人生に丁寧さを注ぐことで解決することはきっとある
フジテレビ系木10ドラマ『silent』ついに最終回終わってしまった。
毎週めちゃくちゃ楽しみにしていたので終わって寂しい気持ちでいっぱいだけど、全11話見続けて確信したことがありまして。
脚本構成演出、実力派な俳優陣の演技力は素人の私が言うまでもなく素晴らしいんだけど、これだけ多くの人の心を理由は、このドラマの土台にある「丁寧さ」にあると思ったのです。
自分が本当に言いたいことを言葉にする。
SNS上ではなく本人と顔を見合わせてコミュニケーションを取る。
伝えたい、伝わらない、その葛藤やもどかしさを十分に味わう。
たとえ意見がぶつかっても、それでも言いたいことを言い合う。
自分が伝えることを諦めようとしても、それでもいいのかと自問自答する。
相手が伝えることを諦めようとしても、その手を離さないでいる。
こういうのって、時間がかかる。手間がかかる。すぐに手軽に早く結果が出るわけでもない。
何と言っても、ものすんご～く面倒くさい。「面倒くさい」の積み重ね。
従来の恋愛ドラマで言えば「ここで強引にでも抱き締めにいくやろ！」「ここはもうキスのところ！」と期待が高まる場面、silentではそういったお決まりのラブシーンに流されたことは一度もなかった。
その真骨頂と言えば、ヒロインである紬と彼氏だった湊斗が”別れること”に1話分使った第5話。
1話分も使っちゃうのよ！（笑）
別れた二人が電話越しに本音を語るシーンも、相当な時間を占めていたと思うし、えええ？そんなに時間使う？さっさと行くのがドラマの世界じゃない？って思うんですよね。従来の感覚なら（笑）
ここに関してはプロデューサーの村瀬さんと脚本家の生方さんも「局の上層部に許してもらえないだろうと思った」と語っていたぐらい。それほど、別れに1話分の時間をかける「丁寧さ」には脱帽した。
11話全て観た今、いかに自分が「丁寧さ」からかけ離れ、キラキラした少女漫画や平成の時代に流行った恋愛ドラマに毒されているかにも気付いてしまいましたよ（笑）
そして、silentは回を重ねるごとに伏線回収や考察がSNS上では名物になりつつあった。
私も楽しくてよく考えていたけど、脚本家の生方さんはゴリゴリに狙って伏線を張っている訳ではなかったし、プロデューサーの村瀬さんもこんな風に語っていた。
このドラマって、考察されてるじゃないですか。あそことあそこが繋がった！とか。
実はそれは（脚本家の）生方さんも言ってるんだけど、別にそれは考察されようと思ってやってないし、伏線を張ろうと思っているわけじゃなくて、人生ってそういうものじゃないですか。
ある時あそこでやったことがここで繋がるとかっていっぱいあって、（silentの中ではそれを）割とシンプルにやったことが、皆さんはそれをすごい繋がってると言って下さってるんだけど。
そう、私は村瀬さんに全面同意で「丁寧さ」を積み上げていった先には自然と点と点が繋がるのだと思う。どんな人の人生にも、それはある。
そうして結果として起きたことを後から振り返ってみれば、それを”伏線回収”と呼ぶのかもしれない。
「丁寧さ」は、それと離れ過ぎて忙しない現在を生きている私たちの多くが無意識的に渇望しているもの。だからこうして『silent』を通じて、共鳴したんじゃないかなぁ。
きっと「丁寧さ」があることで解決することって、沢山ある。
現代でよくある”温度感の低い”悩みの代表格である、
自分は何がしたいのか分からない
自分の本当の気持ちが分からない
自分はこれでいいのか？という漠然とした不安感や虚無感
これらは自分の内側で「丁寧さ」が失われた結果として、現れてくるものなのだと思うのです。
じゃあ「丁寧さ」っていうのは、何によって生まれているかと言うと、日々の”点を打って行くこと”ありきで。
今の自分がどう感じたのか（＝嬉しい、悲しい、つまんない、etc）
今の自分は何がしたいのか（＝何が食べたいのか、寝たいのか、休みたいのか、そういう日常の細々したレベルで）
今の自分は何を考えているのか（＝何に対してどれぐらいの深さで考えているのか）
こういう点を打ち続けるには、自分の内側の小さな動きや変化を常に観察し続ける事が必要で、その点を打ち続けているうちに「丁寧さ」が養われてくるのだと思う。
それが養われることで、自分自身が満ちてくるのだとも思う。
だから「丁寧さ」とは、とても創造的な営み。そしてそれは、どんな人の内側にも存在しているけど、現代では眠りがちな力なのだよ。
眠っているのなら、呼び覚ましてあげればいい。
『silent』にはそういうコアなメッセージも内包されていた気がします。
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