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目覚めている人。素敵な言葉。〜#4 JRさん


こんばんわ、Karo.です。

ふと最近、美しい思考を持つ人の言葉に触れたら、
胸のあたりが暖かになって、気持ちが豊かに膨らむのを感じました。

私たちは、こうして美しい世界を感じることが出来た時に
気持ちがたくさん膨らんで、そこから湧くように生まれてきた感謝が
また隣の誰かに伝わって、美しさが連鎖するのですよね。


昨日、そんなことを思っていたら、このマガジンで紹介したい人が、
降ってきました。そうそう、そうだよ、この人この人!


フランス人アーティストのJRさん。


私の中では特別格別、本当に大好きっ、なアーティストです。

でも実は記事を描くにあたって、調べたら、ウィキペデイアは英語版しかないし、インスタはフォローしていますが、彼はフランス人〜。どちらにしても私には言葉の壁が...(汗)。そして日本語で出ている情報も少ないので、実際に言葉を拾おうとすると、なかなか無理があり、けっこうハードルが高くて....この記事、描けるかなぁ?と思ったりもしました。でも、彼はこのマガジンに不可欠。絶対にご紹介したい人なので、まずは私が「特別」だと感じている「彼の存在の在り方」の部分を、お伝えできればと思います。


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まず、彼を一言で言うとしたら「アートで世界を変えること」をすごく大真面目に真剣に、でもめちゃくちゃ楽しみながら、挑戦し続けている人。です。

彼のJRという名前は、半匿名(本名のイニシャル)で、いつも帽子とサングラスをつけています。今年38歳ですが、10代の頃から地元パリで壁に絵を描いたり写真を貼ったするストリートアートをやっていました。

ストリートアートは基本的に「違法」です。通りの店や家の「壁」に作品を描く訳ですから。でも彼がストリートアートにこだわるようになったのは、アートをストリートに持ち込みたいと考えていたからだそうです。

「ストリートでは、美術館に行かない人々にリーチします。」    ー JR


そして2004-2005年、移民などが多く暮らす地元の街で、不当な差別を受けることの多いこの街の人々のメッセージを伝えようと、仲間の顔写真を撮って、巨大な紙にプリントし、アパートの外壁に糊で貼った作品を制作したのです。その後、すぐ近くの場所で警察に追われた少年二人が感電死し、それが発端でパリで3週間続く大きな暴動事件が起きました。そして世界中のニュースで、その暴動の様子の背景に彼の作品が映し出されることになり、作品が世界に注目されることになります。彼はそれをきっかけに、この街に暮らす移民系の少年も平凡な一般市民の一人だというメッセージを込めて、彼らの巨大なポートレイト写真をパリの富裕層の暮らす街の壁の至る所に貼るプロジェクトを始め、一躍注目のアーティストになりました。

ちなみに、この時のパリの暴動事件をテーマにしたフランス映画「レ・ミゼラブル」のラジ・リ監督は、もともとJRと一緒にグラフィックアートのグループを創って活動していた仲間です。昨日「レ・ミゼラブル」のレビューなどを見ていたら映画の中でも、JRが世界中に知られるようになったアパートに貼ったその作品がチラッと出ていたようでした。


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そして、私がJRに、他のアーティストとはまったく違った特別感を持っている中のひとつは、通常多くのアーティストは、作品を制作して、それを販売する。というスタイルなのですが、彼はそのようなスタイルをとっていません。彼はルーブル美術館のウェブサイトでも、次のように話しているそうです。

 「アーティストとしての私の役割はそれではありません。アートは世界に疑問を投げかけるツールです。」                  ー JR

彼の作品は「アートで世界を変えること」が根底にあり、仲間や現地の人とともに創り上げる「プロジェクト」の形なので、作品そのものが「自分(ひとり)の中から生み出された価値あるものだ」というスタンスはまったくないのです。その「アート」という行為によって、その国、その場所の「気分」とか「ムード」とか、「空気」といったものが変わる。ということ、それに大きな価値を感じているのです。

彼の作品の基本的な形態は「世界中の様々な街へ行き、そこで出会った現地の人と話をして、メッセージを聞き、それからその街の家や公共の壁に、そこに住む人たちの巨大なポートレート写真を貼るという行為」と「その経緯そのものをフィルムなどで記録する」ことで「作品」として完成し公開しています。そしてできあがったものは地球規模のインスタレーションのように感じます。

言葉ではわかりにくいので、一回、私が持っている画集の中から彼の作品の画像を入れますね。

画像4

見えますかね?家の壁に貼られたモノクロの巨大なポートレイト。目が、たくさん....(笑)


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こうしたアートプロジェクトというのは、たとえば、こんな感じです。

JRはパリの暴動事件後、2007年に「FACE 2 FACE」というプロジェクト作品を制作しました。

彼は友人のマルコと、紛争が終わらないイスラエルとパレスチナへ実際に赴き、地元の人たちの話に耳を傾けます。そして2つの国それぞれで多くの人のポートレイトを撮り、そして2つの国の同じ職業の人の顔を横に並べて、街を分断する両側の壁や建物、各国の都市の通りの壁に貼るという、違法アートをはじめました。そしてその様子を見物している人たちに、聞きます。

「ねえ、どっちがパレスチナ人で、どっちがイスラエル人かわかる?」と。


「ラマッラーでは、パレスチナ人の家に、高さ7メートルのユダヤ人の像を貼り付けました。イスラエルでは、監視塔にパレスチナ人のポートレートを貼り付けました。」              ー JR (L’Express 2017/11/15)
「イスラエル人がパレスチナ人を笑ったのは、間違いなくこれが初めてであり、その逆もまた然りです。」         ー JR (L’Express 2017/11/15)
「プロジェクトのヒーローは、壁の両側で、家にポートレートを貼り付けることを許可してくれたすべての人です。」  ー JR (L’Express 2017/11/15)


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また、先に貼った目がいっぱいな写真は「Women Are Heroes」というプロジェクトの本の中の1ページです。このプロジェクトは世界の社会情勢が不安定で、美術館を持たない発展途上の地域に行き、現地の人と話をして、女性のポートレートを撮影し、同じように通りや家の壁にそれを貼っています。これはずっと続いているプロジェクトです。

「Women Are Heroes」は多くの写真からなるプロジェクトです。言葉はほとんど使われません。JR は女性の尊厳に光を当てようと意図しました。
女性とは、社会の中で重要な役割を担いながらも、戦争、路上犯罪、強姦、そして宗教的、政治的過激派の犠牲となってしまう存在なのです。
このプロジェクトを立ち上げ、こういった女性たちの話を聞いていくうちに、JR は彼女たちの言葉をどのように扱えばよいのかわからなくなってしまいました。彼女たちの問題の理由を理解しようとしたわけでも、揉め事を起こした人を探し出そうとしたわけでもありません。ただ、この女性たちを見つめて、彼女たちの深い傷が癒えるには、その痛みを声にしなければならないことを理解したのです。
(ワタリウム美術館 2013年JR展/解説より)

紛争が起きれば、いつでも最初に犠牲になってしまうのは女性なので、このプロジェクトは世界中の女性の尊厳を表現しています。このあたりの話は、後ほどご紹介するTEDスピーチの中でも、出てきますので、ぜひ観ていただきたいのですが、

そのエピソードの一つで。ブラジルの巨大麻薬密売組織が牛耳る街へ行った時にそこで出会った女性に、JRは自分の本を見せ、プロジェクトの意味を説明をします。

その女性は「文化に飢えているの。ここには文化が必要だわ」と言います。



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私がJRの存在を知ったのは、2012年の暮れ頃でした。それは何気なく観たTEDスピーチで。でしたが、これを観た後、もう大感激!したのです。

彼は2011年に「世界を変えるアイデア」に賞をあたえる「TEDプライズ賞」を受賞しました。私が観たのは受賞した時のスピーチでした。彼はその賞金を使って「INSIDE OUT」という世界中の人々が参加できるアートプロジェクトを立ち上げました。

「INSIDE OUT」。まさに「内側を外に、世界をひっくり返す」なのです。

世界各地で差別や弾圧、貧困などで苦しむ人びとはたくさんいます。そこでメッセージを聞き、撮影し、その巨大なポートレイトを現地の人たちと一緒に貼る。それをメッセージと一緒に伝えていくことで、世界中の人がこのアート活動に参加することができる。

彼がアートをツールと呼んだように、作品自体が媒体であり、そのプロジェクトに参加することと、観ること両方の体験を通じて、思考と想像とコミュニケーションを生みます。

それに触れた人が、世界について、自分について、人について、様々なことを考えるきっかけを生み、誰かと話すきっかけを生み、それが大きなメッセージとなるのです。


このプロジェクトはずっと続いているのですが、JRは2012年の冬に日本にも来日しています。東北〜東京を回って、多くの人の顔写真を撮影し、福島の街のあちこちに地元の人のポートレートを貼り、また2013年2月に東京のワタリウム美術館で展覧会が開催された時には、ワタリウム美術館の壁に、たくさんの東北の人の顔が貼られていました。こんな状態です。

画像1

向かい側のビルにもちょろりと。

画像2

そして、ちなみに私も、このプロジェクトに参加をして、当時うちの壁にも貼っていました。本当は外の壁じゃないと意味ないんですが、ごめんなさいで(苦笑)。(そして当時の写真なのでカラーフィルター入れまくっていますが、そこもご容赦で(恥)。

画像3


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私は彼のこうした活動を観ながら、「表現する。」ということについて、改めて思いました。

「表現をすること」の大切さ。

表現の方法には、決まった形も枠なども、なんにもないのだと。

そして、その表現の中で、結論を出して提示する必要さえ、ない。のだと。


と、いうことで、説明が長くなりましたが、今回の「素敵な言葉」は、彼のTEDスピーチを是非、観ていただいて、直接、彼の言葉を聴いていただいた方がいいと思いました。25分もないスピーチです。最後に客席はスタンディングオベーションです。私は何度見てもココロが膨らみます。



そして、もしご興味があれば、さらに。

2017年にJRがフランスの写真家で女性映画監督アニエス・ヴェルダ(87歳)と一緒にクラウドファンディングで制作したロードムービー、「顔たち、ところどころ」という映画を見ていただけると、彼の人となりや作品の制作過程、彼の持つ視線が、さらによくかわかります。ココロがじわぁ〜っとふわぁ〜っと優しく、温かくなる映画です。

映画の中でアニエス・ヴェルダがこう話していました。

JRと私は自由な発想から物事を想像し、問いかける。
「想像力(イマジネーション)を働かせてる?」と。
想像力(イマジネーション)は人と関わるもの。
だからみんなと写真を撮るの。
そうすれば、あなたと交流し奇抜な発想を実現できる。
その楽しさを分かち合いたいの。

Amazonプライムで無料で観れましたので、入会されている方はぜひ。





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