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ようやくリリースできた償却資産申告機能。取り組めたのはfreee申告を多くの方が使ってくれたから。そして開発者たちの心が最も震える瞬間は.…

 待望の償却資産の申告機能がリリースされたことを機に、その過程や開発者たちの思いを伝える本企画。
 後編では、償却資産機能の開発秘話、そしてその根底に流れる思いをお届けします。


「#freeeに願いを」のハッシュタグ


「星に願いを」ではなく、「#freeeに願いを」というハッシュタグがあるのをご存じだろうか——。

 freeeのプロダクトがリリースされてから、とある会計事務所が半ば願いを込めて、Twitterに上記のハッシュタグを付けてソフトへの要望を投稿した。

 それを目にしたfreeeを使用している全国の会計士・税理士が乗っかり、気がつけば「#freeeに願いを」のハッシュタグは、さまざまなユーザーが用いるようになった。

 freeeのプロダクトの一つ、freee申告がリリースされた際に、プロダクト戦略チームの開発担当で、PMだった高木悟が当時を振り返る。

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「多分ですけど、最初はノリみたいな感じでつぶやかれたんだと思います。そうしたハッシュタグを付けたら、僕らが見てくれるのではないかという願いを込めるみたいに。でも、いつの間にか、同じハッシュタグがたくさん使われるようになって、僕らfreeeとしても追いかけるようになっていったんです」

 ユーザー側の心理を考えてみる。

 カスタマーサポートや営業担当に直接、要望を伝えるケースはあるだろう。だが、それがソフトの開発を担っている人たちに届いているという確証を得ることはできない。ならば、開発に携わるプロダクトマネージャーやエンジニアが見る可能性のあるSNSに直接、“要望”を載せたほうが、“思い”も届くのではないか——。

 まさに「#freeeに願いを」は、実際にソフトを使用しているユーザーからの“声”だった。


リリースされた償却資産申告の待望


 12月にリリースされた償却資産申告についても、「#freeeに願いを」のハッシュタグのもと、Twitterに書き込まれることの多かった項目だった。高木と同じく、プロダクト戦略チームで開発に携わる小野寺知佳が言う。


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「償却資産申告についても、SNSで要望が多かった項目の一つでした。セールスチームのほうからは、税理士さんから要望が来ているという話は聞いていましたし、カスタマーサポートからも、『開発はまだですか?』という問い合わせが来ているという話も聞いていました」

 今までは、freee会計上で、固定資産について登録することはできていた。だが、それを実際の税務申告に用いて、送信できる仕様にはなっていなかった。そのため、税理士にとっては二度手間が発生しており、バックオフィス業務の効率化をサポートしたいというビジョンを掲げるfreeeにとっても向き合わなければならない懸案だった。

 小野寺が言う。
「freee会計に固定資産台帳があるので、これまで、年に1回計算しなければならない減価償却について登録することはできていました。ただし、そこから償却資産の申告はできなかったので、税理士さんたちは別のソフトを用いて、固定資産をまたそちらに登録してもらい、償却資産を申告してもらう、いわゆる二度手間を強いることになってしまっていました」

 実装されてきた他の機能と同様、償却資産の申告についても、ユーザーである税理士にとってはリリースを待望する項目の一つだったのである。


償却資産申告がリリースされるまでの開発秘話


 freee申告がリリースされたのが2017年。直後に起きた不具合を修正し、さまざまな改訂を経て、ようやく軌道に乗ると、プロダクト自体が多くのユーザーに使用されるようになった。それにより開発に人員を割けるようになった。

 ある日、プロダクト戦略チームのもとには、freee株式会社のCEOである佐々木大輔からDMが届いた。

「今年は償却資産申告をやらなければいけないよね」

 会社のトップに背中を押されて、動かないわけにはいかなかった。

 高木が言う。


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「もともと税理士のみなさんの思いやfreeeへの期待を考えても取り組みたい案件でしたし、トップからのそこまでの期待もわかったので、上司とも取り組もう!、という話になりました。この流れは個人的にも非常にうれしかったです。これで動けるぞ、と。それもこれもユーザーのみなさんがfreee申告ソフトを使っていただいているおかげだと言えると思っています。それによって人員を増やして、償却資産申告の開発に乗り出すことができました」

 3月から調査を開始すると、5月からは本格的に開発に乗り出した。ただし、これまでの開発と同様、その過程には試行錯誤があった。

 小野寺が言う。
「まず初めにプロトタイプを作り、税理士さんに使ってもらったんです。実際に使ってもらうことで、いくつかフィードバックが出てくるだろうから、そこを修正して改善していけばいいだろうと考えていました」

 ところが、だった。


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「そのフィードバックで、致命的な欠陥があることが判明してしまったんです」

 電子申告に際しては、国税であるe-Taxと地方税であるeLTAXがある。それぞれの仕様が異なるため、テスト運用した際に不具合が発覚したのである。

「e-TaxとeLTAXで電子申告の仕様がちょっと違っていたんです。すごく細かいところではあるのですが、その小さな違いに対応できないと電子申告では使用することができない。法人税でもeLTAXを使用するのですが、これは例えばですけど、償却資産申告については大阪市ではなく、大阪市中央区まで細かく表示した状態で提出しなければならないのです。そこが抜け落ちていて、改善する必要がありました」

 些細なことに聞こえるかもしれないが、その細かい設定に対応できなければ、申告に用いることはできない。実装されたところで使い物にならなければ、全くもって意味をなさない。

 税理士によるテストにより、その問題点が判明したのが、8月になってからだった。

「その問題点が発覚して、エンジニアに相談したところ、修正するにはものすごい工数がかかると言われました。そこからもう一度、気合いを入れ直して改訂して、さらにもう一度、税理士さんにテストしてもらったところ、そのフィードバックでは問題なく使えるようになったとの解答をもらいました」

 リリース前にそうした不具合を検知し、対応できたのは、これまでの経験則からだった。

「最初のころは、途中で何度かエラーが出たこともあり、申告書類を作成するのに時間がかかってしまったところもあったのですが、その後のテストを経て、修正できました。これで税理士さんたちは2回の入力をすることがなくなり、今までよりも格段に作業が効率化されるのではないかと思います」

 リリース前に行われたセミナーでは、他のテーマでは50人前後の集まりだったところ、償却資産申告については200人以上の参加があった。そのほとんどが税理士。それだけ関心度、注目度が高く、待ち望まれていた機能だった。

 そして、償却資産申告のリリースは、また我が子が一つ生まれた瞬間だった。


会計事務所が町医者ならば、freeeは処方薬


 リリースに至るまでには、数え切れないほどのテストを繰り返し、修正、改訂も繰り返しているように、申告ソフトの開発は一朝一夕にはいかず、日進月歩と言えるだろう。

 プロダクト開発に携わるふたりにとって、リリースにこぎつけたときには安堵する一方で、喜びは別のところにあった。

 小野寺が過去の事例を思い出すかのように話してくれた。

「うれしい瞬間は、ユーザーの方たちがたくさん使ってくれていることが分かったときですよね。データで何件、申告に用いてくれたかが分かるので、それが多かったときにはやはり、喜びを感じますよね。
 あとは『#freeeに願いを』ではないですが、SNSでfreee申告ソフトについて書き込まれている投稿を、私たちやエンジニアも含めて、見るようにしているんです。そこには、さらなる改善点も含め、実際に使ってくれている方たちの意見を知りたいという思いもあるのですが、そこで『使いやすくなった』『ありがとう』というコメントを見ると、思わず、みんなで喜びを共有してしまいますよね」

 同じ気持ちと言わんばかりに、高木はうなずいた。


「リリースして、社内が盛り上がってくれることもうれしいのですが、チカさんが言うように、やっぱり一番は社外の人に『使いやすかった』『すごい助かった』と言われることですよね。それが一番、モチベーションにつながります」

 freeeは、個人事業主をはじめとするユーザーの確定申告を手助けするところからスタートした。その後、小規模な法人、会計事務所、そしてIPOといわれる新規上場を目指す中規模の法人、またそこに携わる会計士・税理士のバックオフィス業務の効率化を目指して、企業として成長、発展を続けている。

 その根底には、書類の作成で日々の業務に忙殺されている会計士・税理士をサポートしたいというビジョンがある。

 小野寺が言う。


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「私自身の実体験も含め、税理士さんの仕事というのは本当に大変だという思いがあったので、全国の税理士の方々にfreee申告ソフトを使ったら、効率的になり、以前よりも短い時間で作業が終わるようになったと言ってもらえたらいいなと思っています。それによりできた時間で、顧客に新たな提案ができ、さらにコミュニケーションを取る時間が増えたらうれしい」

「システム化していくことにより、税理士さんたちのなかには、自分たちの仕事がAIに取られていくのではないかと不安視されている方もいらっしゃるかと思います。でも、私たちはそこまでのことを考えているわけではなく、日ごろ抱えている単純作業から解放されることで、異なる時間の使い方ができるようになればという思いが強いんです。そのために、freeeがみなさんに寄り添い、一緒に考えていければなと思っています」

 ユーザーに寄り添いたいという思いは高木も一緒だった。


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「僕は旅行に行くことが趣味なのですが、地方にいくたびに、freeeが首都圏や若い人たちだけに使ってもらうソフトで終わりたくないなと思うんです。日本の中小企業のインフラを支えているのは会計事務所さんだと思うんです。そうした中小企業を経営されている方たちというのは、会計士や税理士に高尚な分析を求めているというよりも、その業界を見据えたうえでの雑談というか、相談ができる環境を求めているのではないかと思っているんですよね。だから、コンサルといった大きな題目ではなく、もう少しカジュアルに会計事務所と顧客がつながる時間を作るために、日ごろの業務を効率化していくことができればと考えています」

 その土地、その土地にある会計事務所、税理士法人が町医者ならば、freeeは処方される薬ということなのだろう。

 償却資産申告がリリースされ、freee申告はまた、ひとつ項目が追加された。高木は「もう次がはじまっています」と笑う。

 部署では「#freeeに願いを」のハッシュタグを見ながら、感想を語り合う会が開かれるという。「#freeeに労いを」というハッシュタグのもと、そこに感謝の言葉が投稿されていたら、プロダクト戦略チームのモチベーションはさらにアップするかもしれない。
 それはまた、freeeと会計士、税理士を含んだユーザーをつなぐコミュニケーションになる。


(文・原田大輔/写真・原田健太)

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後記

償却資産!

待望のリリースに、関わったスタッフみんなでお祝いをしました!この機能の価値が会計事務所、税理士のみなさんへ、そしてその先のスモールビジネスのみなさんに届きますように。 #freeeから願いを

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