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トークセッション・レポート「freeeは本当に会計事務所で使えるのか?」

freee株式会社は2023年8月、「freeeは本当に会計事務所で使えるのか?」と題したトークセッションをfreee社内で開催しました。

トークセッションにはモデレーターとして渡辺勇教会計事務所の渡辺勇教さんが登壇し、freee専門の税理士として活動する柏木大吾税理士事務所の柏木大吾さんに質問するかたちで進行していきました。ここではセミナーの様子をダイジェストでお伝えします。

顧問先の数と規模は?

渡辺勇教さん(以下、渡辺):柏木さんは一人事務所で、記帳代行を受けない方針だと伺っています。マンパワーに限りもあると思いますが、現在の顧問先の数と規模感を教えていただけますか?

柏木大吾さん(以下、柏木):おっしゃる通り、僕が提供するサービスは基本的に自計化支援です。顧問先の数に関しては、増やしすぎるとサービスの質が低下する恐れがありますので、20件に限定しています。原則、法人のお客様を対象とし、お客様の規模としては下は年商200~300万円くらいのところから上は60億円の企業まで様々です。

どうして個人を受けないかというと、決算日が12月31日、申告期限が3月15日に固定されているからです。つまり数が多くなると引き受けきれないのです。法人でしたら3月決算は3社、4月決算は4社といった具合に決算月を分散させることができます。それでも最大でひと月に4社までしか見られないと思っています。

事務所のポリシーは?

渡辺:事務所のポリシーがあれば教えてください。

柏木:僕の事務所のポリシーや考え方の軸は「時代の流れに柔軟に対応して今求められている価値を届ける」というものです。ずっと固着化してきた会計業界にいて、辟易としている部分があります。きちんとアップデートした今の価値を届けたいという思いがあり、それを活動の中心に置いています。

「今は何の価値を届けているのか」と聞かれると、もともと大原簿記専門学校の講師だったキャリアを生かし、「freee専門の税理士がプロの講師として、セミナーを通じて日本中の経営をリアルタイム化する」というものをミッションに掲げています。

freeeを使って良かった話

渡辺:freeeを使って良かったことも悪かったこともあると思いますが、率直に良かったのはどんなところですか?

柏木:大きく2つあります。1つ目は、会計業務が楽しくなったことです。

大原簿記専門学校の講師を辞めて、会計事務所に勤務した下積み時代が15年くらいあります。15年間、みんなと同じように資料を回収して入力し、試算表を納品してきました。その頃は本当に仕事がつまらなかったんです。

例えば、お客様から1月の資料を2月半ばにもらって記帳して、3月半ばに2月分の資料を回収しに行くときに、完成した1月分の試算表を持って行くわけです。試算表を見ながら説明するのですが、聞く側の社長は面白くないですよね。なにせ3月半ばに僕が持って行っているのは、1月の試算表ですから。当然ですが、僕とのミーティングに社長は次第に出なくなります。

渡辺:メインとするコンテンツに新鮮味がないので、腐った野菜について説明しても誰も惹きつけられないのですね。

柏木:その通りです。ただ、周りを見ると、事務所の同僚たちはみんなそれをずっとやっているのです。資料を回収して1ヶ月遅れの試算表を渡しても、お客様は食いついて来ない。でも目一杯の件数を抱えてそれを粛々とやっています。僕はすごくつまらないと思っていました。

「事務所通信を作って付加価値を提供しよう」とかいうのではなく、そもそも遅すぎる試算表を何とかしなくてはいけないと思ったんです。リアルタイムとは言わないまでも、2、3日でできないのかなという悩ましい思いを持っていたときに、freeeが出てきました。

渡辺:freeeの登場は革新的だったんですね。

柏木:はい、これを使えばもしかしたら上手く行くかもしれないと思って使い始めました。当初は苦労もしたのですが、ハマって来たら「行ける」という手ごたえを掴んだんです。目の前の霧が晴れる思いでした。

まとめると、freeeを使って良かったことの1つ目は、リアルタイムにすることにより情報の価値が上がって、社長の食いつきがよくなり仕事が楽しくなったということです。

渡辺:良かったことの2つ目も教えていただけますか?

柏木:他社の会計ソフトからfreeeに載せ替えるだけでは、あまり効果的ではないと思っています。freeeを効率的に使いこなすには、どう考えてもその会社の経理業務にまで入り込み、そこからfreeeの得意な形に変えていくことが重要です。

ところが僕ら会計事務所員にとって、会社の経理業務はアンタッチャブルなものでした。会社が作ってくださった資料を事後的にもらい、それを僕らが処理するというのが普通で、経理業務の中には入り込まないというのが多くの会計事務所の基本スタンスだったと思います。

freeeでは、そこにメスを入れないと本当の意味での効率化は達成できません。僕はそれに気づいてから、銀行口座はこう変えましょう、クレジットカードはこうしましょう、決済の流れも変えましょうといったことをお客様と一緒に喧々諤々やり始めたんです。その結果、お客様の経理自体をガラッと変える業務が、目に見えて増えていきました。

まとめると、freeeを使って良かったことの2つ目は、業務改善まで踏み込むことで関与できる業務領域が増え、顧問先により大きな価値を提供できるようになったことです。

freeeはやめておけば良かったと思う話

渡辺:freeeはやめておけば良かったとか、こういうケースにfreeeは合わないのではないか、みたいな話があれば伺えますか?

柏木:先ほどの「freeeを使って良かった話」の裏返しになるのですが、前職の会計事務所でfreee導入プロジェクトのリーダーをやらせていただいて、他社ソフトの導入先をfreeeに載せ替えたとき、失敗したことがあります。そのときに、やめておけば良かったと思いました。

400件の顧問先をすべてリスト化し、「行ける!行ける!行ける!」という勢いでfreeeを導入したのですが、お客様からの反発や事務所内からの反発がすごくて孤立無援になったんです。

このことから得た教訓は、お客様にfreeeの話をしてみて、興味を示したら提案につなげ、逆にfreeeの便利さに全然反応を示さない場合には、価値を感じていないのですからfreeeを勧めてはダメ、ということです。

先ほど申し上げた通り、freeeを導入する場合、お客様と僕たちで顔を突き合わせて経理業務をどうしようか、というところから始めなければなりません。その骨格を作るにはエネルギーが必要です。お客様の側にも「やりたい」という気持ちが必要なのです。

やる気というガソリンが空の人にfreeeを勧めても、こちらが空回りして「うざったいな」と思われるだけで何も生まれません。

今後、freeeに望むことは?

渡辺:最後に今後、freeeに望むことはありますか?

柏木:僕はリアルタイム化の先にある全自動化を目指したいと思っています。ですので、freeeには絶対にブレずに全自動の世界へ向かってまい進してほしい、というのが僕の望みです。

例えば、貨幣や紙幣は数年後にはなくなるものだと考えています。インターネット上にすべてのお金のやり取りが集約されると、全自動化はやろうと思えばやれる状態になります。freeeには、つまらない型にはまって全自動化に手を出さない、という選択はしてほしくないのです。全自動化を常に標榜して突き進んでほしいと思います。

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ここで紹介した以外にも、「freeeのアプリストアで、お勧めのアプリは?」「freeeの機能を活用してどのように毎月チェックしているのか?」「freeeの中で不便だと思う機能は?」などの質問にも具体的なアプリ名や機能名を挙げて答えた柏木さん。平均満足度90%という濃い内容のセッションとなりました。

トークセッション開催後は懇親会が開催され、より具体的な悩みや活用法について、活発な意見交換が行われました。

本イベントは2023年8~12月の期間中、毎月異なるテーマで開催しております。ご興味をお持ちいただいた方は、以下のリンク先よりお申込みください。

https://go.freee.co.jp/advisor-talking-events.html

本記事をご覧いただき、ありがとうございました。

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