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専門用語は3つまで。『来て良かった』と思ってもらえる税理士法人であるために

 freeeは、6月14日(火)、「freee Advisor Day 2022」を開催します。
 このイベントは、アドバイザーをはじめとする会計事務所、税理士のみなさまとfreeeが、会計業界、そしてその顧問先のみなさまの未来を共に考えるためのものです。
 その開催を前に、「freee Advisor Day 2022」に登壇する方を一部ご紹介します。
 イベントを前に、登壇者の思いや仕事に対する思いをお伝えすることで、当日のお話がより深く伝わるようになることを目的にしたインタビュー記事です。
 No.1税理士法人の代表社員で税理士の藤浪伸治さんとfreeeを担当する藤田友貴さんのお話。ぜひ、ご一読ください。

「知識は勉強すれば、あとからいくらでもついてきます。それ以上に大切なのはコミュニケーション能力だと思っています」

 No.1税理士法人の代表税理士として20人以上ものスタッフを束ねる藤浪伸治さんに、人材登用におけるモットーを聞くと、そう教えてくれた。

 クライアントへの接し方について心掛けていることを聞いたときも、やはり同じような信念があった。

「社員には必ずお客さまに対してリスペクトの心を持ちなさいと伝えています。お客さまはみな、責任を背負って会社を経営されています。『同じことがあなたたちにできますか?』ということは、常に問いかけています。リスペクトの精神がなければ絶対にお客さまとのコミュニケーションは失敗します。人生を懸けて会社を経営されている人たちに対して、軽率な言葉や適当な会話をするのではなく、こちらも情熱をもって接してほしいということは常々言っています」

 社員に対しても、クライアントに対しても重視していたのは「コミュニケーション」だった。そうした言葉の端々に、ここまで歩んできたキャリアが見え隠れしていた。

藤浪さんの会計業界との出会い

「バブル時代だったので面接に行ったら、受かってしまったみたいなところがありました」

 藤浪さんは大学を卒業すると、大手上場企業で社会人としてのキャリアをスタートさせた。

「社長になれるかなと思っています」

 新入社員研修では役員がいる前でそう豪語し、周囲を驚かせるキャラクターの持ち主だった。

 ところが、水が合わずに半年で退社すると、知り合いのツテにより飲食業界に飛び込む。4年ほど働いていたが、勤めていた企業が事業拡大に失敗し、倒産を経験。そこで改めて自分自身を見つめ直した。

藤浪伸治さん

「ずっと経営者になりたいと思っていたんです」

 社会人としてのキャリアをスタートしたとき、新人社員研修で発した言葉は、決してブラフではなく、本心だった。

「当時はまだ26、27歳でしたから、経営者といっても何をやっていいか分からない。ならば、いろいろな職種の財務状況が見られる税理士や会計士の仕事がいいのではないかと思ったんです。将来的に自分が経営者になったときのためにも、財務の勉強はしておいたほうがいいのかなという考えもありました」

 そして、知り合いの紹介により会計事務所で働くようになる。藤浪さんの言葉を聞けば、おそらく天職だったのだろう。

「若造である自分でも、いろいろな経営者の人たちに直接会える機会がたくさんあったんですよね。そうした人たちと話ができる機会が楽しくて、おもしろい仕事だなと思いました。中小企業の経営者はいろいろな考え方を持っている人たちがいっぱいいて、クセのある人もたくさんいる。若造でもそんな人たちと話ができることが刺激的でした。ここでトップになる、もしくは独立するには税理士の資格を取るしかない。そう考えて、勉強をはじめました」

 税理士の資格を取るため、本格的に勉強をはじめたのは30歳を過ぎてからだった。当時は結婚して、子どももいたこともあり、周囲からはバッシングされることもあったというが、家族の理解と自身の情熱が突き動かしたのだろう。

「学生時代から全然、勉強しないで生きてきた自分が、あのときばかりは本当に勉強しましたからね。税理士の資格は必須のアイテムだと思っていたので、迷いはなかったです」

税理士資格の取得と転機

 念願だった税理士の資格を取得したのは39歳だった。

 家族とは合格したら、「高級焼肉店でお祝いしよう」と、かねてから約束していた。

 合格通知が届いたその日、玄関を空けると、夕食の匂いはしなかった。その瞬間に「もしかしたら受かっているのかも」と、思考は駆け巡った。

 ちょうど時期はクリスマス前。家に入ると、リビングに飾ってあったクリスマスツリーのうえに、ちょこんと合格通知が乗っていた。

「もう、お店は予約してあるから」

 いつ交わした約束かも分からないほど、月日は流れていたが、家族も覚えていてくれたことがうれしくて、くすぐったかった。

「資格が取得できなければ辞めようと思っていたので、うれしかったですね。9年……家族には本当に協力してもらいました」

 その後、先輩とともに税理士事務所を立ち上げると、No.1税理士法人の業務を手伝うようになった。徐々に仕事量が増えていくと、毎週の全体会議にも参加してほしいとお願いされた。持ち前のコミュニケーション力で信頼をつかんでいくと、ある日、代表に就任してほしいと依頼された。

「巡り合わせだと思った」という藤浪さんは、その日の夜、主要メンバーと食事に行くと、こう言った。

「わかりました。やります」

 即断即決だった。こうして藤浪さんは50歳という節目を迎えていた2015年、社会人になったときから思い描いていた「一国一城の主」になったのである。

「責任は重いですし、プレッシャーはかなりありました」

 そう言って藤浪さんは笑うが、重圧は言葉では言い表せない。なぜなら「税理法人なのに当時は大赤字。繰り越し欠損金が数千万円くらいあった」からだ。7年の年月を掛けて、抱えていた繰越欠損金をゼロに戻したというが、並々ならぬ努力だったはずだ。
 それを問いかけると、藤浪さんは周囲への感謝を言葉にする。

 そこに人柄が表れていた。

「株式会社No.1の方たちもかなり助けてくれたのも事実です。全面的に協力しますという話をいただいていたこともあり、彼らの営業力には本当に多いに助けられました。でも、自信もあったんですけどね。だから、代表になることを引き受けたんです」

着手した改革、freeeとの出会い

 代表に就任したばかりの当時、蓋を開けてみれば派遣社員が多かった。
 そこにかなりの人件費を取られ、経営が逼迫しているのは明らかだった。
 
 藤浪さんは改革に乗り出す。

 派遣社員からパートに切り替えたこともその一つ。
 同時にパートでも対応でき、業務効率化になると考え、導入したのが「freee」だった。
 製販分離を行うことで、作業効率と生産性のアップを図ろうと考えたのである。

 それは『freee』が掲げているフィロソフィーともマッチしていた。

「未経験者や知識がないパートさんたちを、いかに時間を掛けずに即戦力にしていくか。そこで選んだのが、『freee』でした。業務効率化を目指している『freee』のクラウド会計ソフトならば、簿記の知識がなくても、初期設定をしっかりすれば誰にでもすぐに使うことができますからね」

 今でこそユーザーが増えている『freee』のクラウド会計ソフトだが、5、6年前だった当時はここまで認知されていなかった。にもかかわらず、藤浪さんが思い切って導入したのは、それまでの人生がそうだったようにチャレンジする姿勢が影響していたのだろう。

「僕は天の邪鬼なところもあるんですよね。むしろ、逆にチャンスだと思いました。他社さんは大手ばかりに目を向けていたので、それほどサポートしてもらえないだろうなと思ったんです。ならば、これから伸びていくであろう『freee』を導入したほうが、いろいろと協力してもらえるのではないかと考えました。結果的にそれが大成功だったと思っています」

 藤浪さんが語るように、担当者が熱心にサポートしてくれたことにより、作業効率はますます改善された。Webサイトで紹介してもらえる機会もあり、クライアントが増えた。今はfreee認定アドバイザーを務めているように、さまざまな面でプラスに作用した。

 何より大きかったのは、未経験者でもソフトを使いこなせるという利点だった。

「簿記や会計に関して知識がない人を責任者にしました。それはなぜかというと、他の会計ソフトを使っていた人だと、どうしてもここが違う、あそこが違うとなりがちですが、『freee』ならば初めての人でも使いやすく、むしろ足かせがない分、使いこなせるのではないかと思ったんです。さらに、パートさんは時期によっては辞めてしまう人もいますし、入れ替わりますよね。そのたびにソフトの使い方をいちから教えて、できるようになるまでに3〜4カ月掛かってしまうのでは生産性が悪いですよね。ならば、知識がなくても7〜8割のところまで、すぐに作業を進められる『freee』を用いて、できない部分を我々税理士や社員が直していくほうが効率は格段にアップすると考えました」

藤田さんと会計業界との出会い

 責任者である藤田友貴さんが、まさにその一人だった。

藤田友貴さん

「タレントのローランドさんがよく使う『俺か俺以外か』という表現ではないですが、『freeeかfreee以外か』というくらい設計思想が違いました。僕は最初が『freee』だったので、他の会計ソフトを知らなかったのですが、実際に使ってみると全然、違いました。でも、『freee』は僕だけでなく、パートさんでも使いこなせる。だから、マニュアルさえ作っておけば、知識がない人でもすぐに作業に入ることができるんです」

 詳細については、「freee Advisor Day 2022」のステージにて語ってくれるため、楽しみにとっておきたい。だが、お知らせしておくと、藤田さんはNo.1税理士法人で働き始めたとき、それこそ全く知識を持っていなかった。

 元々は専門学校を経て、音楽関係の企業に就職したというが、長時間労働が響いて退社した。その後、大学時代にやっていた水泳のインストラクター経験を活かしてリハビリなどをサポートする、いわゆる介護職に就いた。だが、薄給だったこともあり、他の職種を探していた。

 そのとき、友人から声を掛けられたのがNo.1税理士法人でのパートだった。

「会計や経理の仕事ならば、長く仕事を続けられると思いましたし、今後の選択肢も広がるのではないかと思いました。最初は知識もないのでしんどいかもしれないけど、やってみようかなと」

 まさに、藤浪さんが代表になり、派遣社員からパートに切り替えた時期でもあった。
 言ってしまえば、全くの畑違いの場所に藤田さんは飛び込んだのである。

 面接を担当した藤浪さんが言う。

「社員になることを前提に入社してもらったのですが、適性があるかどうかは分からなかったので、最初はパートからスタートしてもらいました。でも、面接をしたときに、コミュニケーション能力が高いなと感じました。私は面接のとき、その人が備えているスペックではなく、職場で働いている姿を想像できるかどうかを重要視するんです。知識があるとか、経験者かどうかよりも、周りとうまくコミュニケーションが取れるかどうかが大事でした」

 藤浪さんが感じたように、藤田さんにはそのコミュニケーション能力と学ぼうとする意欲があったのだろう。今度は藤田さんが言う。

「本当に全く知識はなかったです。でも、当時の上司が『とりあえず、やってみろ』といった感じで、何でも振ってきてくれる人でした。自分も、やってみないと分からないと思って、調べたり聞いきたりしながらやってみたことが逆によかったのかもしれません」

 その業務で使っていたのが『freee』だったことも奏功したのだろう。

 正式に社員になった藤田さんは、No.1税理士法人における「freee」の責任者になると、今ではクライアントを何十社も担当するまでに成長した。

「今ももちろん、分からないことはありますが、そのときは上司に聞きながらも調べるようにしています。時間が経つにつれて、あまり質問せずとも、お客さまに対して答えられるようになってきたかなと思います。今では、お客さまがアドバイスを求めてきてくれることもありますし、そのアドバイスにより業績がよくなったとよろこんでもらえたときはうれしいですよね。僕は確かに税理士の資格はないかもしれないですけど、担当している企業の業績向上の手助けができるところにやり甲斐を感じています」

 藤田さんがパートから正社員へと成長してきた過程を見守ってきたからだろうか。うれしそうに藤浪さんが語る。

「藤田はお客さまからの評判がとてもいいんです。知識はまだまだでしょうけど、お客さまと話をすると、信頼されていることが分かるんです。それは勉強では身につけることのできない彼のパーソナリティーでもあります」

 それに、といって藤浪さんは言葉を続ける。

「机やパソコンに向き合っている時間があるならば、お客さんと話をする時間を多く作れたほうが自分のためにもなれば、お客さんのためにもなりますからね。そうした関係や信頼を得るにはやっぱり、コミュニケーション能力が必要になるんです」

 業務の効率化を図ることで、税理士や会計士といったユーザーがクライアントに向き合うための時間を作る。

『freee』が目指している、そして提供したい世界だった。

本音で話ができる関係を目指して

 代表である藤浪さんにNo.1税理士法人としての未来について聞いた。

「スローガンとしてはお金を残す経営をサポートしたいと考えています。そこに向けて、入出金の管理や企業ごとに資金が増減する時期をしっかりと把握することができる体制と関係性を築ければと思います。経営者の人たちのなかには、数字に強い人もいれば、数字に弱い人もいます。数字に疎い人たちにも、先回りして教えてあげられるようなサポートをしたい。通帳の残高を見て、プラスになれば儲かっていて、マイナスになれば儲かっていないというくらいの意識の方も多いので、先を見られるような形を提供してあげられたらいいなと感じています」

 藤田さんも同じようにうなずいた。

「経営者の方といえども、試算表の見方がわからないような方もいらっしゃいますし、決算時期が近づいてきて慌てる方もたくさんいます。そうした方たちをフォローして、事前にアプローチできるようになりたいなと思います。そのために、まだまだ僕らも『freee』のすべてを使いこなせているわけではないと感じているので、さらに突き詰めて作業効率をアップできればと模索しています」

 藤浪さんが言った。

「お客さまと合うときは、最大でも専門用語は3つまでしか使わないようにと言っているんです。4つも5つも専門用語を並べられたら、何の項目について話をしているか分からなくなってしまう経営者の方もいるかもしれない。だから、その企業にとって大切なことをポイント、ポイントで話すようにと伝えています。それと、経営者の方が帰ったときに『今日、相談にきてよかったな』って思ってもらえるような時間にするようにとも言っています。あともうひとつ、これも大事なのですが、『開始5分でまずは笑わせるように』とも言っています」

 経営者も、経営状況や資金繰りを包み隠さず明かさなければならない税理士事務所での打ち合わせは、ときに緊張もすれば、ときにプライドが邪魔することもあるだろう。本音で話ができる雰囲気を作らなければ、その企業、はたまた経営者と向き合うことはできない。だからこそ、藤浪さんはコミュニケーション能力を重視し、その大切さを強調したのだろう。

 思えば、この取材をしたときもそうだった。

「新人社員研修で『社長になれると思ってます』っていきなり言ったんですよ」

 そういって開始5分で笑わせてくれた。

(文・原田大輔/写真・神山陽平)

「freee Advisor Day 2022」 は、アドバイザーをはじめとする会計事務所、税理士のみなさまとfreeeが、会計業界、そしてその先の顧問先のみなさまの未来を共に考えるイベントです。ぜひ、ご参加頂ください!

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