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税理士と会計士の仕事の違いって何でしょう?

こんにちは、タケです。前回の記事からの関連で、素朴な質問としてよくある税理士と会計士の違い。この質問に対してどう説明すればすんなり理解できるか考えてみました。

結論を一言で言うと、「利益を計算するのが会計士、利益から所得を出して税金を計算するのが税理士」です(法人税の話に限定)。
この一言の中に出てきた用語を数式で表すとこんな感じです。

利益=収益−費用
所得=益金−損金
税金=所得×税率
収益≒益金、費用≒損金、∴利益≒所得
(=ではなくて≒となっているところがポイントですね。)

利益とは

利益=収益−費用ですね。
収益や費用を計算するに当たっては色々な会計基準があって、論点がたくさんあるんですが、収益と費用をちゃんと計算して、差し引きで利益を計算するのが会計士の仕事だと思ってます。すごいざっくりですが。

税金の計算方法とは

税金=所得×税率の式で税金を出すんですが(税額控除とかは横に置きます)、どうやって所得を出すのでしょうか。

理論上、所得とは
所得=益金−損金です。
理論上と言っているのは、実際には違う方法で所得を計算するからです。
以下、順を追って説明します。

まず、益金に関して。益金≒収益なのですが、ズレがあります。
・益金だけど収益ではないズレ(益金〇、収益✕)=益金算入項目
・益金ではないけど収益であるズレ(益金✕、収益〇)=益金不算入項目

同様に、損金≒費用なのですが、やはりズレがあります。
・損金だけど費用ではないズレ(損金〇、費用✕)=損金算入項目
・損金ではないけど費用であるズレ(損金✕、費用〇)=損金不算入項目

このように4種類のズレがあるのですが、実際に所得を計算するときは、この4種類のズレを、利益から足したり引いたりして所得を計算します。
・所得=利益±4種類のズレ
より具体的には以下の通りです。
・所得=利益+益金算入項目ー益金不算入項目ー損金算入項目+損金不算入項目

なぜ所得はこんな面倒な方法で計算するのか

益金と損金を直接計算して、差し引きで所得を計算する方が、直感的には単純で分かり易いと感じます。しかし、収益と費用が予め計算されているのに、別枠で益金と損金を計算するのは大変面倒くさいのです。そこで、収益≒益金、費用≒損金であるならば、ちょっとズレているところだけ拾って、利益に加減算した方がラクなので、この方式が取られています。ちなみに国によっては益金と損金を直接計算するところもあるみたいです。
日本では、利益からスタートして所得を計算するので、これを確定決算主義と呼んだりします。4種類のズレを加減算することを税務調整、ズレのことを税務調整項目と呼んだりします。
ちょっと脱線しますが、会計でも税務でも、なんとか調整って良く出てきますが、これは英語のアジャストだと考えた方が分かり易い気がします。ジャスト(ぴったり)の方向に持っていくことをアジャストだと理解しているんですが、あるべきものに持っていくことを調整と呼んでいるのかな、と思ってます。税務調整とは、利益から所得に持っていくことですね。

大企業と中小企業の違いは?

大企業の方が税務調整項目が多く(会計と税務が遠い)、中小企業ほど税務調整項目が少ない(会計と税務が近い)です。
大企業、特に上場企業は投資家などの利害間関係者が多いので、きちんと企業の実態を表すように見積りも含めた会計基準を厳格に適用しなければなりません。一方で、税務は客観性が重視されるため、見積りなどはご法度です。このため、会計と税務が遠くなりがちです。
中小企業では、銀行への説明用や税務申告のためだけに財務諸表を作って利益を計算するところが多く、利害関係者が少ないため、大企業並みに会計基準を厳格に適用する必要はありません。そのため、税務調整を少なくしてラクをする(税務寄りの会計処理をする)ことが多いです。このため、会計と税務が近く、俗に税務会計と言ったりします。

税務が難しい理由

税務調整項目は、法令や通達でめちゃくちゃ細かく決められています。それらを見落として、所得を余計に多く計算(=税金増える)すると顧客には迷惑が掛かります。逆に、所得を少なく計算(=税金減る)すると、後から税務調査で指摘されて追加で税金を持っていかれるので、これも顧客に迷惑が掛かります。大企業であればあるほど税務調整項目が多いので、難易度がよりアップしてしまいます。しかも毎年細かい改正が入ったりしちゃうんですよね。。
あと、税務は公正・平等を柱にしてますから、1円単位まできっちり計算して申告します。会計ももちろん1円単位の金額は持ってますが、世に出る金額は千円とか百万円単位であることがほとんどですし、些末なミスは重要性なしで許容されることも多いので、税務の方が厳しく感じてしまいます。

まとめ

色々脱線してしまいましたが、最初の質問に戻り、「会計士と税理士の仕事の違いとは?」に答えると、利益を計算するのが会計士、利益から所得を出して税金を計算するのが税理士、と言うことになります。
いかがだったでしょうか。少しでも税理士と会計士の違いが伝わったなら何よりです。

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