。と、都合2度の骨折を乗り越え、秋華賞トライアルのローズSでこれまた上がり最速で2着に入賞。リバティアイランドとの兼ね合いで秋華賞は見合わせましたが、エリ女に照準、古馬との対決に名乗りをあげて来ました。
この馬の魅力は何といってもその末脚、6月の東京1勝クラスでマークした”1.57.9”のタイムは天皇賞秋を制したエフフォーリアと同じ。現時点では2勝クラスの身ですが、素質を考えればGⅠ戴冠も現実的だと思われます。
血統背景を探ると父ロードカナロアはGⅠ6勝の名馬、キンカメの後継牡馬としてその地位を確立しています。母インナーアージはディープインパクトを父に持ち、自身も中央の芝で4勝を挙げており、妹のミッキークイーンはオークスと秋華賞勝ちの2冠馬でした。
大きな不安要素として美浦所属の宮田厩舎は関西圏を鬼門としており、なかなか重賞を勝ちきれずにいます。栗東の滞在調教でどこまでGⅠ仕様に仕上げれるか、厩舎の手腕が問われるでしょう。
ブレイディヴェーグはデビューから連対を外したことがなく、まだキャリア4戦で上積みの余地も十分にあります。賞金加算で臨んだローズSは完全に「叩き」。クラシック級といわれた能力をいかんなく発揮できれば、ビッグタイトル奪取も射程圏内です。

○対抗推奨馬

ハーパー

3歳牝馬・ハーツクライ産駒 栗東・友道厩舎 鞍上・川田将雅

オークス2着馬。先日の秋華賞3着から直行で古馬GⅠに挑んできました。秋華賞直行組では17年モズカッチャン、13年メイショウマンボがともに3歳でエリ女を制していますが果たして…。
本馬のキャリアは6戦2勝、2月のGⅢクイーンCで重賞勝ちを収めています。クラシック3戦全てに出走して4、2、3着と勝ちきれないまでも安定した戦績でここまで来ています。こと2000m以上では2回出走して連対を外していなく、他の有力馬に比べると決め手に欠けますが、レースセンスが高く大崩れの心配もなさそうです。こういうタイプは他馬にミスがあった際に必ず浮上してきますので、馬券的には抑えておきたいとこです。また馬混みを苦にしないので、内枠を引いた際は信頼度を上げてもいいかもしれません。
血統的にみると、ハーツクライ産駒はドウデュースやスワーヴリチャードなど牡馬の活躍が目立ちますが、牝馬でもGⅠ4勝を挙げたリスグラシューがいます。母Serestaはアルゼンチンの馬で母国のGⅠ勝利経験があり、ドゥラメンテ産駒で地方交流で活躍しているヴァレーデラルナは本馬の半妹にあたります。
今回は乗り替りで川田将雅騎手へ手綱が戻ります。鞍上が馬の能力を手の内に収めれば、悲願のGⅠ制覇も決して夢ではないはずです。

以下余談。ハーパーを所有している『エムズレーシング』なるオーナー。前身は個人馬主の杉野公彦氏。アミューズメント企業『ラウンドワン』の社長さんです。馬主デビューしてから次々に高額馬を競り落としてきましたが、重賞勝ちはこのハーパーによるGⅢのみ。ここで悲願成就となるのでしょうか…?

✖危険な人気馬

ジェラルディーナ

5歳牝馬・モーリス産駒 栗東・斉藤崇厩舎 鞍上・Rムーア

昨年覇者。近走パッとしなかったですが、超鞍上強化、世界のRムーア確保(11/7 現在)で人気を上げて来ました。既に多くの方が指摘している通り過去10年で外国人騎手が7勝をあげている本レース。ここも一発あるのでしょうか…?
昨年はオールカマー、エリ女を連勝後、22年最優秀4歳以上牝馬のタイトルを獲得し、有馬記念3着入賞と素晴らしい戦績で終えました。
しかし今年に入ってからは一転、大阪杯6着に始まり、前走のオールカマー6着まで、一度も馬券に絡むことができず、昨年ほどの勢いを感じなくなっています(それでも十分な成績ではあるが)。そもそも昨年の阪神2200の大外枠は、馬群の外を回す競馬をしないと勝てないこの馬にとって千載一遇のチャンスでした。京都の外回りになってどうか?後方からレースを進める現状ではどうしても展開頼みになってしまうので、もう一度GⅠを獲るためには位置取りの改善を求めたいところです。
そのためのムーア騎手への依頼なのでしょうが、元来気性が荒く馬混みを嫌い、パドックでもチャカつきを見せるような癖馬なので、陣営の判断がどう出るか…?
血統は父モーリス、母は言わずと知れた名牝ジェンティルドンナの超良血馬。父母相似血統でパワーと機動力を擁してますが、ディープ産駒特有のしなやかな一面も持ち合わせ、京都に対する適正は決して低くないとは思います。

☆狙いたい穴馬

ビッグリボン

5歳牝馬・ルーラーシップ産駒 栗東・中内田厩舎 鞍上・西村淳也

今年で5歳を迎えた牝馬の戦績は11戦して5勝、前走は先月の京都大賞典に参戦して8着に敗れています。
特筆したいのは今年6月のマーメイドS、阪神2000mで行われる牝馬限定のハンデ重賞ですが、毎年荒れる重賞として有名で、軽ハンデの馬が激走しています。1番人気が勝ったのは14年のディアドラマドレが最後でしたが、ビッグリボンが9年ぶりに1番人気での快勝を飾りました。斤量55キロを背負っての勝利で、ハンデに恵まれたわけでもなく、この馬のポテンシャルをの高さを感じるレースとなりました。
ルーラーシップ×母父ディープインパクトの血統は秋華賞2着だったマスクトディーヴァと同じで、中長距離適性は比較的高いでしょう。また菊花賞馬キセキの全妹であり、京都への適応も問題ないと思います。
ビッグリボンはデビュー以来、京都競馬場で走ったことがありませんでしたが、前走でその課題を克服。本来であれば府中牝馬Sを走らせるのがセオリーでしたが、敢えて牡馬牝馬混合の京都大賞典で経験を積ませた辺りに、陣営のエリ女を目標に掲げたプランが見え隠れします。ここで輝きを放ち更なる高みへと飛躍できるか、個人的には最も注目している一頭です。

最後に(加筆&もう1頭)

以上が今回解説した4頭ですが、最後のビッグリボンについて追記しました…。
管理している中内田厩舎はリバティアイランドをはじめ、同レースに出走するアートハウス他、ミッキーチャームやダノンファンタジーなど牝馬の活躍が多い厩舎です。
過去60余戦、厩舎の牝馬限定重賞の成績を遡ったところ、連対率30%強と抜群の実績でした。まさに「牝馬重賞の中内田厩舎」です。
前走京都大賞典のローテはデータ上、全く良くないのですが、敢えて踏み切った理由は先述した通り。
鞍上、西村淳也騎手の躍進も目立っています。改めて穴狙いで狙ってみたいな…と、匂わせたところで校了が近づいて参りました…。

最後に、今年のエリ女も飛び抜けた馬がなく混戦模様の予感です。今回紹介した4頭についても、序文に上げた"勝利必須項目5箇条"から1〜2項目外れています。
出走予定馬の中でただ1頭、勝利条件を満たしている馬がいて、それがゴールドエクリプスです。鞍上は岩田望来騎手、今年乗りに乗っている若手ジョッキーの1人。恐らくそこまで人気しないと思いますので、狙ってみても面白いかもしれません。この馬もかなりの素質を秘めていると思いますので…。
とはいえ文字数だいぶ増えてきてしまいましたので、またの機会に…。

来週はマイルCSの考察記事を投函予定です。冒頭のポエムも継続予定です(笑)それでは皆様よい週末を、競馬とともに!


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