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トウワタ《心情㉓》

愛憎、善悪
寂寞、号哭
多幸感、絶望
涙、血
朝、夜
満月、新月
四季、桜、波、金木犀、雪、
全て何もかも、脚本や舞台装置や何かしらのシステムであればいいのに。

比喩表現などではない
人生という物語
の文面、舞台、デジタル的な計算
に身を投げてしまえれば、
自傷的に或いは加害的に
エピローグ、スタッフロールに辿り着くことが可能であろう。

全ては決まったことで。
この物語から出ることは叶わない。
感嘆符で驚くべきことがおこり
疑問符で疑心暗鬼に苛まれ
句読点で一呼吸おいて
様々な括弧で補われ
三点リーダーで言いよどみ
たまに閑話休題し

そうした道具を使いながら
柱と台詞とト書きで作られた
筋書き通りの今までとこれからであってほしい。

その脚本どおりの
役で、演出で、音響で、照明で、
舞台装置で、大道具小道具で、
衣裳で。
そうやって出来上がっていく人生であれば。

そうでなくとも全て計算し尽くされたシステムやデータであれば。

知っていた。
人は知っていた。
100年以上前から知っていた。
僕は知っていた。
大切な人の手を離した時から
知っていた。

始まってしまえば終わりがやってくること。
永遠なんてないこと。
絶対なんてないこと。
だから花は綺麗であること。

知っていたから
諸行無常、盛者必衰
と平家物語では語られたのだと思う。

知っていたからこそ
瀬を早み 岩にせかるる 滝川の
われても末に 逢はむとぞ思ふ
とうたったのだと思う。

流行り廃りがあることも、全てが刹那であることも、機密に計算され尽くしたシステムで、
それでもまた出逢おう。という純然たる想いがバグならばいいな。

今の気持ちも、あの時の気持ちも、記憶も、ぬちゃぬちゃした幸せも、吹き荒れた不幸も、ファイルに保存しておきたいけれど、
そんなことはきっとバグだし、
それができないっていうのが僕の人生のシステムならば苦笑して許してあげよう。

社会の善とやら世間体とやら偏見もシステムの1部ならば、
それは見つけられていないバグだと主張してさしあげよう。
あなたのために。
大丈夫。僕はデバッカーなんだ。
僕からしてみれば沢山のバグにぶち当たって来たんだ。
もう傷ついたところで気が付かないさ。
もう傷つくことにも慣れたんだ。
だからさ。

任せて


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