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契約書って結んだほうがいい?

個人事業主やフリーランスとして仕事を受託する際には「業務委託契約」を締結するものです。
ただ、常に契約書を作成するとは限りません。相手から契約書の作成を求められたら応じるけれども、自分からわざわざ契約書の作成を求める方は少ないのではないでしょうか?

実際には相手から契約書を提示されなくても、自分から契約書の作成を求める方が安心です。

今回は取引相手から契約書の作成を求められなかった場合に自分から作成をお願いすべきか、雛形を用意しておくべきかなどについて解説します。


1.契約書の役割

そもそも契約書は何のために作成するのでしょうか?
法律上、多くの契約は契約書がなくても成立します。フリーランスが仕事を受ける際の業務委託契約の成立にも、契約書は要りません。
口頭でもメールのみであっても、お互いに発注内容や仕事内容、報酬額などの認識が一致して合意すれば契約が成立します。

しかし契約書がないと、契約した証拠が残りません。将来、相手が「契約していない」といって報酬の支払いを断ってくるリスクも発生するでしょう。
また契約書を作成しないと、契約内容が明らかになりません。
たとえば報酬の支払い時期がわからないと、いつまでも支払ってもらえない可能性もあります。

契約書は将来のトラブル防止やフリーランスが安心して仕事を進めるために作成すべきといえるでしょう。


2.契約書を作成しないリスク

もしも契約の際に契約書を作成しなかったら、以下のようなリスクが発生します。

  • いつまでも報酬を払ってもらえない

  • 納品してもいつまでも検収が終わらない

  • 納品しても「気に入らない」といわれ、報酬を払ってもらえない

  • 当初伝えられえていなかった後付の修正を求められて仕事量が増えてしまう

  • 相手の氏名(名称)や住所、連絡先がわからない

上記のようなトラブルを防ぐためにも、契約書は必須です。


3.相手から契約書を要望されなくても自分から作成を求めよう

そうはいっても個人で活動しているフリーランスの場合、現実的にすべての案件で契約書を作成する方は少ないでしょう。

「相手企業から契約書の作成を求められたら応じるけれど、自分からは積極的に要求しない」方がほとんどではないでしょうか?

しかし契約書は上記のとおり、フリーランスが自らを守るために重要な役割を果たします。
相手から求められなくても、自分から作成をお願いしてみてください。


4.少額で一回限りの取引の場合

フリーランスの受託契約には、報酬が高額で継続的な取引もあれば、低単価で1回のみ単発の取引もあるでしょう。

報酬額が少額で一回限りの取引であっても契約書を作成すべきかは悩ましい問題です。

確かに報酬額が数千円などで1回しか取引しないのであれば、いちいち契約書を交わすのは面倒とも思えます。ただ、そうであっても何の証拠も残さずにいきなり仕事をすると危険です。

その場合は、契約内容をメールで残すことで代替しましょう。
契約書を作成しなくても、他の方法で契約した証拠が残っていて契約内容が明らかであれば、トラブルを防げます。
特に少額で一回限りの取引であれば、単純なのでメールなどで発注内容をまとめやすいでしょう。
相手からはっきりと仕事内容と報酬額、納期や支払時期などを書いたメールを送ってもらい、そちらに対して承諾するメールを送り返してください。
それで最低限の契約の証拠となります。
記載する内容は、可能であれば業務委託契約書などに記載のある重要な項目が網羅されていると安心です。
相手の氏名(法人の場合には名称)や住所、電話番号等も確認しておくべきです。
メールアドレスだけでは何かあったときに相手が不明で対応困難となるリスクが発生します。


5.契約書の作成をお願いしたら契約してもらえない?

フリーランスの収入は不安定なので、せっかくのお仕事のお誘いを断りたくないものです。
「契約書を作成してほしい」などと申し入れると、相手が面倒に感じて仕事を発注してくれないのでは?と不安になる方も多いでしょう。

確かに相手が小規模事業者や個人の場合などには、契約書の作成を嫌がられるケースもありえます。特に相手が個人の場合、相手自身もフリーランスであまり氏名や住所を知られたくない場合も考えられるでしょう。

反面、相手が個人のケースでは法人以上に連絡をとれなくなるリスクが高くなります。
可能な限り、契約書を結ぶようにしたほうが安心です。


6.自分で雛形を用意すると便利

相手から契約書の作成を促されない場合には、基本的にフリーランス側から契約書の締結を依頼したほうが安心です。
ただ、契約のたびに1から業務委託契約書を作成すると大変な手間がかかるでしょう。
ただでさえ忙しいフリーランスの仕事量が倍増してしまいます。

そこで、普段から「自分が使う業務委託契約書の雛形」を用意しておくようおすすめします。
自分で雛形を用意していれば、相手に確認してもらって署名捺印(記名押印)してもらうだけで契約を締結できます。

あらかじめ自分に有利になるようにアレンジできるので、相手方から提示されるよりも安心して契約できるでしょう。


契約書の雛形を用意する方法

契約書の雛形を用意すると言っても、慣れない人には簡単ではないと思います。
例えば「業務委託契約書」といっても、内容はさまざまです。
コンサルタント向けのもの、プログラマー向けのもの、イラストレーター向けのものなどがありますし、報酬の計算方法も「プロジェクト単位」「時間報酬」「月単位」「納品物単位」などさまざまです。
著作権を譲渡するかどうかの違いも重要となるでしょう。

業務委託契約書の雛形を探す際には、まずは自分の仕事内容に近いものを探してみてください。
著作権譲渡の条項が入っているか、納期や検収にかかる期間、修正の可否や回数などがどの程度書かれているか(あるいは書かれていないか)も確認し、状況に応じて自分用にアレンジして用意しておくと便利です。


7.さまざまな「業務委託契約書」

業務委託契約書にはさまざまなものがありますが、例として以下のような分類が可能です。

7-1.報酬の計算方法

仕事内容により、報酬の計算方法も変わります。プロジェクト単価なのか、月額料金なのか、時間単価なのかなど、契約内容によって変更しましょう。

7-2.著作権譲渡の有無

著作権を譲渡するかどうかはフリーランスにとって非常に重要な問題です。
仕事内容や報酬額などとの兼ね合いで譲渡すべきかどうか、譲渡するなら時期も合わせて検討しましょう。

7-3.受注者に有利か発注者に有利か

業務委託契約には、受注者側に有利なものと発注者側が有利なものがあります。
受注者が有利なものの例として、損害賠償義務が発生するケースを限定する、損害賠償の予定額を入れて制限する、再委託を可能とするなどの特徴があげられます。皆さんは受注者になることが多いと思います。受注者の立場で、契約書の雛形を求められたら、受注者に有利になっているものを使用しましょう。


8.まとめ

契約書は、トラブルが起こった時に自分を守ってくれる大事なものになります。可能な限り契約書を取り交わすようにしたほうが安心です。先方から契約書の話が出てこない時は、こちらから締結の依頼をする方がいいでしょう。

著者紹介
福谷陽子 ライター 元弁護士
弁護士時代は契約書の作成、レビューや中小企業へのコンプライアンスに関するアドバイス、労務管理など企業法務に積極的に取り組んでいた。現在は法律知識やスキルを活かして各種メディアや法律事務所の依頼を受けて専門記事の執筆・監修に精力的に取り組んでいる。

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